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『青葉家のテーブル』は、ドラマコマースの先駆けではなかった

『PR』について、ものすごく面白い記事があったのでメモ。


>「企業のPublic Relations は社会へのギフトである」 PR映画から紐解く企業コミュニケーションのあり方——イベントレポート#12


登壇者は、クラシコム代表の青木さんと、ONE MEDIA代表の明石さん、そして広島市立大学・広島平和研究所で准教授を務める河さんでした。


『PRはなんのために存在するのか』というテーマをベースにしながら、議論は進みました。

そもそも、なぜPRは存在するのか。もっと言うなら、なぜPRは必要なのか。


クラシコムの青木さんは、PRの存在意義をこのように答えます。

青木:PRはモノを売り、直接利益を生み出すための手段ではないんですよね。企業の商品がナンバーワンに素晴らしいものだったり、どこよりも安いものだったりしたら、実はPRって必要ない。PRをしなくてもモノは売れます。

ところが、ほとんどのビジネスパーソンは、最高でもなければ最安でもない商品を売っています。そうすると、どういう方法で動く必要があるかというと「商品を売る前に自分を売れ」です。

関係性をつくってその関係値でモノを売るしかない。PRをせざるを得ないんです。その中において、どう自分を紹介していくかということが極めて重要になってくるわけです。

冒頭からインパクトあります、『PRはモノを売り、直接利益を生み出すための手段ではない』

ここ数年、特にPRという言葉を聞くようになった気がするんですが、その背景としてやっぱり『テクノロジーの進歩』は避けては通れません。

いままでは、テクノロジーを駆使して、最高性能のものを作ったり、最安の商品を作ったりすることができたんですが、テクノロジーの進歩のスピードが上がったことによって、単純な性能や値段では差別化しづらくなりました。

ではどこで他者(社)と差別化するのかというと、『関係値』しかないわけです。

PRとはPublic Relationsの略なので、つまりステークホルダーとの関係値の構築=PRと話がつながっていくわけですね。


それで、このPRの存在意義を踏まえたうえで、クラシコム社のどういったPRをしていきたいのかというスタンスが如実に現れていた、面白いエピソードが話されました。

というのは、クラシコム社、去年から本格的にドラマを作っているんですね。

(先日は映画化も発表されていました)


去年、クラシコム社がドラマを作ったとき、『これからはドラマコマースの時代だ!』と考察するメディアやビジネスパーソンがたくさんいました。

青木さんはインタビューなどでその点について『そこまでは考えていない』という旨のコメントが多かった気がするのですが、正直ぼくは『本当はドラマコマースの意図があったけど、はぐらかしている側面もあるのかなあ』なんていうふうに思っていました。

でも、そんなことなかったです。

青木さん、というかクラシコム社は、本当にドラマコマースをしようとはしていませんでした。

それの根拠となるトーク場面が、こちらです。

青木:『青葉家のテーブル』 で西田尚美さんが着ている服は、全部僕らのオリジナル商品なんです。食器や雑貨もそう。すべてシーズンが終わって、売り切れているものをあえて使っているんです。

ドラマを見て買いたいと思ってもらいたいわけではなく、買った後の楽しみ方や買って良かったという納得感をお客様に味わってもらいたいんです。

今は消費社会だから洋服や雑貨を啓蒙する必要がない。そうではなく、「私が買ったトップス、西田さんが着ている!」というような強い実感、喜びを得る機会として、ドラマというコンテンツを作りましたね。

そうです、クラシコムがドラマ中で使っている商品はすべて『シーズンが終わって売り切れているもの』でした。しかも『あえて』!!!


もしクラシコムがドラマを通して商品を買ってもらいたいと思っていたら、発売中、特に売出し中の商品を登場させるはずです。

しかし実際に登場しているのは、シーズンが終わったもの。

それはなぜか。


クラシコム社は、ドラマを通して買った後の『楽しみ方』や買って良かったという『納得感』を提供したいと思っていたからです。

ここには、どんどん新しいものを作ってどんどん新しいものを消費する、一昔前の大量消費・大量社会ではなく、いまの時代に合わせた、そしてクラシコムが提案していきたい(であろう)、『ひとつの買った思い入れある商品を、長く大切に愛用し続けてほしい』というスタンスが、行動となって現れています。

単なるビジョンやミッションといった言葉、だけではなく、実際の企業活動を通じてその会社が目指す世の中、築きたい社会との形を提案していく。


これをPRと呼ばずして、なんという。

後編に続きます。

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