香港のイギリス流英語教育(1) - 英語力を育てる

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2010年初めて日本での仕事が決まった時、企業ではなく日本の国立大学での国際交流・国際産学連携を担うポジションになったことが、やや想定外でした。その前に香港でITコンサルタント、大学の非常勤講師、自分で人材派遣会社を起業・運営などを経験しましたが、国際系の仕事をするのは、日本に来てからです。英語が堪能な方々と一緒に仕事させていただいて、自分の英語がイギリス流であることに気づきました。周りの同僚はほとんど日本の方々ですが、アメリカから帰国された年配の方や、いまだに留学経験がなくても努力して英語を上達させた若い方もおられます。皆さんと交流しいろんな教育背景を比べてみると、香港の独特なイギリス流英語教育の特徴を再認識することができました。皆さんの英語学習にも参考になるかと思って、少しシェアさせていただきます。

イギリス英語って、確かにその通りかもしれません。振り返ると、まだ香港がイギリスの植民地だった時代ですが、英語教育って、子供に英語を教えるというよりは英語を育てるような感じでした。以下は私の経験ですが、学校によって異なった英語教育を導入するケースもあります。
・最初の英語教育は幼稚園の頃
・イギリスの子供たちと同様にゲーム感覚で英語で遊ぶ
・小学校の英語教科書もまたイギリス出版のもの
・イギリスの民謡、昔話、童話、日常生活のコミュニケーション等を主に覚える小学校時代
・中学校の英語授業では、香港出版の教科書とイギリス出版の参考書を一緒に使っていた
・文法を勉強する授業が非常に少なく、その代わりに様々な場合における英語の表現を覚えていた
・中学校の音楽授業では、よくイギリスの民謡とBeatlesの曲を聴いていた(Let it be, Let it be〜!)
・高校になると、高校試験のための英語訓練が毎日行われていた記憶
・Listening, Reading, Writing, Speaking, Integrated skillsという5つの訓練のなかで、実践的な英語力を身につけることが目標
・高校試験では、レポート書き、新聞雑誌読み、プレゼンテーション、ディスカッションが主なテストされる能力
・大学入試(各大学が独自行う試験がなく統一試験のみ)の英語試験はほぼ二日くらいかかったこと、強く記憶に残る

どうでしょうか、日本の英語教育とは結構違いますか。

今再度振り返ると、やはり英語を学んだというよりは、英語力が育てられた感じが強いですね。最初は子供が自分がいる環境を認識し基本的なコミュニケーションができる英語力、次に生活のための英語力、そして高度教育や仕事のための英語力、成長の各段階において育てられたように思います。中学校と高校の頃は、試験のためもちろん勉強に努力はしましたが、本当に強い意識で英語力を身につけようとしたのが、たぶん大学に入ってからかもしれません。特にAcademic WritingとTechnical Reportの書き方、そしてより意味の深い文章を理解する方法などが、本当に大学に入ってから学ぶことで、正確に言えば、文法もその時深く追究することになりました。

2010年から始まった日本の国立大学での国際系の仕事は、今まだ続いています。10年ほど経ったところで、様々な日本人学生もサポートしているなかで少しわかったのは、多くの日本人学生にとって英語って学びの部分が強い一方、育ちの部分が少ないとの点です。逆に言えば、イギリスの植民地だった香港では、アジアの一部でありながら英語力を育てる環境が結構整っていたということです。

ちょっと国際の仕事に戻りますが、英語堪能の日本の方々と一緒に仕事して、自分の香港という特殊な環境で育った英語力の特徴にも結構気づきます。一般交流のためのコミュニケーションの流暢性、英語文章の意味を大まかに掴むスピード、英語文章を書く時の文章のわかりやすさという点では、自分がより得意のようです。ところが、ある特定の専門領域になると、自分より優れている日本の方も結構います。おそらく、それが育ちと学びにどちらかに重点を置くことによる違いかもしれません。

あくまで個人の経験と観察ですが、もし英語力について①コミュニケーションの自然さと流暢性、②長い英語文章の意味を大まかに掴むスピード感、③海外向けにわかりやすい・意味の伝わりやすい文章を書く能力を重視するなら、英語力を育てるという点にもっと意識したら、良いかもしれません。

学びではなく育ちって、具体的にどうすればいいのについては、また次回シェアさせていただきます。

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