左袒せず―成島柳北『柳橋新誌』二編の語釈メモと寸感Ⅰ
一知半解と言うもおこがましいと自嘲しながら、成島柳北『柳橋新誌』二編(岩波文庫)を手にして、初編につづけて語釈をメモし、ときどきの寸感を書き留めた。柳北が二編を著したのは、初編から「既に十有二年」の後、35歳のときである。「世移り物換はり柳橋の遊趣一変して新誌も亦既に腐す矣」というほど、幕府は滅びて明治へ「王政一新して柳橋亦一新」したのである。この続編は永井荷風の「柳北仙史の柳橋新誌につきて」に記すごとく、「柳北が時勢に対する失意と中年の悲哀とを述べた感慨の文字」というには少