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『論語と算盤』考察23 逆境のときにするべきこと③

 おばんです(朝読んでいる方は、おはようござりす)。
 次の一万円札、渋沢栄一の著書『論語と算盤』で、僕が気になったところを考察していきます。現代語訳は参考文献を参照しつつ、独自の解釈で訳しています。

  今日は、「立志と学問」の章の最後に書かれてある孟子の格言からの続き。逆境ネタ3回目です。

『孟子』より引用(おさらい)

 窮すれば則ち独り其の身を善くし、達すれば則ち兼ねて天下を善くす。

 訳 逆境のときは自分のありかたをしっかりさせ、達成したときは自分だけでなく、世の人たちも一緒に良くしていく。
(『孟子』尽心章句上 九 より)

逆境処世法

 渋沢栄一の訓言集である『青淵百話』には、「逆境処世法」という章があります。この中から、渋沢栄一流逆境の対処の仕方を学んでいきます。

順境・逆境は人の心がけしだい

 この章では、順境・逆境は、人の心がけや、考え方によって生じたり、無くなったりする、と言っています。
 「俺逆境だわー」という人対して、「逆境を避けるための努力や勉強をしたのか?」と厳しいツッコミをしています。

 してみれば、特別に順境とか逆境とかというものが、この世の中に存在しておるのではなく、むしろ人の賢不肖才不能によって、ことさらに順逆の二境が造り出されると見て差し支えない
 (中略)、順境といい逆境というも、すべて人々の心掛けによって造りなされるものであるとして見れば、(中略)、これを称して順境である、逆境であるとは言えぬはずである。
(『青淵百話』 逆境処世法 順逆は人自らつくる境遇なり より)
 自ら進んで逆境という結果を造る人があるから、それに対して順境なぞという言葉も起こってくるのである。
 (中略)
 とにかく世人の多くは、わが知能や勤勉を外にして逆境が来たかのごとくいうの弊があるが、そは愚もまた甚だしいもので、余は相当なる知能に加うるに勉強をもってすれば、世人のいわゆる逆境なぞは、決して来たらぬものであると信ずるのである。
(『青淵百話』 逆境処世法 順逆両境は人為的なり より)

本当の逆境とは

 とは言っても、努力や勤勉だけでは避けられない逆境も存在します。ここでいう「本当の逆境」とは、自分の力を尽くしたうえで、どうしようもないことを指します。自分ではコントロールできない範囲です。

 実はその人自らが造り成した境遇と、今余が論ずるごとき人物行動に欠点なくとも、社会の風潮、周囲の境遇に依って自然と逆境に立たねばならなくさせられたのとに比較すれば、その差はどうであろうか。前者のごときはそんな境遇に陥らぬようにしようとすれば、その人の心掛け一つでどうにでもなる性質のものだが、後者はそれと同一に視る訳にはゆかない。
 (中略)社会の風潮、周囲の事情がこれを逆の方面に運んでゆくからには、ある意味において人間力の及ばぬ点がある。すなわち、天命に依ってしかる所以であると、覚悟しなければならぬ。
 かくのごとき場合に処した人にして、初めて逆境に処するの心得が必要である。
(『青淵百話』 逆境処世法 真意義の逆境 より)

逆境に対する心得

 渋沢栄一自身、パリに出張中に明治維新が起こり、雇い主(徳川幕府)が崩壊したという、自分の努力だけではどうしようもない逆境を経験しています。その渋沢栄一が見出した逆境への対処法とは?

 それは、無理に「自分の力でどうにかしよう」などと考えず、来るべき時期が来るまで、努力を続けることだと言っています。
 また引用が長くなりますが、とてもしっくりくる考え方だったので共有しておきます。

 もし何人でも自然的逆境に立った場合には、第一にその場合を自己の本分であると覚悟するが、唯一の策であろうと思う。
 足るを知りて分を守り、これはいかに焦慮すればとて天命であるから仕方がないとあきらめるならば、いかに処し難き逆境におっても、心は平らかなることを得るに相違ない
 しかるに、もしこの場合をすべて人為的に解釈し、人間の力でどうにかなるものであると考えるならば、徒に苦労の種を増すばかりか、労して功のない結果となり、遂には逆境に疲れさせられて、後日の策を講ずることすらもできなくなってしまうであろう
 ゆえに自然的の逆境に処するにあたっては、まず天命に安んじ、おもむろに来るべき運命を待ちつつ、撓(たわ)まず屈せず勉強するがよい
(『青淵百話』 逆境処世法 逆境に処する心得 より)

 逆境のときは、心の余裕がなくなって、何かに打ち込むことがなかなかできなくなっていまいます。
 そんなときは、なんとなく気分転換できるものを見つけつつ、本来打ち込むべきものに5分でも10分でも時間を割く。そしてその時間を徐々に増やして本領発揮できるようにしていく、ことが大切かなと思っています(体験談)。

参考文献

↓Audible版『論語と算盤』(Audible初回登録なら無料)

『論語と算盤』考察第1回目は↓

自己紹介記事は↓

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