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人の暮らしと森づくり

今週は月曜日から金曜日まで合宿形式での演習。

ほとんどの時間は、林業生産を主な目的とした森林内で、さまざまな計測や造林過程において影響を与える可能性のある病虫害、風雪害、間伐の方法、自然保護の手法について集中的に学ぶのだけど、昨日は少し趣向が違った。

スウェーデンで一番最初に国立公園に指定されたNorra Kvill国立公園を歩きながら、現代的な木材生産を目的としない森の様相は、どのような要因で変化するのか、現場を見ながら話しを聞いた。

講師の方はこの公園内で長年にわたり森林火災と森林の変遷について研究している方で、こういったテーマのフィールドツアーを年に何度も行っているらしく、手慣れた感じで次々と注目すべき場所を案内してくれた。ただの朽ち果てつつある切り株が、実は当地では貴重なカブトムシの一種の生息地であるとか、この森では200年ぐらい前までは20年に一度ぐらい森林火災が発生していたということを、その焼跡を見せてもらいながら教えてもらうというのは、とても貴重な経験だった。

この日のお話で一番興味深かったのは、この国立公園内において、現在のようなタイプの森林(マツ、スプルース、オークの混交林)が形成され、分厚い腐葉土が積もっている状況は、長い歴史の中では本当に稀な状態なんだ、ということ。おそらく200年前までは、マツが主体だけれどパラパラと生えているぐらいで、地表も薄く、腐葉土が薄っすらつもっているぐらいだったはずとのこと。

この理由は、人間が森から多くの資源を調達していた、ということに尽きる。冬の家畜のエサとして多くの枝葉が伐採されていたし、春から秋にかけては家畜を森に放牧し、ドングリ等の餌になるものを食べさせていたことも一般的だっだようだ。これは、以前紹介したドイツのHutewaldそのもの。

中世、当地で森林が良く育った時期が2回あったそう。一度は14世紀の黒死病の流行の直後。もう一度は17世紀の北方戦争の時期。いずれの時期も人口ががくんと減った時期にあたる。この話を聞いて、森と人とのかかわりがいかに深かったのかを改めて実感できた。


オリジナル記事公開日2012年11月1日


追記(2024年5月24日):森のランドスケープの推移の話は本当に面白い。人による攪乱の度合い、気候風土、戦争だったか平和だったかという外部環境等が影響する。外部環境といえば、最近は、企業が自然資本としての森林に注目するようになっているが、これも大きなインパクトだと想像する。50年後の森林の姿が、どのようであってほしいか、ゴールイメージをどれだけ多くの人と共有できるかどうかが一つのポイントになる。そういう意味では、市民の方に、森林について正しい知識を持ってもらう場を増やしていくことは、とてもとても重要だと思う。
森づくりについては、下記の講演が勉強になりました。ご紹介します。


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