スタートアップの人間として、採用したいエンジニアはどういう人か書いてみようと思う。
はじめに
こんにちは、kenmaroです。
普段は技術記事などをキータで書いていたり、
twitterで個人開発について言及したりしています。
たまに技術以外のことをnoteに書く活動をしています。
この記事の内容
今回は、私がスタートアップにエンジニアとして4年ほど関わり色々な人と仕事をした中で、
どのようなエンジニアがスタートアップで働くのに適しているのか、
採用側として私がどのようなことをみるように至ったか、
について書いていきたいと思います。
初めに
私はスタートアップのIT企業に4年ほど前から関わり始め、正式に入社してから3年ほどエンジニアとして働いています。
もちろんエンジニアとしてプロダクト開発を一番優先として行っているのですが、
ここ一年半ほどは面接を行うこともとても多くなりました。
AIのビジネスもやっている会社なので、AIエンジニアだったり、プロダクト開発をやりたいエンジニアであったり、インターンをやってみたい学生の方など、本当に色々な人と話した期間だったように思います。
エンジニアの候補の方や、エンジニアインターンの候補など、三十人以上の方と有難いことに面談をさせていただきました。
今回は、私がそれらの面談のなかで、どのような方を採用するようにプッシュしてきたか、また、その面談の中で、エンジニアとしてはどのような人がスタートアップにあっているのか、スタートアップの中からはどのような人が魅力的に映るのか、
と言ったことについて書いていきたいと思います。
注意書きなのですが、もちろんここで書くことは私個人の意見であり、所属する会社を代表するものではありません。また、私の意見はあくまで一つの意見であり、色々な人が多様な意見を持つことに対しては、それらの人たちの記事などを参考にし、多様な価値観に触れていただくことを推奨します。
熱中した「ネタ」がいくつかあるか
まず、いきなりですが私が一番個人的に大事にしていること、それが故に、面談する相手にも持っていてほしいと考えていることをお話しします。
それは、自分が本気になって関わったプロダクト、もしくはプロジェクトが存在し、それを何かしらの形で確かめることができるか、
端的に言い換えると、
「エンジニアとしてのネタを何個持っているか」というところでアピールをできる人が強い人だと思っている。
ということです。
どういうことなのか説明します。
私は、エンジニアという職業の最大の魅力は、アイディアを形にし、お客さんに届けることができることだと思っています。
エンジニアといえば、ハードウェアのエンジニアも含まれると思いますが、究極、ハードウェアであろうが、ソフトウェアであろうが、物を作る人たちをエンジニアというわけです。
その中でも、ソフトウェアエンジニアに関しては、特に頭の中にあるアイディアを具現化しやすい職業だと思っています。
アプリを作るにしろ、Webサイトを作るにしろ、早ければ1ヶ月とか、一週間とかでなにかしら動くものを作ることができます。
また、それらにほとんどコストはかからず、かかるとするならばノートパソコンの費用と、自分がかけた時間がコストになります。
そのような特徴があるソフトウェアエンジニアですが、昨今はエンジニア不足と言われ、実際に周りのスタートアップ企業であっても、
エンジニアが足りない会社がとても多いです。
そんな中で、仮にソフトウェアエンジニアとして働いたとして、業務の中で自分が本気になって取り組むことのできるプロダクト開発であったり、プロジェクト業務だったりを行うことができる、というのはとても大事なことだと考えています。
私は主にプロダクト開発について取り組んできましたが、プロダクトの核となる技術を1から学び、
どのようなことができるかのプロダクト構想の時点からずっと考えて手を動かしてきました。
その中で、最初はここまでこのプロダクト開発に本気になれるとは思っていませんでした。
1年間開発をし、全くお客さんがいなかったり、デモすらもまともに作れなかったりした時期もありましたが、
2年を過ぎる頃から少しずつお客さんが現れ、少ないですが収益を出せるようになりました。
そんな中で、一つの実証実験を通してプロダクトを使ってもらい、初めて「使いやすい」
という声をいただいたことは、今でも本当にいい思い出ですし、そのようなことを言ってもらえる機会を少しでも増やすために今でも頑張っているつもりです。
エンジニアとして、自分が面白いと思え、本気を出して開発に取り組むことのできることがある、というのは
素晴らしいことだと思います。
自分が事業を作っているのであれば、その事業についてそう思えるでしょうし、そうでなかったとしても、自分が主体的にプロダクトに向き合い、
少しでもより良いサービスにするためのアイディアを出しながら開発することは、とても素晴らしいことだと思っています。
