「職場の雑談」って、意味あるの?
この前Twitterを眺めていたら、桂大介さんという方の下記のつぶやきが流れてきて、めっちゃ面白い観点だなあって思いました。
去年からの新型コロナウイルス感染症の影響で、リモートワークをする人が増えました。
「リモートワークって、やってみると意外とめっちゃ楽じゃん!」という声が上がる一方で、「やっぱりオフィスに集まってみんなで仕事するのもいいよね」って声も上がったというのが、ぼくの個人的な感覚です。
それで、後者の「やっぱりオフィスに集まってみんなで仕事するのもいいよね」って声が上がる理由のひとつって、さっきの桂さんの投稿の「雑談から生まれる創発」だと思うんですよね。
何気ない会話から生まれるクリエイテビティこそが、複数の人が同じ場に集まることの意義なのだということです。
これに関しては、ぼくもリモートワークが始まった当時、同じようなことを思いました。
ただ、じゃあなんで冒頭の桂さんのツイートが面白いと感じたのかなと思ったときに、ぼく自身がいま、1週間のなかで「オフィスで働く」という選択肢と「リモートワーク」という選択肢の両方を取っているという背景があるのではないかなと思います。
両方を交互に経験するなかで、「職場での雑談って、本当に意義あるものなのかな?」って頭の片隅でうっすらと思っていて、その気持ちを代弁してくれたように感じ、桂さんのツイートが目に止まったのだと思います。
では、本当に「職場での雑談」って意味のないものなのかなと思って、このnoteで改めて「職場での雑談」について整理することにしました。
めちゃくちゃ前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。
そして、ここから少しずつ「職場での雑談」を整理していきますが、あらかじめ断っておくと、現時点において、「職場での雑談は意義あるもなのか」に関する明確な答えを、ぼくは持ち合わせていません。
「職場での雑談」を3種類に分類する
まず、「じゃあそもそも職場での雑談ってどこからどこまでなの?」の定義が人によってバラバラだと思うので、ひとまずこのnote中では「MTGの時間以外の全ての会話」という定義にします。
これは、前に同じ会社の先輩がこの定義を使っていので、パクります。
それを前提としたうえで、ぼくなりに「雑談」を3種類に分けました。
①趣味や日常の話
②目の前の業務とは関係のない話
③目の前の業務の話
の3種類です。
左から右に行くにつれて、話の内容が「プライベート」から「仕事」寄りになっていくイメージ。
具体的な例を挙げると、一番左の「趣味や日常の話」は、例えば「最近ハマっているもの」とか「この週末って何してたの?」とかって会話です。
次の「目の前の業務とは関係のない話」っていうのは、言い換えると「目の前の業務ですぐに使うわけではないけど、普段仕事をするなかで感じた話」ということ。
例えば「最近仕事をしててね、クライアントと円滑なコミュニケーションを取るための方法って◯◯だと思ったんだよね」とか、「昨日△△って会社が資金調達したよね」とかって話は、ここに分類されます。
最後の「目の前の業務の話」ですが、これはそのままで「いまやっているプロジェクトって、進捗どう?」とか、「××さんから返信あった?」とかって内容ですね。
そもそも、最後の内容を「雑談」に入れるかどうかは少し議論の余地がありますが、今回の定義が「MTG以外で話す全ての会話」なので、これも今回は「雑談」に含ませます。
ということで、ひとまずいま職場で一般的に行われているような会話を、3種類に分類してみました。
次は、じゃあ「そこからクリエイティビティは生まれるのか?」という観点に移ります。
「雑談」で得られる3つの効果
次に、「雑談」によって得られる効果も、3つに分類してみました。
①信頼関係
②(その情報を)組み合わせたり抽象化したりすることでの転用
③目の前の業務への対応
です。
まず1つ目の「信頼関係」に関しては、雑談を通して「あ、この人はこんな一面があるんだ」という仕事以外の面を知ったり、そもそも直接的な仕事以外の会話をする雑談という行為そのものが、「あ、この人とはこういうコミュニケーションの取り方をすると、スムーズにやりとりができるのだな」とか、「困っている時にあの人にお願いされたら仕方ないな。よし、やるか!(とポジティブな意味で思える)」とかって関係につながったりします。
