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70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア術

  田中研之輔氏著『プロティアン 〜70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア術』(日経BP)

  法政大学キャリアデザイン学部の教授である筆者が、1976年にダグラス・ホール氏(ボストン大学)によって提唱された「プロティアン・キャリア」の概念を基に著した新著です。

  「人生100年時代」と言われ、政府は70歳までの就業機会確保の義務化を法制化しました。一方、昨年末から年初にかけて、トヨタ自動車の豊田章男社長や経団連会長が相次いで終身雇用制の終焉を口にしたことや、かねてからの議論がコロナショックに伴い一気に加速したジョブ型雇用への移行など、私たち日本人にとって“働く”という概念は根本から変わろうとしています。

  本書では、従来のキャリアが「組織の中の個人」として形成されてきたのに対し、これからは個人が自らの心理的成功を得るために主体的に築くものと位置付けられています。
  時代や自らのライフステージに応じて変幻自在に働き方を変える「プロティアン」になるためには、自らの持つスキルや経験値、人的ネットワークなどをキャリア資本としてバランスよく蓄えることが重要であるとし、蓄えた「キャリア資本」を単なる精神的な満足感だけに留めず「経済資本」(収入)に結びつけるための道筋も示しています。

  筆者は、自らの望む経験値や仕事の満足感を得るために転職することを肯定する一方、キャリア形成の第一歩は目の前の仕事に没入することだとも述べています。
  重要なことは転職するかしないかではなく、自身のキャリア形成にオーナーシップを発揮することであり、常に外の世界との繋がりを絶やさず自身を客観視することで「アダプタビリティ」(プロティアンキャリアの実践に不可欠なスキル)を高めることだというのが筆者の主張です。

  筆者が本書で再三引用している、「ラットレースに勝ったとしても、君たちはしょせんネズミのままだ」(※イエール大学のW.コフィン教授が新入生に対する講演で語った言葉)という比喩は、組織の中で無自覚のうちにキャリアのオーナーシップを放棄した状態を見事に表現しており、自戒の言葉として常に念頭においておきたい一節です。



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