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カルチャーデザイン03 チームへの誇り

社内に新しいチームをつくるのは、そう簡単ではありません。

大きな企業や歴史のある企業であれば、なおさら。社内の別部署から集まった社員たちは、それぞれの言語もカルチャーも少しずつ違うからです。

すぐに分かりやすい結果を出すことは難しい。社内からは「何をしているかよく分からない」と言われがちです。社外からは言わずもがな。優秀な人材を採用したくても、一足飛びにはいきません。

このチームで働きたい!
社内外の人がそう思える新組織をつくっていくには、どうすればいいのでしょうか。

魅力的なチームには共通点があります。それは「チームへの誇り」です。
メンバー一人ひとりがチームへの愛着や矜恃を持てるかどうかが、チームの力を大きく左右するのです。

カルチャーデザイン第3回では、KESIKIが伴走したNTTコミュニケーションズのデザイン組織「KOEL」の立ち上げプロジェクトを例に、社員がいきいき働く、愛されるチームのつくり方について考えます。



新組織で優秀な人を集めるには?

NTTコミュニケーションズは巨大なIT・通信企業です。

NTTグループ内で主に長距離・国際通信事業を担う事業会社として発足し、私たちの暮らしや社会を支えてきました。

インターネット接続サービスやクラウドサービスも提供するなど、時代の変化に合わせてその事業内容を柔軟に変化させてきた同社。近年では、大きな事業の軸となっていた音声通信に代わる、新たな核となる事業を生み出すことが課題となっていました。

今までとは違うアプローチが必要だ……。
元エンジニアの金智之さんは、数年前からそんな危機感を抱いていました。

技術や市場ニーズを起点に考えていても、これからの時代にビジネスを拡大していくことは難しい

積極的に新しい考え方や手法を探る中で出合ったのが、人を中心にアプローチする「デザイン思考」でした。本を読んだり、夜や休日に大学院に通ったりして、自ら知識を積み重ねてきました。

2011年に金さんは研究開発組織でデザインチームを立ち上げ、さらに2016年には経営企画部内のDKD(経営企画部 デジタル・カイゼン・デザイン室)という組織に合流を果たします。技術を中心に物事を考える社員が多いなか、社内の部署をまわり、UXデザインの伝道師として活動を続けてきました。

その活動が認められ、2020年、デザイン組織として本格化することに。技術志向からユーザー志向へ。新しい組織が中心となって全社の変革を担うという使命が課され、外部からも優秀なデザイナーを雇い入れるという方針が決まりました。

NTTコミュニケーションズには、これまでデザイナーという職種は存在しません。新しい組織で、外から優秀な人材を集めるにはどうしたらいいのか。

そんな難しい相談がKESIKIのもとに入り、プロジェクトが始まりました。



今と未来のギャップをつなぐ

キックオフミーティングでは、まずチームの現状を知りたいと考え、プロジェクトメンバーに対していくつかのセッションをしました。

そのうちのひとつが「TODAY/ FUTURE」セッションです。彼らが自分自身のチームをどう捉えているのか、将来、どんなチームになっていたいかを付箋に書き出し、貼り出していきました。


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TODAYでは、「会話が多い」「冗談が飛ぶ」「柔軟性がある」「チームを良くしようとする」とポジティブな意見が多く集まりました。フラットでいいチームだと感じている人が多いことが見えてきます。

一方、「やりっぱなし」「フワフワしている」「パイロットケースをつくらなきゃ」といったネガティブ意見もありました。

FUTUREには、「尊敬される」「役立つ実感を得る」「個が立ってる」「社外にも通用するスペック」といった声があがりました。社内にも社外にも、わかりやすい成果を早く示したいという思いが表れる結果に。

超巨大企業の中にあるにも関わらず、役職を気にせず意見を言い合える風通しの良いチームであることがわかりました。

一方、このチームに足りないのは、明確な目標を立て、社内外に宣言すること。そして、成果を早く出せる体制をつくり、自分たちの仕事への自信やチームへの誇りを高めること。
KESIKIはそう考え、以降のプロジェクトの進め方を検討していきました。



「愛称」をつける3つの意義

ジャイアンツ、なでしこジャパン、オールブラックス。

これらはすべて愛称。
正式名称はそれぞれ読売巨人軍、サッカー女子日本代表、ラグビーニュージーランド代表です。プロスポーツのチームには、メンバーもファンも親しみやすいように愛称がつけられることがよくあります。

一方、会社の組織はどうでしょう。営業部、経理部、経営企画部、デザイン部……。機能によって名前をつけるのが一般的。今回、新たに立ち上がる組織名はイノベーションセンター デザイン部門になりました。