次の「組み合わせたり抽象化したりすることでの転用」というのは、少しややこしい表現をしてしまったのですが、例えば「組み合わせる」で言うと、「自社のホームページをリニューアルしたいんだけど、どこかいい制作会社ないかな」と思ったときに、「これからの時代は全部を自社で内製するんじゃなくて、いろんな会社とパートナーを組んでいくことが大事」って話をAさんとしていたことと、「そう言えばこの前同僚のBさんが『Cって制作会社と仕事したけど、めっちゃ腕前が良かった』って言ってたな」ってことを思い出して、Bさんに「ねえこの前のCって制作会社についてもう少し詳しく教えてくれない?」って聞きに行くことですかね。
なんかあまんりいい具体例じゃなくてすみません。
「転用」のもう一つの「抽象化」で言うと、例えばCさんから、部下のDさんに少しキツイフィードバックをした後、すぐにランチに誘ってフォローしたって話を聞いて「あ、上司が部下と信頼関係を築くためには、アメと鞭を使い分けるのが大事なんだな」と、自分の中で「他の場面でも使えるように、その話の要点を整理きて普遍性を持たせる」ってイメージですね。
これらのように、その話をを聞いていますぐにそのまま目の前の業務に生かすというよりかは、もう少し他の情報と組み合わせたり他の場面になったりしたときに、真価を発揮する雑談の効果を「組み合わせたり抽象化したりすることでの転用」と定義します。
ちょっと脱線しますけども、「職場での雑談」だけが決してこの「転用」に起きるわけではなくて、個人的に「職場に集まる」ことの意義って、「盗み聞き」も大きいなと思っています。
例えば、自分はその会話には入っていないけど、別の人同士が近くの席で話しているのを何となく聞いていて、「あ、別部署の人はこんな仕事をしてるんだ」とか、別の人たちのMTGの内容がなんとなく耳に入ってきて、「あ、そういうコミュニケーションの仕方もあるのか」とかって効果を得ることができます。
別に自分が直接的に会話する以外でも、職場ってめちゃくちゃ情報が存在する場所だと思うんですよね。
閑話休題。
では「職場での雑談」の最後3つ目の効果は「目の前の業務での対応」で、これはもうそのままです。
「ここってどうすればいいですか?」と上司に聞いて解決したり、逆に上司が部下に「あの件ってどうなってる?」と確認して、「いま少し遅れてしまっています」と回答して、「じゃあ少し期日を変えるか」とか「遅れてしまった要因は何だ?」とかってコミュニケーションにつながるイメージですね。
そして、この「雑談の効果」は、先に出した「雑談の種類」によって、得やすい時と得にくい時があるなと思っています。
ということで、2つの図をまとめます。
それぞれの雑談ごとに得やすい効果
それぞれの雑談ごとに得やすい効果に関しては、あくまでも「得やすい」であることを予めご了承ください。
絶対に得られるわけではないし、逆に矢印がないものが絶対に得られないわけでもありません。
少し補足すると、例えば効果面の「組み合わせたり抽象化したり」することは、その効果そのものの性質上、「趣味や日常の話」からも得られるものは絶対にあるはずなんですけど、図が複雑になりそうだったのと、「職場での雑談」におけるメインの効果でいくと、図には入れなくても差し支えないかなと判断して、今回「趣味や日常の話」から「転用」への矢印は載せませんでした。
あと、「目の前の業務」の話って、基本的にはそのまま「目の前の業務の話」につながるんですけど、その業務を通して、「あ、次に似たような場面があったときはこんな感じにすればいいのか!」という転用につながりやすいので、「転用」も効果として入れました。
そして、冒頭のツイートの「職場での雑談によるクリエイティビティの発生」って、おそらく世間一般的には真ん中にある「目の前の業務とは関係のない話」による「組み合わせたり抽象化したりすることでの転用」を、イメージする人が多いのではないでしょうか。
あと今回の議論において大事なのは、これが「職場でしか発生しないもの」なのか、もしくは「リモートワークでも再現できるもの」なのかというところです。
まず最初の話の種類の「趣味や日常の話」に関しては、一定リモートでも実現できるのかなと思っています。
リモートワークが普及してから、各会社リモートで朝会をやったり、あとは月に1回くらい定期的に集まって、ご飯を一緒に食べるなどの取り組みを実施している企業もあったりします。
関連するところだと、例えばMOLTSという会社は、元からリモートの人が多かったのですが、先日「オフィス」を解約して代わりに「一軒家」を契約して、そこでメンバーが定期的に集まるような取り組みをやっています。
あと「目の前の業務の話」のリモートでの再現性に関しては、そもそもこれが雑談なのかと感じる人もいると思いますし、「業務に必要な話なのであればそれはしなさいよ」ということだと思うので、再現性うんぬんという話ではないかなという気もしています。
