見出し画像

「守るべきもの」と「変えるべきもの」

 500年企業“とらや”会長が語る「守るべきもの」と「変えるべきもの」——「長く続く」は良いことばかりではない。

 ”ちゃんとした手土産”の定番とも言える「とらやの羊羹」。根強い伝統とブランド力に加え、海外進出やカフェの出店など、時代によって果敢に新たな打ち手を講じてきましたが、常に中心にある同社の”コア”を黒川会長は次のように語っています。

「本当に美味しいものを誠実につくること。一生懸命に和菓子を極めることです。それ以外に「変えてはいけないもの」はありません。いつの時代もお客様に喜んで美味しい菓子を召し上がって頂きたい。これまでも、そしてこれからも、それに尽きます。」

 その一例が「あん」を用いた「あんペースト」の開発です。パンに塗ったりコーヒーに入れたりと様々な形で使えるようアレンジされた「あんペースト」は人気商品となり、虎屋の真髄である「あん」の魅力を若い世代に伝えることに繋がったといいます。

 これからの時代に「守るべきもの」と「変えるべきもの」のバランスは、との問いに対して黒川会長は、「和菓子というものはあくまでツールに過ぎない。和菓子を通じて召し上がっていただく全ての方に喜んで頂くことが大切」としています。

 黒川会長が語る、『和菓子には”お客様の目的にあった和菓子”がある。商いの世界では「顧客層」「ターゲット」という言葉があるが、顧客は何らかの目的があるから和菓子を買うのであり、「50〜60代」だから買うのではない。』、すなわち世代や年齢の話ではない、目的別という視点で和菓子を考える視点は、ついつい陥りがちな内向き思考を脱するヒントになります。

 人材紹介ビジネスにおいても、「年収800万円以上の人材」、「ミドルクラスの人材」、「ITのスキルを持った人材」といった一見分かりやすい特徴の打ち出し方は、『どんな採用を助けてくれるエージェントなのか』という顧客(採用企業)の問いに答えるものでは決してありません。

 コロナウイルス感染再拡大に伴い先行きの不透明感が一層増したにも関わらず人材の不足感が更に強まるという一見矛盾した状況下において、人材紹介各社は、企業のどのような”目的”を満たすパートナーを目指すのでしょうか。各社が打ち出す”Why”が興味深いところです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?