橋
卒業する先輩方に捧ぐ
ぼくは川の流れを見ていた。川の流れは多くの落ち葉をも流していた。顔を持たない多くの落ち葉がぼくの下を通過し、またその全ての落ち葉が二度と戻ってくることはなかった。
ギイギイ、ギイギイ。何を想う?ああ、寂しいのだ。ぼくは水面に揺らぐぼく自身の影を見つめる。川の水は月の光に照らされてわずかに白く濁っている。
その時だった。水面に白く光る幾つかの何かがうつった。それは小さなオイカワだった。彼らは水面に口を向けて何かを告げようとしている。
やがて、彼らは自分の語りたいことを語り終えたのか、満足そうにまっすぐ前を向くとそれぞれの方向に散っていった。
ぼくは今でも川の流れを見続けている。その度に顔を持たない多くの落ち葉がぼくの足元をただ通過する。だが、ぼくは希望を得た。あの白い水の光の中で、あの小さな魚たちが再びぼくの元に戻ってくることを信じて、今日もぼくは川の流れを見続けている。
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