世界はもっと、朧げでいい。
今のカメラはとても綺麗に写る。
でも綺麗に写りすぎて、どこかしっくりこない自分がいる。
なぜだろう。
僕らの世界は僕らの記憶で出来ている。
僕には僕の真実があって、あなたにはあなたの真実がある。
そんな混ざり合わない真実を競い合わせる世界は、どこか掴みどころがなくて、白黒はっきりしない。
ピントは合っているはずなのに、なぜか朧げなもの。ならば朧げなままに、世界を写してみてもいいのではないかと思った。
曖昧なままにしたい記憶も、はっきりと思い出せない感覚も、そのままに切り取ってみたいと思った。
僕がフィルム写真にこだわるのは、その方が真実に近いと思ったから。あとで綺麗に見返そうとしても、綺麗に写りすぎない。その方が、なんだか美しいと感じる。
それは“健康な美”であり、“腐る”ということ。それが美しさの巡りを生み出していく。
自分の感覚に寄り添って、感情に素直になって、目の前の景色を見つめ直してみる。
世界は淡く朧げで、そんなに綺麗なものじゃない。
でも、それでいいのではないだろうか。
(210930)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?