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うちの親父74歳がエアーポッズを買っていた。ちなみに僕(息子42歳)は持っていない。


#ほろ酔い文学
#もうあかんわ
#眠れない夜に

エアーポッズそれはアップルが開発した無線のイヤホン。
今年後期高齢者の親父になぜ必要か。年金暮らしの人にとってはかなり高価なものではないのか(うちの親父に対してです)

お正月、久しぶりの実家でエアーポッズを見つけて思わず尋ねた。
「いいね、これ。でもなんで買ったの?」

答えはあまりにも明瞭。純粋。拍子抜け。

「便利だから。」

いいだろう、便利だろう、それで何に使う?我が親父よ。その辺の若者のように爆音でApple Musicか?

「耳がかなり遠くなったから電話の時これを使うと本当によく聞こえる」

ふむふむなるほど。
ジョブズも喜ぶだろう。

ふと思う。
やっぱりイノベーションとかってこういうことなのだろう。
澤田智洋さんの著書「マイノリティデザイン」でも書いてあった。
マイノリティのためこそが王道となると(そんなことは書いてないけどもちゃんと読みました)

【マイノリティデザイン】興味ある方は是非。いい本です。ライツ社、いい出版社です。宣伝じゃありません善意です。


そういえば我が親父は昔から最新のものが好きだった。
電気会社と共にサラリーマン人生を終えた昭和を代表する人だったけど。
この世代、考え方が驚くほど革新的なところもある。
小学生の頃、家に帰ったら突然、テレビ電話が置いてあった。未来すぎるシロモノ。

親父の会社の商品みたいで安くで購入したみたいだった。
ただ当時で20万円くらいしてた思う。うちの家としては決して安くはない。小型の初代iMacみたいな風貌。うちではそれ専用の低い神棚まで作って設置していた。
昔の未来を感じさせるテレビ電話はもう一台を相手の家に置かないと機能しないという当たり前だが不便なものだった。
だからもう20万円で2台目を買って、もう一つは仲良しの親戚の叔母の家に置いた。まだまだ黒電話が主流の時代、もの珍しいと親戚、近所でも話題になったが、今振り返ると
テレビ電話というより白黒写真(ちょっと緑色?)のコマ送り、現代のようなスムーズさは皆無。要件を伝えるのは電話だけの方が実務的、いちいちコンセントにつなげてスイッチオンで起動させたりと手間がかかるため普段使いにはならずすぐに物置行きになってしまった。おそらく母が言い出せずにそっとしまったと思う。

ただ親父は果敢に挑戦する。当時ではあり得なかった巨大な電動歯ブラシ。ジョイナーがCMしていたこれも巨大なビデオカメラ(懐かしい8ミリこれで小6の時、同級生と映画を作った)変な形の速攻コーヒーメーカー。いち早くパソコンも買っていた、90年台初めパソコンはまだ30万円くらいしていたと思う。

なぜ新しいものが好きか。意外にも親父が新入社員時代に経験した1970年のあの大阪万博がルーツだった。(意外でもないかわからない)
親父の会社は頑張って小さなパビリオンを出していたこともあり人手がいるからと若かりし親父も人員整理やメディアに説明するスタッフとして駆り出されたらしい。

そういえばうちの実家のおでかけといえば万博公園が多かった気がする。

万博と家族。

子供の頃の写真はほとんどが万博公園。物心ついた時から太陽の塔と共に育った。
子供の頃は怖かった。デカくて顔がちょっと変で夜はオバケライトみたいに照らされて
威圧感があった。
でもその怖さが当たり前のようの存在していた。

親戚の京都の家からの帰り
家族を乗せた車が名神高速から吹田で降りると
お帰りと言わんばかりに右手に見える。
特別感があった。

僕が社会人となって東京の制作会社に就職した時に太陽の塔が初めて恋しくなったことを思い出す。太陽の塔の偉大さは離れると急に襲ってくる。
岡本太郎さんにインタビューしてみたかったな。政府に物言えるケンカ上等の芸術家やアーティストって少なくなった気がする。ケンカしてもしょうがないんですけど。

僕が子供の頃は結構いたと思う。炎上とかややこしいことがなかったからかなのか。言わなくても良い時代、無関係が美徳の時代になったからなのか。みんな素晴らしい人格者が多い気がする。なぜかを考えるとどうでもよくなってくるんでこの辺りでやめときます。

親父のターニングポイントがあるとするならば確実にその万博だ。

”科学の進歩はワクワクする”

※テーマは正確には「人類の進歩と調和」だ。

流行病のように政治家や大学教授が連呼するSDGs全盛の今だとハイハイと片付けられそうなそんなあの時代を一生懸命に生きたからこそ親父はエアーポッズに行き着くかもしれないのだと。

いいぞ、新しいものワクワクするものできる範囲でどんどん買ってくれ。
そしてその感想を息子の僕に話しておくれ。

親父はエアーポッズの凄さを自慢げに語る。
「周りの音を消せるのはすごい!」
とか
「こんなに小さいのにコンピューターチップが入って制御している」

興奮気味で後期高齢者直前の少年だ。

お正月に久しぶり会ってビールを飲みながらそん会話をした。

そして最後にこんな話をした。

「だいぶ前に死んだお前の母さんと会話できるエアーポッズとかできたらええな」

「ええなそれ」



※岸田奈美さん、すみませんもうあかんわ要素あんまりないですね笑
また挑戦しますもうあかんわ

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