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2つの意味を持つサウンドスケープデザイン その2

神山聴景事務所の神山です。

「その1」を書いてからかなり月日が経ってしまいました。
実は今回のパートが僕がやっているデザインの話になるのです。

「その1」は従来のまたは主流となっているサウンドスケープデザインの話。

「その2」では新しいサウンドスケープ(これから聴景デザインと呼びます)の話をします!

おさらい

前回のお話からだいぶ時間が経っているので、少し振り返ります。

建築由来のサウンドスケープというテーマで、国内外の活動を紹介しました。
例えば、交通騒音を抑えるために歩道と道路の間に等間隔に噴水を設けてることで音かき消すなどが従来のサウンドスケープデザインにあたります。

この方法は現在ではオフィスのサウンドマスキングとして応用されていますね。
サウンドマスキングが何かというのはこちらをご覧ください。


では本題に入ります。

本題:音楽由来のサウンドスケープデザイン


音楽由来と名づけたのは僕です。
これはどういうことかというと、今までは世に存在する騒音を抑えるため、特別な空間体験を提供するために物理的にその効果を発揮させるもの(噴水や教会、軒先の樹木など)を人は造ってきましたが、これは主に屋内で聞いている「音楽」をその場に調和するようにデザインしたりすることを指しています。

ただ音響調整をするのではありません。

その空間の

・求められる環境

・サーゲット層

・利用用途

・サービス

などを考慮してそこに相応しい音環境をデザインしなければなりません。

(音響機器やシステムの設計からコンテンツ作りまでを含めたトータルプロデュースを音環境デザイン即ち聴景デザインと呼んでいます。)

音は24時間絶え間なくしかも寝てる時でも聞いています。
物音で起きるのはつまり耳が音を常に聞いているからなんです。。

空間で聞こえる音、音楽や物音なんでもいいですがなぜそれがぞんざいに扱われているのだろうか。

インテリアが整っていても音環境が悪いと体験はすごく浅いものになってしまうというのが僕の経験から言えることです。

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なぜ音がそんなに重要?

音なんて普段から耳にしているし、気にしたこともないと思っている人が多いはずです。

しかし無意識に良い環境、悪い環境を判断してるのをお分かりでしょうか?

まずは騒音という観点から考えてみましょう。

例1
ちょっと前置きが長くなりますが。。。大事な話なので読んでください。

飲食店に居るとき、人が多くてうるさいなと感じたりBGMがやたら大きくて会話しづらい、BGMが耳に付くなんてことありませんか?
感じ方は千差万別。これ以外にも意見があるかもしれませんが、この環境で長く居ることはできますか?

ファストフード店のようにすぐに商品を提供することを目的としている店舗であれば、その「気軽さ」や「カフェ」的な要素からそこに集まる若者が多いかもしれません。

この場合は「商品の迅速な提供」が最優先されますので、言ってしまえば早くご飯を食べることができればいいのでその目的の人は滞在時間が短いでしょう。一方そこをカフェとして利用している人もいます。

そうすると少なくとも1時間〜は滞在するはずです。
するとその空間ではさまざまな目的で滞在している人でごった返すでしょう。

勉強する人、友達と喋る人、食事をしにきた人、読書する人、など用途はさまざまです。

こういう環境で使われる「音コンテンツ」というのはわずかに雰囲気を演出するために使われていることが多いと思います。

そこに意図的な操作はありません。

時間帯によって演出を変えて回転率を上げたり、閉店を伝えたりすることはありますが、その程度です。

これを一番カジュアルな空間とすると金額やターゲット層が変わってくれば空間だけでなく環境も変わります。

高級店になればなるほど、静寂で落ち着いた雰囲気を演出する傾向にあります。

ただ中にはそういった演出がうまく出来ていないお店も見受けられます。

つまり良い環境は

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このように繋がっていることを知らずにどこかが欠けてしまい、悪い環境になっているのです。

それが音である、というケースが非常に多いです。

音が悪いとは

・高級志向のお店なのにスピーカーが古かったり、演出がカジュアル店と似ている

・声が反響して会話しづらい

・BGMがうるさくて会話の妨げになっている

・音質・演出が悪くて安っぽい雰囲気になってしまっている

など空間によって原因は様々なので百店舗あれば百通りの原因があるかもしれませんが、こういう環境をそのように指します。

多分一度は経験したことがあるのではないでしょうか?

こうした「悪い環境」というのは味わい深い体験を提供することが難しくなり人々の心に響かない、そんな空間を作ってしまうのです。

「音環境」ではなく「環境」と呼んでいることにも実は意味がありますがそれは次回お話します。

もっと歴史を遡ると。。。?


実はバッハも似たようなことをしていることが下記の論文でわかったのです。

https://www.iieej.org/public/committees/aim/ann_confs/mcc2016/T5-3.pdf

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もっと古い時代から音環境を考えた空間作りをしていたようですがバッハの具体的な取組みが記されています。

簡単に言うと、彼が仕えていた教会のための音楽をその空間の響きやそこを訪れる人たちのことを考えながら作っていたということ。

聴景デザインの始まりともいうべき取組かと思います。

そしてその取組みが新しい技法やコード進行などを生み出したという記述もあります。

当たり前のようにされていたことがこの一世紀近くの間に「当たり前」ではなくなってしまい昨今皆さんが耳にしているBGMサービスに取って代わっているのです。

人は耳の快適性を求めているのにも関わらずそこがぞんざいに扱われてしまっている現状を皆さんにもっと認識してもらえると世の中が変わってくる、そんな気がしています。

料理が美味しい、サービスが良い、これらだけで満足できる空間はあると思いますが、本当に心に響く体験は「音にあり」なのです。

たかが音されど音、だけど。。。


これまでの文章を読んでどう感じましたか?

たかが音楽じゃん、と思われるかもしれません。

音楽や音に興味がない人たちもいます。

音楽が好きな人、音の仕事に携わっている人も普段何気なく耳にしている音に気づくことは少ないかと思います。

しかしその「何気なく」が快適な環境を生み出しているのです。

新しい時代のための新しい音の形を、これからもっと提供していきたいと思っていますので皆さんの応援よろしくお願いいたします!

株式会社神山聴景事務所






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