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『独白』

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#海

夕陽の映る海面が

翡翠色の波を立てていた

砂浜には忘却の孤城が

波にさらわれ崩れてゆく

波は肌で触れれば暖かく、

丘には琥珀色のすすきが

夕凪の涼風になびいて心地よかった。

丘の上には赤と白の灯台が

独り静かに砂浜の音楽を聴いていた。

素晴らしき思い出

泡沫に飲まれる沈没船
 
波に崩れ、深海を静かに漂う。

木片は腐り果て、粒子となって

やがて海水となった。

かつて船だった場所は

水底の砂地に窪みを残し

やがて窪みから鮮やかな海月が生まれた。

海月は水底で唯一の光源となって

いつまでも漂っている。