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インタビュー|Angles(vol.5 伝統×福祉の職人 藤田さん)

本日はインタビューさせていただいた内容を記載したいと思います。
よろしくお願いします!

0.Anglesとは

”こそきわ構想”や”障害”の周辺で仕事/生活/活動をされている方々に、その人なりの角度(Angle)からの視点で語られるストーリーを伺います。(紹介いただける方が続く限り、、!)

こそきわ構想とは、私が自由研究のテーマとして妄想している内容です。以下に記載しています。

1.インタビュイーご紹介

今回インタビューさせていただいたのは、埼玉県の越谷市の地元の伝統工芸品である「千鳥うちわ」の職人をされている藤⽥昂平さんです。藤田さんはCREATIVE SHERPAという団体で、福祉を通じて伝統工芸を継承する伝統×福祉(伝福(デンプク)連携)の活動をされております。

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2.伝統工芸に興味を持たれるきっかけを教えてください。

伝統工芸品に関心を持ったきっかけは旅行でした。
もともとは会社員として新卒で4年間、橋や高速道路や道の駅などの公共構造物の設計をする仕事をしていました。
25、26歳の時にこのまま仕事を続けてもいいのか?と考える時期がありました。そして、海外に行ってみようと思い立ち、30か国67都市を回る世界一周の旅行を1年間することにしました。

旅行中に最も印象的だったのが、ブラジルの農場に滞在した期間でした。日系のブラジル人の方々が30~40人で自給自足で共同生活している農場でした。現地の方々は家を自分たちで建てたり、家畜を飼育したり、植物を栽培したりという生活をされていました。また、日本のモノづくりも盛んに行われていました。人にプレゼントするためのモノや自分たちが楽しむためのモノを自らでつくるという光景を目の当たりにしました。そのとき非常にカッコイイなと感じ、自給自足やモノづくりに次第に惹かれていきました。同時に、現地の方からは、「日本のモノづくりは非常に素晴らしいのに、後継者がいないのはもったいない」と言われました。ここでの経験によって、自分がモノづくりに携わりたいという想いや職人という選択肢を持つようになりました。

3.その後、どのような経緯で事業を始めるようになったのでしょうか?

帰国後の一番最初のきっかけは、現在の共同代表の羽塚さんとの偶然の出会いでした。羽塚さんは以前から福祉と伝統工芸の技術をつなげられないか、という構想を基に活動されている方で、地元の伝統工芸品を様々探していた私を千鳥うちわの師匠とつないでくださいました。

つないでいただいた当初、師匠は障害者へ技術を伝えること自体に抵抗を持たれていました。そこで私が障害を持つ方と伝統工芸の中継をする立ち位置で活動を始めました。具体的には、師匠から伝統工芸の技術を学びつつ、福祉施設や障害を持つ方に私が技術を教えるということをしていました。これが今の事業の始まりです。本当に偶然のきっかけでした。

4.藤田さん自身の技術の習得と福祉施設への技術の伝承は並行して推進されていたのでしょうか?

基本的には、並行して実施していました。私自身が技術を習得するまで、1年間程度師匠のもとに通い、その傍らで福祉施設へも月1回程度通いながら、障害を持つ方への技術の伝承を行っていました。
1年後には、部分的ではありますが、障害を持つ方の作業ができている状況に到達することができました。同時に私にとっても、インプットされた技術をアウトプットするという良い機会となっていました。

5.藤田さんご自身はどのような想いを持ちながら、事業をされているのでしょうか?

私自身が本当にやりたいモノづくりに様々な方々が関わってくれることに非常に感謝しています。障害を持つ方に対して支援をしてあげているという感覚はなく、自分が本当にやりたいモノづくりに一緒に携わってくれる仲間がいることに喜びや充実感があります。
自分が好きなモノづくりを周囲の方々と分かち合いながら、最終的には持続可能な取り組みにしていきたいと考えています。

また、福祉や伝統工芸というものを通じて、社会との接点を持つことができていることに対する感謝の気持ちもあります。

6.事業をされる中で、どのようなことに苦労されていますか?

やはり、お金の面での課題です。現状は助成金や売上によって、継続できていますが、まだまだ不安定な部分もあります。
実際の作業をしてくれている方々の中には、ルーチンを好む自閉症の方々もいます。いつ終わるかわからないという状況だと、当事者やその保護者の方に対して、不安やストレスを与えてしまいます。
なんとかして守らなければいけないな、という想いが強くあります。

7.事業をされてきて、”障害”や福祉に対する捉え方の変化はありましたか?

”障害”については、場を整えることによって”障害”/特徴を持つからこそできる輝きがあるということを強く感じるようになりました。
何時間も作業をやり続けることができたり、非常に精密に作業をすることができたり、といったように私には到底太刀打ちできない特徴を持っている方々がたくさんいらっしゃいます。
そういう方々がどのような作業であれば輝くことができるのか、を考え、
依頼することこそが私の役目であると考えるようになりました。

また、福祉については他人事ではないなと捉えるようになりました。
自分自身も短所やできないことがあり、障害を持つ方々からの協力得ながら工芸品を作っています。一方、私の行動によって当事者の方々に提供できているものもあると思っています。
このように補い合う関係性であったり、できないところを認め合う関係性によって成り立つ社会やコミュニティこそが福祉という捉え方に近いと私は
解釈しています。

8.今後のVisionを教えてください。

伝統×福祉(伝福(デンプク)連携)のモデルで、他の様々な伝統工芸品の
技術の継承に貢献できるようにしていきたいと思っています。
今はまだ千鳥うちわのことで精一杯ですが、少しずつ他の手仕事や日本の
モノづくりに触れる機会も増やしていきたいです。

9.Visionに向けた課題を教えてください。

課題は大きく2つあります。
一つ目は、デンプク連携の取り組みに共感してくださる職人さんとのつながりを作っていくことです。
職人さんに実際に取り組みの意義を理解してもらい、協力を得ることには一定のハードルがあると感じています。
二つ目は、私のように伝統工芸と福祉の媒介をする立場のポジションのプレイヤーも増えていく必要があると思っています。私一人だと、千鳥うちわを継承する形を整えるので精一杯になってしまっています。

10.インタビューを終えて

改めてお話を聞いて、藤田さんの取り組みは私が目指したいこそきわ構想のレバレッジ人材だったり、”障害”を持つとされるからこその能力の発揮を体現されている活動だなと解釈させていただきました。
その人が輝ける能力を測るためのモノサシがすでに生み出されていると感じました。

また、自立と依存の関係性については改めて考えさせられました。
藤田さんのお話の中では、多くの方々に助けてもらいながら今の事業や活動が実現できているという旨のメッセージが色濃く伝わってきました。
まさに、藤田さんは自立はしているけれども、多くの人に依存をしている状態なんだろうなと感じさせられました。
色々なところで語られている熊谷晋一郎先生の言葉が想起されます。

自立とは「依存先を増やすこと」
(中略)
「自立」とは、依存しなくなることだと思われがちです。でも、そうではありません。「依存先を増やしていくこと」こそが、自立なのです。これは障害の有無にかかわらず、すべての人に通じる普遍的なことだと、私は思います。

自分自身は、どのように自立を理想としているのか?改めて考えてみようと思います。
ありがとうございました!


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