ただ、そのうえで、あえて「リモートでの再現性」に関する議論をするのであれば、部下側からの視点だと「オフィスにいたら、その場で口頭でパッと聞けることが、リモートでチャットだと聞きにくい」ってことはあるかもしれません。
あと逆に上司側からの目線だと、「オフィスにいたら顔色や動作などで何となくいま仕事に詰まっているか順調なのかを把握できるが、チャットや電話ベースでのコミュニケーションだとそれが難しい」というのはあるかなと思います。
これは組織運営的な観点だと、こまめな1on1あたりが対策になるのかもしれません。
この話は「職場での雑談」とは少しズレますが、とは言え「オフィスで顔を合わせている」ことによる「お互いのメンバーの状態把握」という効用は、「雑談から生まれる創発」とは違う観点で、けっこう大事なのではないかなと思います。
そして最後に「目の前の業務とは関係のない話」ですが、これも例えばSlackの「ハドルミーティング」という機能を使ったり、
(参考:やっと使えるSlackの新機能、ハドルミーティングを使ってみた)
Slackやチャットワークなどのビジネス用のチャットツールで雑談部屋を作成したりすることによって、一定リモートワークでも再現性を持たせられるのではないかなと思っています。
ぼくたちの会社はやっていませんが、会社によってはお互いにZoomを常時接続するみたいな施策をやっている会社もありましたよね。
ただまあ、「突発性」や「参加ハードルの低さ」とい観点だと、やっぱり「オフィス」の方に分があるかなと思います。
Slackのハドルミーティングにしても雑談部屋にしても常時接続にしても、そこでオンイランの発言できるのって、一定のリテラシーや社内での市民権を得ている人じゃないと、相当難しいと思うんですよね。
でも職場にいれば、もう少し気軽に話に参加したり、あとは振ったりすることもしやすいのかなと、個人的には感じています。
結論がないなりの結論
そして、冒頭で「結論を合わせていません」と断って、本当にないんでんすけど、明確な結論がないなりの結論を書いて、このnoteを締めます。
そもそも、この「リモートワークか職場か」みたいな議論って「どっちが100%こうだ!」というよりも、グラデーションだと思うんですよね。
どちらの働き方もなにかを完全にできる・できないってわけではなくて、何かがしやすい・少しやるにはハードルがあるって捉え方の方が実像に合っている感覚があります。
そして、めちゃくちゃざっくり言っちゃうと、やっぱり「職場」の方が雑談をしやすいし、それ以外に得られる情報量もめちゃくちゃ多いです。
情報量が多い分、そこからなにかが生まれやすい部分もあるかもしれません。
ただそこで問題なのは、多いのは「情報量」であって、そこでは情報の「質」に関する視点が抜けやすいかもしれないなということです。
「職場での雑談」から生まれるものはたしかにあるかもしれないんですけど、間違いなくその「雑談」の時間は使っているわけですし、集中力もそこで一回途切れるんですよね。
冒頭の桂さんの「職場での雑談はただの無駄な時間ではないのか?」という発言も、このあたりの問題意識から来ているのではないかなーと推測しています。
実際、「職場での雑談や周りの話し声が生産性を下げるのではないか」みたいなところに関連する研究も、ちょこちょこ記事などで見かけます。
企業が基本的には「生産性」や「利益」、「顧客への価値提供」などを目指していて、かつぼくたちの時間や集中力は有限な以上、「職場での雑談からクリエイティビティは生まれるか or 生まれないか」ではなくて、「どれくらい効率的に生むことができるか」で考えないといけません。
それがやっぱり職場に集合した方がいいのか、全員フルリモートでそれに最適化した仕組みを作るのか、はたまた出社とリモートを組み合わせた働き方をするのかは、それぞれの会社の個々の従業員の性質や価値観、そして会社全体のカルチャーや事業モデルなどに依るのではないかなというのが、ひとまずの結論です。
別に「出社=古臭い」とか「フルリモート=先進的」とかってことはではなくて、めちゃくちゃ最高なプロダクトを作っているGoogleは、どんどん出社の方に舵を切っています。
だから「絶対的に何が良くて何が悪い」とか「職場だと雑談が生まれやすくてリモートだと難しい」とかってことではなくて、会社全体の生産性の観点で見たときにどの形態が一番自社との相性が良いのかを考えることが、大事なのではないかなーと思います。
ということで、「職場での雑談はクリエイティビティを生むのか」というテーマから、「雑談の種類」とそこから生まれる効果について整理しました。
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