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再生

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あるアパートの一室で起きた殺人事件。殺された被害者の娘の国枝良子と事件の真犯人の藤井草介は同じ高校のクラスメイトだった。 二人は秘密を抱えながら交わっていくことになり…… プロボ…
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2020年1月の記事一覧

再生 15話

再生 15話

受験が終わった。
おそらく受かるだろうと草介は思った。
一応ここまで勉強してきたことや成り行き上、進学をしようと思ったが大学に通いたい気持ちは全くなかった。

良子の進路だけが気になった。
もし良子が遠くに行ってしまったら、自分も後を追って引っ越さなければならないと考えた。あの不幸体質なブスを放っておくわけにはいかないと思った。
そうしたら、大学はどうしよう。
草介は考えた。母親の顔が浮かんだ。

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再生 14話

再生 14話

草介は母親と二人で夕飯を食べていた。
話は進路のことになった。
「草介、体調はもう大丈夫? 大学は○○大学だよね。勉強はちゃんとできてるの?」
「うん、まあ。たまに体調悪い日はあるけど、学校も行けてるし勉強はちゃんとしてるから」
「再来月には試験だからね。もうあっという間よ。体調だけは気をつけて気を抜かないで勉強しなさいよ」
「まあ、この前の模試は調子悪い時でBだったけど、その前はA判定貰ったし次

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再生 13話

再生 13話

公判が終わった。

良子は叔母や叔父と共に法廷で小山内勉と顔を合わせた。眼光の鋭さもすっかり消え失せている小山内は良子らには目もくれず終始俯いていた。
懲役二十年。
被告が殺意を否認していたことが認められ、薬が切れたことによる禁断症状から幻覚や精神薄弱状態にあったことも認められての量刑だった。

良子は法廷での、遺族の席から漏れ出る憎悪の空気があまりに希薄なことに少し苛立ちを覚えた。
良子自身も生

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