結果として、いろいろな結果が出たり、人を惹きつけるエピソードになるのだと私は思っています。
私自身のこの3年間の成果として、
プロダクト開発の初期段階から実装まで
アルゴリズムの高速化を論文で1本
プロダクト関連のシステム特許を2本
プロダクト関連のアルゴリズム特許を1本
技術ブログを通して発信(キータで177記事)
をアウトプットとして達成することができました。
これがすごいとかそうでもないということを評価することは一旦置いておいて、
大切なのは、自分が主体的に取り組んだプロダクト開発に対して、自分が納得できているか、それだけ熱中できたか、ということだと思っています。そのような経験をできている人は、面談を行ったエンジニアの方の中でも、あまり多くない気がします。
このように、面談を通しても、エンジニアの方から、なにかしらの本気になって熱中した開発エピソードを聞いてみたいなあと個人的には思います。
それが成功したか、しなかったか、というのは究極的には問題ではなく、失敗したとしてもどういう経緯で失敗したかという本気のエピソードがあれば素晴らしいことだと思っています。
そのようなエピソードをもった候補者の方であれば、私は尊敬しますし、心から推薦させていただいています。
経験を確認できるアウトプットはあるか
面談の話とはずれてしまったように思いますが、このように熱中したプロダクトやプロジェクトに関しては、必ずしも仕事関連でなくてもいいと思っています。
個人開発などを通じたアプリ開発とか、副業関連のプロジェクトでももちろん自分が本気になれたのであれば素晴らしいことです。私個人としては、面談でレジュメを読み上げるのではなく、エンジニア人生の中で本気になれたエピソードをたくさん聞かせていただいて、尊敬できるなあと思わせてほしいと思っています。
書いていて自分が上から目線に聞こえるかもしれませんが、そのような方を純粋に尊敬していますし、自分もそうありたいと思っている、ということです。
ここで、例えば会社の方針や、プロダクト、プロジェクトの内容によっては、面談の場で話すことが難しいこともあるかと思います。
例えば金融系のプロジェクトをやっていて、とても楽しかったのだが、詳細については話すことができない、とかです。
私は、そのように成果物を面談の場で話しにくい状況にあったとしても、何かしらアウトプットをしておくべきだと思います。
それは、自分の技術ブログでもいいですし、個人ブログでもいいですし、ツイッターでもいいと思っています。エンジニアであれば、github のコミット履歴でもいいでしょう。そのように、なにかしら見せてくれ、と面談の中では思っています。
いろいろ頑張りましたが、後悔できるものはありません、と言われると、私としてはとてもアピールに乏しく感じてしまいます。本当にそのような事情があるのかもしれませんが、個人のブログで、制約の中でも思いを綴っていたりしている人の方が私個人としては信頼できる気がします。
そういう意味で、個人的にもできるだけアウトプットの機会というのは大事にしていきたいなと思っています。
瞬発力がありそうか
瞬発力、に関してです。
スタートアップに勤めている身としては、瞬発力は高い方がいい、
と思っています。この瞬発力という言葉に関しては、いくつかの意味がありますが、
例えば、
新しい技術に飛びつく力
知らないことに対してまず調べてみる力
とりあえず実装してみる力
とりあえず小さくてもいいので成果物を出そうとする力
チャレンジできる力
などでしょうか。
実際、私はこの瞬発力と同じくらい、始めたことを継続できる「持久力」についても大事だと思っていますが、瞬発力と持久力をどちらも発揮できる人というのは本当に少ないです。
結局のところ自分が熱中して開発できたものがあるか、ということにつながるのですが、その熱中エネルギーみたいなものがその瞬発力から生まれ、持久力へと変換される気がしています。
また、持久力は最初からあるものではなく、やっていくうちに生まれてくるものだとも思っています。
面白いと思って始めたものでも、それを1ヶ月続けることのできる人は本当に少ないです。
それを3ヶ月、半年と続けるうちに、やっていることに対して愛着が湧き、もう少し続けていこうという持久力につながっていくものだと思っています。
ゼロイチ型か、あるものを伸ばす型か
ゼロイチ型か、あるものを伸ばす方か
私の尊敬するエンジニアが言っていたのですが、エンジニアはこの二つにある意味大別されるらしいです。私もそれを聞いてからとても納得しました。
ゼロ1をつくるのが好き(得意)なタイプのエンジニアと、
1ができているものに対して、それを伸ばすことのできるエンジニア
というふうに、エンジニアのタイプは大まかに二分される、という話です。
私はスタートアップ企業にとって、このゼロイチ型のエンジニアがどうしても必要だと感じています。基本的に、スタートアップにとってプロダクトは存在せず、その都度プロダクトを開発しては壊し、開発しては壊すようなマインドが必要だと思うからです。
