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「なんで自分ばっかり…?」という思考に陥らないために意識したい「そもそも」の話

「なんで自分ばっかりこんなに働かなきゃいけないんだ…?」
「他の人ももっと自分からやってくれればいいのに…!」

仕事はもちろん、夫婦や家族間の話、子育て、友人、仲間とのプロジェクトなど、皆さんそれぞれ環境は違うと思いますが、誰でも一度は思ったことがあるであろう「なんで自分ばっかり…?」という不満。

この気持ちがむくむく膨らんでくるとどうしてもイライラしてしまうし、人間関係もギクシャクしがちです。

というわけで、今日はこの「なんで自分ばっかり…?」という思考にネガティブな影響を受けないよう自分自身が気を付けていること、考えていることを整理してみたいと思います。


「User Experience Design=体験のデザイン」という専門領域について

いきなり冒頭の文章と関係無さそうな話を少しだけ。

私は、友人2人と一緒に「南十字という本屋」を運営しています。それとは別に個人でWebサイトを作ったりする仕事をしていて、そちらで生きるために必要なお金を得ているのですが、Webの仕事における私の専門領域の一つに「User Experience Design=体験のデザイン」というものがあります。

UXデザインとは何か?みたいなことを詳しく書き出すといくら時間があっても足りなくなってしまうのでここでは触れませんが、企業が展開するデジタル周りの事業、サービス、プロモーション活動などに関連して「どうやったらユーザーに魅力的な体験を提供できるか?」みたいなことを考え、クライアントに提案&実装するような仕事をしていて、職業柄「体験」について掘り下げて考える機会が多い人間です。

ということを「なんでこんなnoteを書いているのか?」という、自己紹介の一つとしてまず共有させて頂きます。


「同じ体験は1つとして存在しない」という、そもそもの話

例えば、目の前に美味しそうなチョコレートケーキが1つあったとします。

とても評判が良く、人気のあるケーキです。でも、それを食べてどう感じるかは食べた人によって異なる、完全にユニークな体験です。(Unique=同じものが2つ無いの意味)

「めちゃくちゃ美味しい!」と感動する人もいれば、ちょうど今お腹の調子があまり良くなくて「ちょっと重いな…」と思う人もいる。甘いのが苦手な人もいれば、甘いものは基本好きだけど「チョコだけはちょっと…」という人もいるかもしれません。

「美味しいと評判のチョコレートケーキを食べる」という行為=体験をどう感じるか?は体験者の趣味嗜好、体調、気分、体験する環境(例えば、美味しいケーキも大嫌いな人と食べたらあまり美味しくないかもしれません)、体験に紐づく経験・記憶(良い思い出、悪い思い出との結びつき)などによって変わってくるため、全てがユニークな体験になります。

これと同じようなことが、会社や家族、仲間のあいだで行われる共同作業の中でも発生します。(以下、2人以上の共同作業が発生する行いを「プロジェクト」と呼びます)

Aというタスクがあり、それをプロジェクトメンバーと分担しながら進めていると「なんでこんな簡単なことにそんなに時間がかかるんだろう…?」と思ってしまうことが時々ありますが、私も同じように誰かにとっての「簡単なこと」がすごく苦手だったりします。

個々人で異なる気質や能力としての「適正」があるのはもちろんですが、その時の体調や気分、自分自身を取り巻く環境などによっても「どのくらいの時間でどの程度のレベルのアウトプットが生み出せるか?」は変わってくる。

この「アウトプットの質」は単純作業になればなるほど「誰がやるか?」に依る振れ幅が小さくなっていきますが、どんなに単純化していっても質の差が完全に無くなることはありません。

つまり、「Aというタスクを実行する」という体験も、人によって「楽しいな」「簡単だな」「難しいな」「退屈だな」と異なる感覚を持ちながら実行することになり、全てがユニークな体験になるということです。

「プロジェクト」を連呼するとビジネス感がすごく強くなってしまうのですが、例えば恋人同士で一緒に暮らすこともプロジェクトの一つですし、友人と何か遊びの計画を考えることも一つのプロジェクト。このnoteでは自分以外の他人と共同で何かを考えて実行していくことを総じて「プロジェクト」と呼んでいます。


みんな、それぞれその瞬間に置かれた状況で、使える武器を駆使してベストを尽くしている。と信じることから始める。

プロジェクトを進める中で発生してしまう「なんで自分ばっかり…」という瞬間。これはつまり「自分ばっかりやっている=他の人は楽している」という思考ですが、この状態だと一緒にプロジェクトを進めていくことが辛くなってしまい、夫婦だったら「離婚」という選択に繋がったり、会社だったら「退職」といった決断に繋がってしまったりします。

言うまでもなく、前向きな離婚や退職もあるのでこれらを一概にネガティブな事だとは思っていません。

ですが、この「自分ばっかり…思考」はプロジェクトを一緒に進めている他者の置かれた状況、環境に対する想像力が欠けていたり、自分自身も誰かの視点で見た時には同じように「あいつは忙しそうにしているけど全然大事なことはやっていない…!」と思われている可能性があることに気づきずらくなってしまうところに問題があります。

