動物たちの青春マンガ!『BEASTARS』を読みました。
『BEASTERS』が完結しました。2018年の漫画大賞作品です。
擬人化された動物たちの青春マンガです。モノローグが多くて、コマ割りがちょっと独特で、オオカミの主人公がうさぎのヒロインに恋します。
動物が生きる世界のお話ですが、現実世界を映したような群像マンガで、いろいろ思うところがあったので、まとめてみます。
あらすじ
全寮制のチェリートン学園でアルパカのテムが何者かに食殺された。
肉食獣と草食獣が共存する世界で、それは最大のタブーであり、超えられない種の壁でもあって…。
ハイイロオオカミのレゴシ(17歳)と多種多様な動物たちが織りなす、激しく切ない青春群像劇!!(出典:秋田書店BEASTERS特設サイトhttps://www.akitashoten.co.jp/works/beastars/)
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キャラクターの話をすると、がっつりネタバレになってしまうので、世界観の話をしようと思います。
【それでも少しはネタバレになってしまいますので、ご注意を】
一筋縄ではいかない10代後半の葛藤がありました。キャラクターの個性が多面的で、移り変わりがとても鮮やかでした。
「若さとは振り返らないこと」
と誰かが言っていた言葉を思い出しました。善い・悪いではなくて、「今」を最高速度で駆け抜ける雰囲気があって、読んでいる方もドキドキしてしまいました。あっという間に22巻を読ませた魅力を紹介します。
①感情が鮮やか!
②セリフがかっこいい!
①感情が鮮やか!
感情の移り変わりのスピードがはやく、とても鮮やかです。特にヒロインのハル(ドワーフ種のうさぎ)の恋心は予測不能です。基本的に、男性キャラ(オスキャラ?)は、鈍感で単純です。一方、女性キャラ(メスキャラ?)は、敏感で、繊細です。
主人公レゴシが住むアパートのお隣さん・セブン(ひつじ)さんも感情の起伏があるキャラクターです。セブンさんはスポーツメーカーに勤務しているOLで、スポーツ用品で同僚の肉食獣とばったり遭遇します。(レゴシも一緒にいました。)
同僚の肉食獣たち
「あれ!?ラムちゃんじゃーん
セブン
「うわわ 最悪」
~略~
同僚の肉食獣たち
「てか 休日なのに売り場視察!? 相変わらず 仕事熱心だねー」
~略~
レゴシ
「……??? セブン…ですけど この人の名前 ラムじゃなくて」
同僚の肉食獣たち
「ハイ…俺たち そんな…悪気なくて」
(8巻p74~)
レゴシが名前を訂正しました。実は、セブンさんは会社で、「ラムちゃん」と呼ばれていて、本名で呼ばれていませんでした。肉食獣向け商品を売っている会社では、草食でヒツジのセブンさんは完全になめられていたのです。
困っていたところをレゴシが救ったともいえる場面です。
ですが、同僚の肉食獣たちがいなくなった瞬間、セブンさんが怒ります。
「私を助けたつもり?
どうしてあんたみたいな 子どもが私より発言権を持っているのよ!!
わたしより12歳も若くて 社会経験もロクに経ていない あなたが、、、
愛想笑いの一つもせず たった一言であいつらを黙らせた、、、!
ただ大きい 肉食獣という だけで!」(8巻p82)
ヒツジの怒った表情もリアルなのですが、感情が徐々に膨れ上がって、爆発する様子がリアルに感じました。現実にもあるなって。
感情のグラデーションが鮮やかです!
②セリフがかっこいい!
BEASTERSはセリフがかっこいいです。言葉で決めにきている瞬間があって、圧倒されてしまします。例えば、裏市(違法に肉を売っている露店が集まる市場)で医者をやっているゴウヒン(ジャイアントパンダ)が患者を見送った後のセリフです。
主人公のレゴシは医者のゴウヒンに質問します。
レゴシ
「ふと気づいたんですけど ゴウヒンさん 食殺した患者を一切警察につれていってないんですね、、、
フィレット2匹食べるって 重罪ですよ けっこうまずいんじゃ、、、」
ゴウヒン
「俺はクマ科だ 肉食獣を裁くことで 世直しする気はねぇよ
たまたまパンダとして 生まれたから 肉を食いたくならない
それだけで公務員よろしく 優位に立つなんて おかしいだろうが
~略~
罰することで 平和になるほど 世界は単純じゃない
これは精神科医の エゴだが、、、
どんな肉食獣も 本人次第で変われるし 俺がかえてやりたいんだ」
(8巻p161~163)
キャラクターの生き様・人生感が反映されていて、覚悟がこもったセリフがあります。これがBEASTERSの魅力の一つだと思います。
過去のトラウマや経験、コンプレックスが言葉ににじみ出ているのです。特に、生まれ持った種族(どの動物として生まれたか)にコンプレックスを持っているキャラクターが多く、どう折り合いをつけるか、もがいている言葉も多いです。
あと、言葉に混じりけがないんです。思ったことをそのまま声に出して、
ぶつけてみる感じが青春です。いわないでもよい一言で傷ついて、いいたいひと言がいえない、そんな、もどかしさがあります。うん。
生い立ちとキャラクターから見た景色が語られ、作者が本当に一人なのか不思議です。(マンガ家さんって、何人も演じ分けていてすごい!)
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BEASTERSは「らしさとの葛藤」を描いているようにも思えました。
BEASTERSのキャラクター達は自分の所属グループを強く意識しています。例えば、主人公レゴシでいえば、肉食獣、イヌ科、ハイイロオオカミ、など生まれ持った動物のイメージをくっきり意識しています。
所属するグループには一般的イメージがあります。オオカミらしい凶暴さ、うさぎらしい弱さ、などなど。キャラクターたちは、肉食獣だから、、、草食獣だから、、、と発言する箇所があり、イメージ通りに振舞いたい願望と唯一でいたい願望がひしめき合っています。
ルイ(レゴシの先輩のシカ)
「この俺に牙を見せてみろって 言ってるんだ」
レゴシ
「い いや あの 肉食が草食に牙向けるのは法律で禁じら、、」
ルイ
「俺を草食でまとめるな!」(2巻p83)
上の場面では、所属グループでまとめられることの反発が描かれています。
草食が、、肉食が、、のような会話が多く、立場を踏まえた発言が時には人を傷つけいます。
変えられないところを憎み、変えられる部分におびえている。
「らしさ」にしばられたストーリー展開ともいえることが魅力であり、BEASTERS独特の世界観を演出しています。現実でも、男性-女性、文系-理系、若者-年寄りなどカテゴリーで語られることがあります。そのカテゴリーに縛られ語られる意義みたいなものを問いかけているようにも思えました。
でも、完結の22巻まで読んでみると、不思議と
「所属も個性」
って、感じました。うまく説明できないんですが、、、
*
青春がたくさん詰まっていて、
本棚に向かえば、思い出させてくれる。
買ってよかったと思える作品でした。
最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。
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