私は、先程から数年つかってプロダクト開発をしてきたと言ってきましたが、
究極な話、自分が作ったものは完全に壊してもいいと思っています。
もし他にいい書き方やアプローチがあるのであれば、完全にそちらに移行することを助けようと思っていますし、自分より優秀な方がいるのであれば、そのひとが作るプロダクトを支援する側に回ろうと思っています。その中で、とりあえずこんなものは出来ないかとか、デモを作ってみよう、といったゼロイチを実践できるエンジニアというのは、本当に少ないです。
私としては、スタートアップにいるのでこれはかならびっくりしています。というのも、そのようなゼロイチが得意なエンジニアばかり入ってくるのかと思っていたからです。
現実的には、そんなことはなく、感覚としてゼロイチ型のエンジニア:あるものを伸ばすのが得意なエンジニア=2:8くらいのイメージだと思っています。
ここで、伸ばすタイプのエンジニアがいらない、と言っているわけではなく、そのレイヤが得意な方達も本当に大切だと思う一方で、ゼロイチをひたすらやることのできるエンジニアもとても貴重であり、スタートアップという狭い領域の中であれば、後者の方が必要だと言っているだけです。
メンターがいた方が伸びるタイプか、もしくはメンターを欲しているか
メンターなどの教育制度についてです。
大企業では、エンジニアとして働く時に、その分野に精通した先輩メンターがつくことが多いです。
もしくは、上司にその分野の権威のような人がいたり、いろいろなことを教える教育の文化がすでに出来上がっていることがほとんどでしょう。そのように手厚い技術サポートをエンジニアとして働く最初の数年でもらうことができるということは、非常に素晴らしいことだと思います。
スタートアップで働くとすると、このような教育制度はほとんど存在しないと考えた方が良いです。
スタートアップのステージによっては、シリーズA,Bとかになるとおそらく人も増えてきて少しずつ教育をするような文化が育ってくるかもしれません。
しかしながら、それ以下のステージ、またはシリーズAとかであってもそこでの教育というのは、大企業のそれとは明らかに違うものになるかと思います。
OJTなどと言いますが、基本的にはプロジェクトをやる上で自分で学ぶようなことになるでしょう。
もちろん優秀な方も多いスタートアップ企業ですが、基本的にその人たちはプロジェクトを数個抱え、入ってくる新人に対して手厚く教えるような時間を確保することが難しいのが現実だからです。
したがって、面談などで、「教育などは充実していますか?」という質問に対しては、正直に「教育を重視するのであればステージの進んだベンチャー企業、もしくは大企業に行った方がいいかもしれない」とお伝えするようにしています。
もちろん、ベンチャーだから教育の文化がなくてもよい、と言っているわけではなく、そのような文化を構築していくことが大事だと思っています。現実的に厳しいことも多いという意味です。
(金銭的)リターンを要求するタイミング
ベンチャーでの給料事情的に、実力を示してからリターンを要求するタイプの人が一番良いと思っています。
ここに関しても、もちろん最近はリッチなスタートアップが増えているかもしれませんが、基本的に給料も会社の資金状況によることが多いです。また、スタートアップにおいてはアーリーステージであれば採用のミスマッチが致命的になることがあるため、いきなり大きな額を採用時に確保できないことが多いかと思います。
この給料事情に関しては、一定の理解をする必要があると思います。
スタートアップに入社するのだから、給料は少なくても我慢しろ、という暴論を言っているわけではなく、採用のミスマッチのリスクを抑えようとする心理が、スタートアップでは強いという意味です。もちろん、すでにキャリアのある方やライフステージなどにより、求める額も大きいと思いますが、個人的には一定の自分の能力のフィットを示した後に給料も増やす前提で進めるのが一番良いと思います。
例えば(極端な例として書きます。)、自分の要求が600万円だった場合、
1年目は600万、2年目は650万、3年目は700万
という設計にするのではなく、
1年目は400万、2年目は600万、3年目は900万
というように自分の能力がフィットするにつれてがんがん給料もあがるような設計になっていた方が良いのではないかと思っています。
もちろん、これに関しては何がいいのかいろいろご意見があると思います。
あくまでも、このような実力で勝ち取るような気概を持っている人の方があっているのではないか、という意味です。
受けているスタートアップのステージを理解しているか
どのステージで入ろうとしているのか理解した方がいい。