私は最近38歳になったのですが、これくらいの年になると昔は同じランドセルを背負って一緒に登校し、ドッジボールやドロケイをして、家では同じようなテレビを見たりゲームをして育ってきた友人たちが、それぞれはっきりと異なる人生を歩んでいることが分かります。

結婚しているしていない、子供の有無(子供の性格、人数、年齢などによって子育てに必要なエネルギーやお金も全然違う)、仕事で抱えるストレス、責任、親や家族に関する問題、自分自身の健康&メンタル的な部分。全てが完全にユニークで異なっていることに対して少しでも想像力を働かせることができれば、「自分ばっかり…思考」がいかに狭い視点で自分"だけ"を見て考えてしまっているのかが分かる筈です。

じゃあどうやったらこの「自分ばっかり…思考」から離れることができるのか?と言えば、これはもう

みんな、それぞれその瞬間に置かれた状況において、使える武器を駆使してベストを尽くしている。と信じることから始める。

しかないと思っています。

体の健康や精神的な状態、家族など取り巻く環境も含めてプロジェクトメンバーが「どんな状態なのか?」を完全に把握することは不可能ですし、誰もそんなことは望んでいません。なので、できることは "今の" ベストを尽くしてくれていると信じること。そこから始めるしかないんだと思います。


プロジェクトを円滑に進め、良いチームを作るために必要な2つの条件

1, プロジェクトに関与する人たちがそれぞれ「ベストを尽くそう」と思っていること。そして、あわよくば「自己ベストを更新したい…!」と思っていること。

「ベストを尽くす」の「ベスト」も人によって異なります。

例えば、25歳、夢と希望に満ちて「とにかく成長したい!仕事で一人前になりたい!」と思い仕事に燃えている青年のベストと、38歳、小さな子供がいて、家族や子育てとのバランスを大切にしながら働きたい人のベストは全然違います。そしてどちらに良いも悪いもありません。

だからこそ大事なのはプロジェクトメンバーみんなが「それぞれが置かれた状況、環境において今この瞬間のベストを尽くしている」と信じること。そしてその意識を全体で共有できているという信頼関係です。

そして理想的には、このベストを「0.1秒でも、0.1mmでもいいから更新したい…!」とみんなが思えていると最高です。「ここが自分のベストだ」というラインを低く引いてしまう人が多いとプロジェクト全体を動かす大きな推進力は生まれてこないので、それぞれが自己ベストを更新しようという意識があると素晴らしいですね。(無理し過ぎないことも"ベスト"に含まれています)

2, 「ベストを尽くす」ためには、ゴールの共有が必要。

「ベストを尽くす」と言っても、何に向かって頑張れば良いのか分からなければ、各々がバラバラの方向に頑張ってしまい全体として良い結果にはつながりません。

これは会社や組織で言うPurpose、Mission、Visionなどの共有、共感の重要性に関する話でもありますが、家族といった小さな単位でも同じことです。

例えば、家族というプロジェクトの中で、奥さんは「子供も含めて家族が仲良く暮らしていけること」が一番重要なこと(=Vision)だと捉えているのに対し、旦那さんは「子供に良い教育を受けさせたい」を最重要と捉えていて、仕事を増やして収入も増えているんだけど子供と一緒に過ごせる時間は減ってしまっている、みたいなケースがあったとします。

これは奥さんも旦那さんも何も間違ったこと、悪いことをしている訳ではありません。ただ、微妙にゴールの共有がズレてしまっている状態で、この状態だと奥さん側には「私ばっかり子育てして、あの人は仕事ばっかり…。もっと家族の時間を大切にしたいのに。」という不満が溜まっていきますし、旦那さん側では「俺が頑張って働いてるから子供も私立の学校に行けてるのに、なぜかあまり感謝されていない感じがするぞ…」と、別の視点での不満が溜まっていきます。

こんな感じでプロジェクトのゴール(=こうしたい、こうなりたい)がきちんと共有できていないと、お互いが違う方向に向かって頑張ってしまうことで、それぞれが「自分ばっかり…」と考えるようになってしまう。という訳です。


本屋を始めて感じていること

記事が長くなってしまったので、いつか詳しく書きたいと思っていることを少しだけ。

南十字という本屋を始めて約5カ月。前にも「本屋は儲からない」という記事を書いた通り、基本的には赤字で本屋をやることによる金銭的な利益はメンバー3人誰にもありません。(徐々に改善していきたいなと思っています…!)

でも、この「儲からないことをやっている→儲からないことを嫌々やるバカはいない→ちゃんと楽しもう!」という思考のサイクルがある気がしていて、この「楽しもう!」を源泉にした自発性みたいなことを、会社員時代の仕事と大きく違うこととして感じています。

私は本屋で店番をしているときもWebの仕事ばっかりしていますが、お客さんも含めて皆さんがどんどんイベントを企画してくれたり、面白い本を選んで入荷してくれているおかげで、いつの間にか「なんか面白そうなことやっているな…!」が生まれていくこの感じはとてもいいなと。

会社組織とかのことを考えると、お金を受け取りながらもどうやってこの「好き、楽しい→自発的な動き」を生み出せるのか?みたいなことはとても気になっているので、また別の機会にnoteの題材にしてみたいと思います。


"今"のベストを尽くすよ!そして、ベストを更新したいと思っているよ!(無理はし過ぎないよ!)の共有が大事。というお話でした。

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