[すこし詩的なものとして]0018 君が乗りこんだら

あたたかな陽射しがまぶしい朝
ムダにベルを鳴らしながら君を後ろに乗せ、自転車を走らせる
ゆっくりと不安定に走り続ける
腰に腕があたるその感触がいとおしかった
「そこの角を曲がって」
君は風をうけ、頭を僕の背中に少し押しつけながら言った

夜の車道は、きらめくネオンをまとう
アクセルを強めに握り
ただただ僕らは闇夜を駆け抜けた
「ちゃんとつかまってて」
空に言葉はたなびく
気づけば吊り橋の上を鳥のように羽ばたいた
いつもに増して君の腕は僕をしめつけた
風はさらに強く僕らを追いかけた

2人で笑いながら歌った歌を思い出した
「やっぱりこれだよね」
そういう君は決まってあの歌を選んでくれた
握るハンドルは軽快に
アクセルはいつも快適に
僕らはどこかをめざしていた
左手は、君のあたたかな手の上に

いつだって僕らは体を預けた
時はいつでも乗り物だ
風をうけ
場面を通り過ぎてゆく
どこに行くかもわからずに
でもそれは行くあてもない旅ではない
その先にある光のカケラ
カケラは僕たちの最後のピース
そう信じて進んでゆく以外ないのだ

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自分の仕事もリモートワークが増えた。でも週の半分は会社へ。
いつもの駅に向かう中、いつもより人通りは減り、まるで早朝すぎる朝のようで、人はまばらで空気が大波のように流れている。
そんなスペースいっぱいの道を歩いていると、自転車で颯爽と走りたくなるのです。いつもは人で駆け抜けられない道を颯爽と。
そんな気持ちになります。
私たちは、自分の体だけでは生み出せないスピードを欲します。その身近なものが自転車で、幼い頃はそれに、歳を重ね大人になるとバイクや車などよりスピードの出せるものへ変遷していきます。
そしてそこに自分の思い出が重なり、より人との結びつきを強化していくのだと思います。

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