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マクドナルドの日本人改造計画

「ハンバーガーを食べさせて日本人を金髪にするんだ!」
初めてこの言葉を知ったとき、私はドン引きした。
そんなバカなことがあるのかと。
だったら私はとっくの昔に金髪になっているはずだ。
何度もマックに通い詰め、ハンバーガーを食べていたのだから。
けれども当の本人は真面目にそう言っていたという。
その人の名は藤田田。
日本マクドナルドの創業者である。

藤田田は大正15年生まれ。
大正15年生まれは青春時代の全てを戦争に捧げた世代。
そして戦争で焼け野原になった日本を復興させた立役者たちである。
私の祖父母も同じ世代だが、とてもパワフルでエネルギッシュだったことを覚えている。
藤田田もその一人だった。
特段勉強せずとも東大に進学する頭の良さ。
しかも東大在学中にG H Q(連合軍総司令部)に通訳としてアルバイトをしていたという。
ついこの間まで「鬼畜米英」と言って敵対していたアメリカ軍を相手に商売。
その胆力と商魂は凄まじい。
通訳のアルバイト時代、藤田は筋肉質で高身長のアメリカ人たちをまじまじと見た。
きっとこう思ったことだろう。
自分たち日本人は体格で負けたのだと。

藤田はそんな体格の良いアメリカ人を手玉に取る人たちに出会った。
ユダヤ人である。
ユダヤ人たちはアメリカ人から金を貸し、その利子で生活をしていた。
下っ端兵士のユダヤ人がG H Qの偉い将校と同じように贅沢な暮らしをしていたのである。
藤田はこのユダヤ人から金儲けを学んだという。
藤田は大学卒業後に自分の会社を作った。
たとえ大赤字になっても一度交わした契約は必ず守る藤田の姿勢。
その姿勢が功を奏し、藤田はユダヤ人の信用を勝ち取った。
いつしか藤田は「銀座のユダヤ人」と言われるほどの経営者まで上り詰める。

若い頃はG H Qの通訳、その後はユダヤ人を相手に商売してきた藤田。
グローバルなビジネスを通して、きっと実感しただろう。
日本人と欧米人の体格差を。
日本人をもっと強くしたい。
戦争で日本がアメリカに負けたのはなぜか?
体格が違ったからだ。
なぜ体格が違うのか?
それはきっと食べ物違うからに他ならない。
米と魚ばかり食べる日本人とパンと肉を食べるアメリカ人。
日本人のアメリカ人と同じものを食べていれば負けなかったのではないか。
藤田は語る。

「日本人がパンと肉のハンバーガーをこれから先、1000年ほど食べ続けるならば、日本人も、色白の金髪人間になるはずだ。私はハンバーガーで日本人を金髪に改造するのだ」

「私は日本の国民に夢を持たせ、欧米人に遜色ない民族に改造したい、という意味で言ったのだ」

時代が変われば食生活も変化する。
いつか日本人もパンや肉を中心とする食生活になるだろう。
日本人が世界で活躍するためには食生活から変えなければならない。
日本人の体格を変えて欧米人に負けない日本人を作りたい。
世界に通用する日本にしたい。
ハンバーガーで日本を、日本人を変えるぞ!
藤田を突き動かしたのは日本を愛する心だった。
藤田の強烈な愛国心が日本マクドナルドを生み出した。

さらに藤田はマクドナルドの経営を通して若い人を教育した。
マクドナルドのための大学を作ったのである。
商法の基本は人間の商法。
藤田は語る。

「私は諸君に、当社が儲かるようにやれ、とは言わない。後世の審判に耐えうるようなインターナショナルな人間になってほしい」

「自分がそこまで成長したなと思ったら、独立なり転職を考えてやめると申し出ていただいてもいい」

「その結果として、わが社が儲かるかもしれないが、私は何も諸君を牛馬のごとくこき使って儲けようとは思っていない」

この言葉、カッコよすぎると思うのは私だけだろうか。
こんな熱い言葉をかけられたら、若者は必死で頑張るだろう。
若者たちの頑張りこそが世界に冠たる日本を作る。
マクドナルドの大学はその土台になる。
ここでも藤田の強烈な愛国心が炸裂した。

単に儲けるだけでない。
どうやって儲けるのか。
儲けたお金で何をするのか。
日本を豊かにするためにお金を儲けたい。
そんな想いが藤田にあったと思う。
最後にそんなエピソードを紹介したい。

藤田はビジネス仲間のユダヤ人からこんな誘いを受けた。
日本へドルを売らないか?
日本政府がドルを買っている。
今が儲けのチャンスだ。
藤田も一緒になってドルを売れば、巨万の富を得られたはずだ。
ユダヤ人はしきりに藤田を誘う。
しかし藤田の答えはN Oだった。

「私がドルを売れば私は儲かるが日本国民は損をする。私は日本から儲けようとは思わない。ユダヤ人から儲けるのが私の主義である」

「私は『銀座のユダヤ人』であるが、2000年間、帰るべき祖国を持っていた男である。祖国から奪うことは私にはできなかった」

藤田が稼ぐ理由は自分の生活を豊かにするためだ。
しかしそれ以上に大切な理由。
それは自分が儲けたお金によって日本人を豊かにするためだった。
自分が儲かっても、日本人が儲からなければ意味がないじゃないか。
同じ日本人から富を奪ったところで、日本という国が豊かになるはずがない。
日本マクドナルドを生み出した男、藤田田。
ハンバーガーで日本人を改造しようと本気で思った原動力。
彼の事業を成功に導かせた想い。
それは自分を生み、自分を育ててくれた日本という国への愛だった。

日々働いていて思う。
私は何のために働くのか、と。
生活のため、家族のため、お客さまのため。
答えはたくさんあるけれど藤田田の生き様を知って、

「日本のため」

という答えもあっていいのではないかと思った。
日本の代表する経営者になるには、そのくらいの気概が必要なのかもしれない。
別に金髪に変わらなくてもいい。
ただし自分が働けば巡り巡って日本のためになるのではないか。
そんなことを思いながら今日もマクドナルドのハンバーガーを食べるのであった。

参考図書
藤田田『ユダヤの商法』(K Kベストセラーズ、2019年)
藤田田『頭のいい奴のマネをしろ』(K Kベストセラーズ、2019年)

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