これに関しては、スタートアップに入る以上、会社がどういうステージなのか、というのは非常に重要な要素であるということです。
例えば、まだ社員が2、3人のスタートアップなのか、
シードラウンド(初めの数千万から一億円程度の資金調達)が済み、十人弱社員がいる状態なのか、
シリーズA(1億円から数億円程度の資金調達)が済み、二十人程度社員がいる状態なのか、
シリーズB(シリーズAより大きい調達)が済み、40、50人程度社員がいる状態なのか、
シリーズC以降で、百人以上社員がいるのか
など、ここに対してどのようなステージなのかというのに全く無知識で無関心な人も想像以上に多いです。例えば、シリーズAなどをすぎた後から社員の数もかなり加速度的に増えてきて社内のカルチャーなどにも変化があったり、スタートアップは変化のスピードがとても速いため、自分がどのステージの会社に入ろうとしているのか、ある程度イメージをもつべきです。
スタートアップに対してあまり知識がない人は、実際にスタートアップで働いている人などに聞いてみたりするとイメージが湧くかもしれません。
また、スタートアップの企業では、同じようなステージであっても、雰囲気に大きな差があることが多いことを知っておくべきです。個人的には、学生の間に数社スタートアップでインターンをしてみるのを強くお勧めしています。どのような雰囲気が優れている、劣っているというわけではなく、自分にあっている雰囲気というものを考えてみるいい経験になるからです。
私は結局2社インターンを行い、そのうちの1社に入社しました。また、現在は副業として別のスタートアップにも1社お世話になっています。
そこから学んだこととして、同じようなステージであったとしても雰囲気やカルチャーはとても違うので、どのようなところで自分が力を発揮できそうか、性格的にあっていそうか、ということについて考えてみることが必要だと考えています。
また、ステージによって考慮されるストックオプション(SO)などにも差があるかと思います。
SOについてはもちろん金銭的にリターンが保証されるものでは全くないですし、考えすぎる必要はないかもしれません。しかし、SOは大企業にはない、自分がベンチャーに飛び込むというリスクをとったことに対しての1番のリターンと考えるべきであり、それについても将来的に設計されていることを確認した方がいいと思います。面談をやっている経験上ですが、SOについて聞いてくる人が驚くほど少ないです。(というより30人くらい面接して一人も言及する人はいなかったです。)
失礼にならない程度に聞いた方がいいと思いますし、そのような質問をしたときの対応などでも雰囲気などを知ることができると思っています。
自分のやりたいことや、つくであろうポジションを少しでも良いのでイメージできている
いろいろと書きましたが、結局のところ、ポジションに空きがでているか、資金の状況はどうなのか、といったところに採用の合否というところは非常に左右されます。
どのようなポジションに自分がつくのか、つきたいのか、そのポジションは会社にとって重要な場所なのか(つまり一番楽しいポジションなのか)という点について考えるべきだと思います。
例えば一例ですが、同じAIエンジニアを受けているとして、A社はメインビジネスとしてAIをやっており、たくさん投資をしている、B社は複数ある事業ドメインの一つとして、最近AIのビジネスを始めたばかり、
という状況であれば、同じAIエンジニアになるにしても自分がやるべき役割や、まわりに雰囲気というのは違ってくるでしょう。このように、どのようなポジションに、どのような会社のステージ(ビジネスの流れで)といったことはわかっておかないとミスマッチになりかねないですし、そこについて全く理解していないような候補者であれば、この人何もわかっていないけど大丈夫かな、
と感じてしまうということです。
まとめ
非常に取り止めのない文章になってしまいました。
また、全く技術の話ではなく、マインドセットであったり、気概のようなマッチングの話に終始してしまいました。
しかしながら、スタートアップ企業は、もしマッチングがうまくいけば非常に面白い環境の元で、自分の成長や会社の成長を大きく感じながら働くことができる環境です。
自分のやりたいことや、キャリア、ライフステージなど、いろいろなことを加味する必要はありますが、いい選択をおこない、スタートアップ企業に飛び込んで楽しめる人が増えることを個人的には願っています。
また、ここで書いたことは私の所属する会社には関係のない個人的な意見であること、
スタートアップや大企業論争に対して、結局はその人の性格やライフステージに合った選択をしていくことが大切であるため、優劣をつけようとしている意図は全くないということについて最後に言及しておきます。
今回はこの辺で。
kenmaro
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