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あの恋!可憐なGRENADE

「貴方が私を手に入れたのね」

眠りから覚めたのか
色とりどりに着飾った貴女は僕に語りかけた

「綺麗だね 奮発した分 頑張ってもらうよ」
僕は助手席をチラ見してそう言った

貴女は微笑みを浮かべ
助手席の足下 赤いエナメルのヒールから
伸びた素足をセクシーに組み換える

「ねぇ どんな人なの これから逢う相手」
貴女は

マルボロ・メンソールの緑と白の箱を
取り出して それが

空箱である事を知ると 絶望の表情を見せた

「凄く 大事な 大切な 人なんだ」
僕はハンドルを握る手に力を込めて思いを語る

「私で大丈夫かしら?」貴女は風になびくのを
気にしてパワーウインドーを上げた

「貴女がいいんだ 貴女でないとダメなんだ」
僕は貴女に懇願した

「なら、その人に逢う前に私を抱いてみてよ
貴女は悪戯ぽく笑いながら前を向いた

僕は聞こえない振りをして車を走らせた

イ・ク・ジ・ナ・シ」そう言い終わると
貴女は笑い出した 悪趣味なJOKEだ

「あぁ喉 渇いた
ねぇ もし その人が私を嫌ったら
このピンを抜いてよ 大爆発してやるわ💥」

まるで手榴弾だ 怖い事を平気で言う 悪女


目的の場所で車から降りた二人は
僕がエスコートして白いベンチに座った

貴女は僕の背中に隠れるようにもたれて
頬を当て温もりを感じ取ろうとしていた

僕は そんな貴女が愛おしく思えて
時折り グッと後ろから力を込めて抱き寄せてしまう

「ヤメテ!離れられなくなっちゃう」
貴女の香水か?甘い香りが鼻をくすぐる


『ごめんね先輩 遅れちゃったぁ』
当時 彼女(妻)が 駆けて来たのか?
息を弾ませ約束の時間より15分遅れて現れた

僕と貴女はベンチから立ち上がる

「私の出番ね」
貴女は僕を見つめる 僕は思わず貴女を
彼女の目の前で抱きしめた

彼女が 驚きの表情で僕と貴女を交互に見ている


お誕生日おめでとう
僕は貴女を彼女に差し出した

『わ!綺麗な花束💐先輩 ありがとう』
彼女の腕の中で貴女は誇らし気に揺れていた

嬉しそうに花束を抱き香りを確かめる彼女
『先輩 この花束 高かったでしょう?』
「そりゃ それなりに・・・」

『先輩!あたし 花よりダ・ン・ゴ お腹 空いちゃったなぁ』

だよねー もう お昼も過ぎたし

「じゃ カズネエの店に行こうか❓」 

車に向かい歩き出す ふたり

彼女は貴女を改めて抱き直した
一瞬 貴女と僕の視線が合う

貴女は僕を睨み 叫んだ!

「喉が渇いた!早く水入りの花瓶に入れなさいよ」


ここまで読んでいただきありがとうございました。



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