[すこし詩的なものとして]0144 私たちは
思い出すあなたのこと
宛名を書きながら
ふとその安心感を覚えた
街には風が吹いている
ブロロロロン
バイクの音が聞こえてくる
それは家の前の
車の通り道
朝のいつもの出来事
呼吸は絶妙なタイミングで
実は行われていて
僕らは奇跡的に生きている
万年筆のインクの跡
不意に君の名前を書き間違えた
それは追いつけない
徒競走の前の子への羨望と諦めと
仕方のないこと
それをポストに入れる頃
新しい朝がやってくる
泳ぐ目は
眠れない夜を駆け出して
朝を待つだけの
あと少しの辛抱
あちらの雲の下
遠雷が聞こえる
星の砂はキラキラと空を舞い
町中には箒の掃く音が聞こえた
あなたの宝物は
あの人のゴミ
届くだろうか
私の文字は
時はまぼろし
聞こえるはずもない
こちらのポストは
あなたのポストに
続く瞬く
繋がる夜へ
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届ける意思と反対の意思。
届いてしまったものは、諦めなければならず、届けたかったものは、届くことはない。
積乱雲は、夏らしい空を作り始めた。
おかしかった尖った日差しは、ここに来て、いつもの夏になりつつある。
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