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森林リモートセンシングのシラバス

森林の維持管理や森林から提供されるモノやサービスの持続可能性の確保を考えると、その最大の鍵になるのは、やはり人材育成だと思う。これはどの国でも同じこと。そうなると、研究者やフィールドの上級管理者の育成を行う大学・大学院の教育体制の検討とブラッシュアップは重要なテーマである。他の教育機関がどのようなシラバスを組んでいるのかを知り、相対評価しながら良い部分を真似していくというのが質を高める近道。その一環として、僕が今学期、ゲッティンゲン大学で受講しているクラスの一つであるリモートセンシングのシラバスの大要を記しておこうと思う。

冬学期毎週1回、月曜日の14時から18時までの授業。全14回の授業となっている。単位は6単位。各学期30単位の取得が修士修了の義務となっているので、今学期の20%を占めるという位置づけ。かなり重視されている。内容は前半2時間が理論編、後半が実践編で衛星画像データの取得から様々な分析方法までを2つのGISアプリケーションソフトを利用して進む。4人の教官(ポスドク含む)がチームで理論と実践を教えるというやり方をとっていて、毎週少なくとも2人は教室にいて1人は講義、他で学生のサポートといった感じ。

Schedule: Remote Sensing Image Processing with Open Source Software 2011-12 Winter
1. Course Basics, Intro to the remote sensing process (Lecture only)
2. Theory of electromagnetic radiation (Lecture) / First steps in Quantum GIS (Lab)
3. Overview of GPS applications (Outdoor) (Lab only)
4. Spatial reference systems, geometric correction / Georeferencing
5. Overview on satellite sensor technology / DEM processing
6. Image enhancement I , Radiometric corrections, atmospheric effects (Both lecture and lab)
7. Image enhancement II, Vegetation indices, texture, principal components
8. Assessment of reference data, training and testing
9. Classification methods in remote sensing
10. Classification and accuracy
11. Segmentation algorithms
12. Object-based classification
13. Change detection
14. Recapitulation
※追記:夏学期も上級編の授業が予定されている。森林分野に特化した内容になるのだろう。年間(2セメスター)で12単位分が充てられていることになる。

理論編は毎回教官が用意するレジュメに基づいて進むが、レジュメの元になっているテキストは、Remote Sensing and image interpretation 6th edition。教員の話からすると欧米では標準的な教科書のようだ。

実践編ではOpen Source Softwareを利用している。Quamtum GIS と Monteverdiを併用する形。一長一短があるようで、ある回では前者を、別の時には後者を使用している。直近の授業ではMonteverdiを使って衛星画像データのSupervised classificationを行った。

日本の大学での森林リモートセンシングのシラバスについては、加藤正人先生の森林リモートセンシング第3版に各大学のものが記載されている。それを読みつつ、本学のものと比較してみると、内容についてはなんとも言えないが、こちらのコースは相当詰め込んである印象はある。複数の教官がついての講義と演習だけど、参加者のすべてがちゃんとついていけている感じはない。 森林リモートセンシングの講義を開講しているのはドイツでも限られた大学だけのようだ。この授業を受けに複数の博士課程の学生が列車で1時間ぐらいかかるカッセル大学から毎週通ってきている。

教官の数はこちらの方が充実している。日本の大学では今のところ森林リモートセンシングの専門教員が圧倒的に少ないそうで、大学教員、国公立森林研究所、航測会社の研究員を含めて専門家が約20人という記載があった。大学で森林リモートセンシングの講義を開講しているのは16校だから、単純に考えて複数の教官を講義や演習に張り付けることは難しいだろう。


オリジナル記事公開日:2012年1月10日

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