新しい名称は機能的ですが、長い。イノベーションセンターの一部門としての印象が強くなってしまい、自分たちのチームの風通しの良さも伝わりにくい。

自分たちも愛着を感じられて、外の人からも覚えてもらえるチーム名が欲しい。今回、新たな組織に、正式名とは別に愛称をつけることに。最初のワークショップでチーム名を出し、さらにその後にスラック上でも募り、最終的に100を超えるアイデアが集まりました。

そのアイデアを分類していくと、企業名を冠するものではなく、独立的であること。機能的ではなく、感情に訴えるようなものであること。こうした方向性が浮かび上がってきました。

独立的×感情的。2つの軸を満たすものは何かという視点で絞り込み、最終的に決まったのが「KOEL」です。

人々の物理的な距離を「超える」。これまでの常識を「超える」。そんなコミュニケーションを創造するチームであること。
単に回線をつなぐだけの通信インフラ会社を超え、人々が自由で幸せを謳歌するための社会インフラを創造する会社へ。その変革を牽引する存在となること。

「KOEL」にはそんな思いを込めました。

チーム名をつけることには、メンバーの誇りを醸成させるほかにも意義があります。

ひとつは、「出島」の独自性。堅く見られがちな大企業において、チーム名をつけることはある種、出島のような印象を与えます。
2つ目は、「変革」の旗印。企業名とは別の名称を与えることによって、そこから企業を変えていこうとする意志が表れます。
3つ目は、「ビジョン」の伝達。名称自体にビジョンを込めれば、それがそのままメッセージとなります。

名称だけでなくビジュアルイメージも大切です。デザイン組織なら、なおさら。ロゴ作成に当たっては30以上のスタディを繰り返し、最終的には以下の案に決まりました。


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ロゴの「O」と「E」の間に切り取った直線の角度は、人間が最も遠くまでモノを飛ばせる「40.89度」。距離や常識を超えるというイメージを強調しています。

愛称が決まったら、次に決めるのは目標。そして、そこまでの走り方です。



独自のバリューを決める理由

最近はミッション、ビジョンを定める企業も増えています。

今回、KOELではチーム単位でもこれを定めることにしました。目標を定め、それを社内外に公表することで、KOELの認知をあげ、ひいてはメンバーの「誇り」を高揚させたいと考えたからです。

ミッションは「デザイン×コミュニケーションで社会の創造力を解放する」。ビジョンは「人と企業に愛される社会インフラをつくる」

KOELを立ち上げようとしていたまさにそのとき、コロナウィルスが世界中で猛威を奮っていました。

仕事も教育も医療も、すべての分野でオンラインでのコミュニケーションの需要がますます高まることは必至です。だからこそ、通信インフラ企業ができることは、たくさんある。KOELは、デザインの力で社会をよりよく変えていく存在になる。そんな思いを表現しました。

今回のプロジェクトを通して何度も出てきたのが、「社会貢献」という言葉です。

メディアでもよく登場する便利な言葉ではありますが、KOELのメンバーたちは本気です。「災害や震災のときこそ、自分たちの出番だと燃える」。そんな声も上がってくるほどでした。

バリュー(行動指針)もチームで独自に定めました。


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「問う」は、社会を良くしていきたいという想いをもって、現状を疑い、問い続けること。「創る」は、デザイナーとしての高い専門性をもって、手を動かしながら考え続けること。 「動かす」は、失敗に負けずポジティブに進み続けることで、人や組織、社会を動かしていくこと。

中でも、「創る」をちゃんと実行できるかにかかっている。そのことは、KOELのメンバーもKESIKIも、認識が一致していました。

大風呂敷を広げたものの、以前と同様、「フワフワしている」と思われていては進歩がありません。「手を動かしながら考える」は、デザイン組織にとって最も重要な考え方のひとつ。パートナーの石川によるこちらの記事もどうぞ。


最新技術の動向は? 競合は? 市場規模は? これまでの組織だと、ついつい頭でっかちに考えてしまいがち。デザイン組織として、ユーザーに寄り添うプロダクトやサービスをつくっていくためには、まず創ってみる。創りながら考える。「創る」をバリューに入れることによって、自分たちがマインドチェンジしていくことを、内にも外にも宣言しました。


一人ひとりの役割を外に宣言する

今回のプロジェクトで、KESIKIは組織内にカルチャーを浸透させていくための設計も担いました。

そのひとつが、「リチュアル」です。KESIKIがカルチャーデザインのプロジェクトを手がける際、毎回、議論する内容で、カルチャーを根づかせていくためのチーム内の儀式や習慣のことです。

