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23時、ドンキ前にて

ドラムの練習をしにひとつ隣りの駅まで自転車を飛ばした帰り道、駐輪場に置いた愛機を取りに行く途中某驚安の殿堂のお店の前からある声がした。

「絶対そんなフッ軽なやついないって!」「そうだよ俺も珍しくこんな時間に外でてるくらいだもん」「えーでも誰かいないかな」

恐らく今から出かけられる友人を探しているのだろう。声の様子と見た目から恐らく高校生かなと思われた。無いとは思うが中学生にも見えたし、逆に大学生と言われても別に納得はする雰囲気だったので断定はできないけれど。

とにかく23時過ぎにそんな光景を見かけた僕は密がどうとか、なんでこんな時間に集団でとかそんなの二の次で「なんかいいな」と思ってしまった。

きっと普段はこんな時間に外にいることは無いのだろう。そして得てしてこういう普段出歩かない時間に友人と集まっていたら自然とテンションが上がってしまうものだ。その気持ちはよく分かる。
聞こえたのは僅かな会話だったが、そんな些細な会話からもそんな感情が読み取れるような声のトーンだった。

もし今世界がこんな状況になっていなかったら彼らももっと夜中に遊んだり、深夜にドライブをしたりオールでカラオケしたりという遊びをしていたのかもしれない(今もしてるかもしれないが)。
けれどあの会話の儚さというのはきっとこの制約なしには存在しなかっただろう。

すぐに帰ってしてしまったから結局彼らが今どうしているかは分からない。あのまま4人でどこかへ出かけたかもしれないし、某驚安の殿堂で買い物をして近くでだべるだけかもしれない。はたまたなんか違うねなどと言って解散しているかもしれない。

そんな見ず知らずの彼らに儚さを感じながら帰宅した少し蒸し暑い夜だった。

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