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「好きを仕事に」の弊害

『好きを仕事に』という言説が普及して久しい。

もうこれだけ広まってるから、これはこれでいまの世の中を生き抜く一種の正解なのだろうけど、その一方で『好きを仕事に』することの弊害というか、こんなことに気をつけたほうがいいよなぁなんてことも、ときにぼくは考えてしまう。

たぶんそれは、ぼくが少なくとも現時点においては『好きを仕事に』という形に限りなく近い結果としてなっているからという、すごくうれしい悩みであることもうっすら自覚している。

だからまあ、いまこの感覚があるうちに『好きを仕事にすること』については、とことん考えていく所存である。


ということで本題に入ると、今日の話の焦点は、一言で言うと『技量の追究とマネタイズについて』だ。

それについてすごく考えさせられたのが、ホリエモンこと堀江貴文さんと、ファッション業界で活躍しているMBさんの対談を読んだとき。


>【堀江貴文×MB】飲食業界は経営センスの無いスライム同士が戦ってる


記事のタイトルがめちゃくちゃ刺激的なんだけど、中身を読んでみると、すごく大事な話をしている。

2人が主に話しているのは『飲食業界』についてなんだけど、これは業界問わず、どこにでも普遍的に存在する問題だろうなあと思った。

その問題というのは『その行為を好きで始めた人、経営(≒マネタイズ)のセンスがない問題』


例えば、記事に出てきた飲食の話をすると、堀江さんいわく、飲食の経営において大事なのは料理のスキル以上にマーケティングやブランディングといった、言い換えると『どうやってその料理を見せるか、どうやってそのお店を演出するか』ということらしい。

ただ、料理が好きで飲食店を始めた人は、そういった見せ方よりも『料理の味そのもの』を極めようとする。

『自分は最高の料理をお客さんに提供するんだ!』と。

ただ、すごく残酷な現実について話すと、たぶんお客さんの満足度という観点からは、90点の料理が95点になるより、料理は90点のままでも、その演出の仕方が70点から80点になったほうが、トータルの満足度は高い。

しかも店側が注ぐ労力も、90点の料理を95点にするより、70点の演出を80点にするほうが小さい。

それで、MBさんが記事中で、あえて極論を言ったのだろうけど『メシが作れない人こそ飲食やるべきですよね。』といった感じで堀江さんの話に同調していて、要はそういうことだよねと、ぼくもお2人の対談記事を読みながら思った。


あと、MBさんは自分のいるアパレル業界に引き寄せた話をしていたのだけど、その言葉がまた秀逸だった。

洋服を洋服として売ってる人が多すぎるんですよ。
洋服を売るために洋服を作ってるんじゃなくて、何かのためにツールとして洋服を使ってほしいんですよ。


『好きを仕事に』のメリットの1つは、それが好きだから誰に強制されるわけでもなく、自分で勝手にどんどんのめり込んでいき、どんどんその技量が上がることだ。

一方でそれは言い換えると『手段が目的化』している状態でもあって、技量の追究という観点だけから見ればそれは大いなるアドバンテージだけど、次にその技量を活かしてマネタイズに向かおうとしたとき、逆にそれが障害になることもある。


『自分は世界最高の料理を届けたくて、このお店をやってるんだ!』

『自分は毎日料理さえできてれば幸せだから、別にお金儲けとかそういう難しいことはどうでもいい』


もちろん、別にわざわざぼくなんかがフォローするまでもない記事中のお2人だけど、一応補足しておくと、MBさんはめっちゃ服のことが好きで、お金を稼ぐのが上手なだけでなく、ほとんどお金にならないバイヤーの仕事を、楽しいからという理由で続けていたりもする。

堀江さんも、和牛を世界に広めるみたいなコンセプトでユニットを組んで活動しており、料理についても非常に精通している。


だからまあ、今日の話に正解はないから、なんとも歯切れのいい締め方が見つからないんだけど、MBさんも堀江さんも、別に服や飲食のことをそんなに好きじゃないからうまくお金儲けできているわけではなくて、むしろ逆で、好きで好きでたまらないからこそ、これをどうやって広めようとか、どうやって価値に転化しようとかっていうのを必死になって考えた結果、好きが何周か回っての『服の手段化』であったり『料理の手段化』なのだと思う。

『好きを仕事に』で最悪なのは、お金か広告(=集客)の問題で、その好きを続けられなくなることだ。


だから本当の本当にそれが好きだったら、結果的に『好きの手段化』まで割り切れる境地に達するのかもしれない。

まあ、それでも『自分はとりあえず料理ができてればいい』『絵をかけてたらいい』『文章を書けてたらいい』っていう人もいるだろうから、どれが一概に正解っていうのは言えないんだけど、好きがゆえにそれを手段にしてしまう考え方もあるよっていう話。


▼『好きを仕事に』シリーズ


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