例えば、KESIKIでは月曜日の朝に「MMM(Monday Morning Meeting)」、水曜のお昼に「Chat Lunch」、金曜夕方に「TGIF」という時間を毎週、設けています。

MMMの一番の目的は、「今週も楽しくがんばりましょう!」。いま動かしているプロジェクトの状況をシェアし、その週の走り方をみんなで確認します。Chat Lunchでは原則、仕事の話は禁止。最近、ハマっていること、面白かったことなど、ランチを取りながら雑談する時間です。TGIFでは、リモートワークが常態化するなかでこの日だけはオフィスに集まり、お酒を飲みながら1週間の振り返りをします。

KOELメンバーとも、彼らのカルチャーを浸透させていくためのリチュアルを議論し、決めていきました。

そのほか、今回のプロジェクトでは、役職ごとの役割や掌握範囲を決め、スキル例、アクション例を洗い出したり、外部からデザイナーを採用するための方針や面接のプロセスまで検討。採用面接には毎回、KESIKIメンバーも同席し、意思決定をサポートしました。

戦略コンサルティングファームやPEファンドで活躍したメンバーがパートナにいることも、KESIKIの大きな強みです。ミッション、ビジョン、バリューやロゴのデザインだけでなく、それを現実に実践していくための仕組みづくりまで、KOELメンバーとともに走りました。

KOELはデザイン組織です。ただ、外部のデザイナーを雇い入れるのはこれから。現メンバーは、エンジニアや営業、企画などの経験を経て集められており、デザイナーとしての自覚を持っている人は多くありません。

今回、実際に自らのチームに名前をつけたり、KESIKIとともにロゴデザインのプロセスに加わったりすることで、つくりながら考える仕事の進め方を体感し、徐々にデザイナーとしての意識が高まっていったようです。

特に効果的だったのは、KOELのLP(ランディングページ)を立ち上げ、そこにメンバー全員の写真とプロフィールを載せたことでした。撮影は、アーティストとしても世界で活躍するフォトグラファーの宇佐美雅浩さんにお願いしました。


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「NTTコミュニケーションズのような大きな企業で、社員が外に対して顔と名前を出して仕事をするという機会はなかなかないことです。メンバーにはそれぞれ、『UIデザイナー』『UXデザイナー』『ビジネスデザイナー』『デザインリサーチャー』と、デザインという言葉を入れた役割を決め、それをウェブに載せたことで、一人ひとりの覚悟と帰属意識が強まりました」(金さん)

これまで大企業の一組織として活動してきたチームが、独自のウェブサイトを持ち、自分たちの意思を社内外に宣言する。

KOELがローンチして少したったある日、金さんは「メンバーの行動が変わった」と話してくれました。

「メンバーの日々の会話の中に、『問う』『創る』『動かす』がやたらと出てくるんです。また、チームを意識しながらも自発的な行動が増えました。たとえば、フォトグラフィーの部活動がメンバーから発足したり、相互理解のためのインタビューをしたり。“KOEL”としての意識がみんなの中に芽生えているのを感じます」(金さん)

LPを立ち上げ、SNSなどを通じて外に活動内容を伝えることで、効果も表れ始めています。4月からすでに70名を超えるデザイナーの応募があり、実際に数名の採用も決まりました。

外からのポジティブな反応は、KOELメンバーの「チームへの誇り」を高めることにも貢献しています順調に成長するかは、これから次第。

カギを握るのは、ビーコン(英語で灯台の意)です。

ビーコンは、ミッションを体現するプロダクトやサービスのこと。実は今、KOELとKESIKIでビーコンの実現に向けて新たなプロジェクトを始めています。ここで成果をあげることができれば、社内外の認知や評価も高まり、チームメンバーの「誇り」も揺るぎないものになるはずです。

プロジェクトの成果が出たら、いずれこのnoteでお伝えします!

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来たる7月30日(木)、19時〜、NTT Comのデザイン組織 KOELのメンバーとともに、これからの時代に求められるデザインの役割について探究するオンラインイベントを開催します。

KESIKIからは石川、内倉、九法が登壇します。ぜひ、ご参加ください!

詳細は、KOELのnoteでご確認ください。彼らのnoteでは、大企業がいかにして「デザイン」を取り入れ、広げていったのか、その顛末がやさしい文体で綴られています。おすすめです!



KESIKI note 編集チーム 九法崇雄、水口万里、若尾真実、清水龍之介



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人や社会や地球に愛されるモノやコト、そしてそれを生み出す企業をデザインするクリエイティブ・ファームです。http://kesiki.jp

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