見出し画像

アメリカで羽ばたく日本の精神

2021年、アメリカのメジャーリーグで大谷翔平がアメリカンリーグのMVPを受賞しました。投手と野手、どちらも期待に応える活躍で、日本人だけでなく世界中の野球ファンの心を鷲掴みにし、MVP選定時には史上初となる全票を受賞しての受賞となりました。

野球ファンであり、また同じ1994年生まれの僕としては、連日メディアを賑わせた大谷翔平の活躍には毎日興奮させられたし、それをきっかけに自分も何か頑張ってみようとやる気が漲るのを感じていました。また、周りを見渡すと、野球にあまり興味のない人々も大谷翔平の活躍に注目していました。野球というスポーツの枠組みを超え、世界で活躍する一人の日本人を国全体が応援し、改めて日本人としての誇りを抱いていたのではないかと思います。

ところで、アメリカの人たちは大谷翔平に対して、そのプレーだけでなく、野球に対するひたむきな姿勢やグラウンド内外の模範的行動に対しても評価をしているそうです。野球を純粋に愛する気持ちと日々丁寧で謙虚でいる姿勢は、従来の豪快な野球選手のイメージを壊すものであり、未だかつてあまり見受けられなかった、新しいタイプの野球選手としてのアイコンとなっています。アメリカという野球発祥の地で、人々からそのプレーだけでなく、日々の行動をも評価され、受け入れられている、という事実もまた嬉しく思います。

***

2019年、とあるドキュメンタリーがアメリカ中で大人気となりました。その名は「Tidying Up with Marie Kondo」。日本で片付けコンサルタントとして活躍していた「こんまり」こと近藤麻理恵が、アメリカの家々を訪れ、片付けを指南していく、という番組です。広い家を持っており、あまり片付ける習慣を持っていなかったアメリカの人たちには、こんまりが提唱する「こんまりメソッド」が新鮮なものとして映り、その年のNetflixで最も人気のあったノンフィクション番組に選ばれました。今では片付けをKondo/KonMariという動詞として使う人もいるとの話もあります。

日本では主に主婦層をターゲットとして片付けを指南していたこんまりも、アメリカでは一家全員をターゲットとしており、一家全員で取り組むことで改めて家族間の仲を見直すようなアプローチが行われていました。片付けには「ものを捨てる」というイメージが強くありますが、こんまりメソッドは「何を残すか」といったことに焦点を当てており、そのものがときめく(spark joy)かどうか、を一つ一つ手にとって確かめています。番組では、片付けを通して家族の仲が改善され、幸せを取り戻した様子も見ることができます。

こんまりが提唱している「モノへの感謝」という考えはおそらく、アメリカの人たちには馴染みのなかった概念だったかと思います。片付けの結果、ときめかなかったものに対しても必ず感謝の気持ちを込めて、ゴミ袋に入れる。そうすることで、ひとつ感情が生まれ、捨てる際にも気持ちよく送り出せます。これで今まで多くのものを抱えていた家もすっきりと居心地の良い空間を作り出すことができました。

***

この大谷翔平とこんまりの活躍の裏には、日本人の精神が色濃く反映されていることが見て取れます。大谷翔平が野球という道を追求したり、ゴミ拾いをはじめとした基本的な行動をしてアメリカのメディアから評価されることも、こんまりが身の回りのすべてのモノやそれをさせる家に感謝を伝え、自分の心に正直になることを説きアメリカの人たちの心を動かすことも、どちらも日本の奥深い世界観が表れていると思います。

日本には宗教的感覚が薄い代わりに、儒教や仏教、神道を由来とした国独自の文化が強く国民に浸透しています。それらは諸外国には理解しづらい概念ではあるけれど、大谷翔平やこんまりのようにアメリカを始めとした世界中でも受け入れられ、評価されています。

かつて新渡戸稲造が、この日本人的感覚を『Bushido』としてアメリカの人たちに伝えていたように、これからもこの大谷翔平やこんまりの成功の裏打ちをするように、日本の良き文化を海外に伝えていく必要があると思っています。

僕はフィリピンに来てから、日本の良さに気づくことが何度もあり、日本が素晴らしい国だと心の底から思うようになりました。これからどういった形かはわからないけど、世界中にこの日本人的感覚を伝えていったり、実際に自分の身をもって示していけたらいいなと思っています。アプローチの方法はたくさんあると思うし、日本を知らないような海外の人も対象にしていきたいなって思っています。

郷にいれば郷にいるのももちろん大切な考えではあるけど、日本人としての精神を持った上で世界に羽ばたいていくことで、日本という母国に対して貢献できたらいいなって思いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?