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医者には頭が上がらないけれど

医者。
患者を診察し、治療することを職業とする人を指す。それは医師法により定められている、医者だけに許されている行為だ。
誰もが必要とする社会になくてはならない仕事で、高収入が約束された極めてステータスの高い職業で、日本の頭脳が集結する最難関の専門職だと言えよう。
軒並み医学部は他の学部よりも偏差値が高く、さらに6年かけて学ぶ必要があるため、人並み以上の猛勉強をしなければ医者になることはできない。

古今東西、医者は常に重要なポストであった。世界史を彩る時の皇帝も、勇猛で名を馳せた将軍も、中世の貴婦人も悪虐の暴君も、病に臥せた病床の日々の傍らには医者の姿があった。
人の命を救う仕事。赤ん坊から老人までお世話になり、どれほどの財を成そうと権勢を誇ろうとも平等に訪れる死の影がその身に忍び寄るのを恐れる人が、まだ生きたいと願う全ての人が、藁にもすがる思いで最後に頼る存在、それが医者だ。
だからこそ古くから医者は尊敬の対象にされ、先生と崇められ、人類史に偉大な貢献をしてきた職業だ。
僕もあなたも、医者がいなければきっと今ごろ生きてはいないだろう。医者がこの世にいなければ死産になっていたかもしれないし、産声を上げられずに窒息死していたかもしれない。流行り病で命を落としているかもしれないし、怪我が治らず感染症に倒れているかもしれない。医者によって、幾度も消えかける脆く儚い命の灯火を繋ぎ止めてもらい、今日の生を謳歌することができているのだから、お医者様には頭が上がらない。
現代人の長寿はひとえに医者のおかげで、人類の繁栄に最も貢献した職業だと言っていいかもしれない。
だから現代日本においても、やはり医者こそが最も勉強のできる人たちが就くべき重要な仕事になるのだろうか?

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1990年代初頭に起きたバブル崩壊から現在に至る、経済の低迷や景気の横ばいが続く時代を『失われた30年』と呼ぶ。
鶏が先か卵が先かはわからないが、日本経済の低迷と反比例するように、景気に影響されず常に社会で必要とされる医者の志望者はバブル崩壊後もどんどんと増加して、医学部人気は高まり医学部の高偏差値化に拍車をかけた。
私立大学の医学部は年々志願者が増え続け、高齢化の余波を受けて需要が高まり医者の人数も増え続け、合わせて医学部の定員数も増えていった。

経済の専門家の間で上がった声の一つとして、医学部人気こそが日本の失われた30年を生んだのではないかとされている。
東大理三を筆頭に、理系学部の最高偏差値はほとんどの大学で医学部が占めている。つまり医者は、日本で一番勉強ができる人々の目指す職業になっている。
職業に貴賎はないし職業選択の自由は人権でもあるから、人の選んだ仕事に対して言うことはない。医者志望の人に対しても、もちろん言うことは何もない。それどころか、医者がいなければきっと今ごろ生きてはいないのだから、医者にはもちろん感謝しかない。医者には頭が上がらないのは、きっと誰もが思うところだろう。
ただ失われた30年のことを考えると、たしかに日本で一番勉強できる人の多くが職業に医者を選ぶ傾向のある現状は、もしかしたら是正する余地があるのかもしれないと、学生時代ろくに勉強してこなかった分際の僕が今日は自分を棚に上げて想像してみようと思う。

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現在、病院の利用者は7割以上が高齢者となっている。メディアで発言する政治家や文化人はとても言えないだろうが、もし年寄りの延命が医者の主な仕事だとしたら、日本の頭脳を集結させる最重要職であるべきなのだろうか?
もちろんメディアに出る人間がこんなことを言えば「お前は老人に死ねと言いたいのか!」とお叱りを喰らうのは目に見えているし、年々増え続ける高齢者を敵に回せば仕事を失う可能性大だから彼らは口が裂けても言えないだろう。
しかし無名人の僕なら言えよう。病院に行くたびに年寄りの集会所的雰囲気に嫌気がさすのは事実だ。老人ばかりの待合室で待つ時間はだいたい地獄。それだけ必要とされてるのだから高給が約束されているのもわかるけど、果たして本当に一番頭のいい人たちが選ぶべき仕事なのかな? と疑問に思う気持ちが生まれたこともあるのはまた事実だ。

暴言を吐き散らかしていることは自覚するが、毎日毎日年寄りが患者でやってきて、既存の知識で診察して治療してって、飽きないのかな? そうじゃない業務ももちろんあるけど、知能や思考をフルに発揮して日々取り組む職業は医者より研究者の方だと思うなぁ。医療現場よりも、研究室でウイルスの特効薬を開発したり癌の研究を進めたりする方が、高知能者にとって相応しい気はする。
あるいはIT分野の技術者になるとか、宇宙開発を進めるとか、数学の未解決問題を解くべく計算するとか、新種の昆虫を発見するとか、深海生物の探索に乗り出すとか、世界中で地質調査をするとか、マンモスを復活させる計画を立てるとか、そっちに日本の予算を回して多くの頭脳を集結させて欲しい。

全国に医師免許を持つ人は約34万人いるという。今後ますます高齢者が増えることを考えると医者の人数を減らすべきとは思わないが、既に日本は世界有数の長寿国なんだし、医者はあくまで既存の知識でやりくりする現場仕事なんだから、最難関の専門職である必要はないんじゃないかな?
また、過熱する日本のルッキズム至上主義がますます美容外科医の需要を高め、金銭的な魅力溢れる仕事にしていくだろう。美容外科は儲かるんだろうけど、個人的には二重まぶたにしたり鼻を高くしたりする整形を患者に施している美容外科医よりも意味わからん数式を黒板に書き殴って訳の分からない計算をしてる数学者の方が100倍好感を持つな。
いや、僕に好かれるよりちゃんとお金を払う整形女子の需要に応える方が遥かに得なんだろうけども。

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もちろん医者の仕事はそれだけじゃなくて産婦人科や小児科もあるし、病院のお世話になったことがない人は今の日本にいないから誰にとっても必要不可欠な素晴らしい仕事だとは思う。
ただまあ言いたいのは国家資格が必要な仕事なんてどれも日本に必要不可欠な仕事だろうし、保育士や介護士の給料や人員の問題とか医者同様に大切な他の仕事も是正すべき点がいくらでもある中で、不景気と少子高齢化の影響で医者の価値ばかりが跳ね上がり続けてる印象があるんだよね。民主主義と資本主義の相乗で、子どもが蔑ろにされて老人ばかり丁重に扱われる時代になっていくのはとても嫌だ。もちろん医者自体は素晴らしい仕事で、子どもにとっても誰にとっても必要なんだけどさ。
まあ僕は未来思考だから、エリート職であっても現状維持を図るような医者や法曹より、新技術で未来を切り拓いていく研究者や開発者の方が魅力的に映るっていう個人的な好みもあるかもしれない。

まあ今日の文章は全部素人の戯れ言として、話半分に読んでもらえれば……

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