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[すこし詩的なものとして]0063 通りの向こうの影—mirror

冷たい風が頬を刺す
肩をすぼめて
街道沿いを歩く

二車線の車道を挟んだ
対岸の歩道
同じ方向に歩みを進める
あなたがいた

その横顔は
どこか悲しみに溢れている
なんとも空白で
なんとも満たされていない
そんな空気がまとっているように見えた

はじめて見る顔
はじめてだからこそ
興味を惹かれた

でも
その虚で隙のある
細長い目
黒く乾いた
風になびく髮

今一度目を向ける
やっぱりその体躯は
やや老練のある
侘しさがあった

ちょっと気になる
ちょっと話してみたい
でも
こんなわたしは
この瞬間が好きなだけで
その先は不安と疑念しかなかった

だからあの先に来る
バスが通り過ぎたら
もう終わりにしよう
人を見る
人を見る
人を見る
その刹那
想像の許容

大きく息をする
冬の終わりの尖った空気
春の訪れは近いのだろうか

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片方の気持ち
片方の思い
合わせることは難しいのだけれど
前回の詩に対しての合わせ鏡のようなものを書いてみました。

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