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聖地巡礼記チベットへゆく⑭時を超え 秘密の寺の事を考える

チベット(西蔵)へ聖地巡礼の旅

仏教は長い歴史において
実は今大きな転換期をむかえている

仏教史において後世語り継がれるであろう
時代を僕らは生きている
そして歴史の目撃者となる

時を超え秘密の寺の事を考える。

僕らは偶然タクシーで相乗りした女性に誘導され
ある寺へ向かっていた

人里離れた丘の上に存在する小さな寺

寺の座主は転生僧で
ダライ・ラマ十四世と幼き時代を共に
修行した偉いラマだと教えてくれた

その話が本当ならば
少なくとも年齢は70歳を超える長老になる
十四世が統治していた時代から生き残る僧は
もはやこの地にはごくわずか

貴重な存在には変わりなく
もし謁見えっけんが許されたなら
それは僕にとっても
貴重な体験になる
だから高い緊張を覚え

少し危険な匂いも感じつつ
タクシーは寺に着いた

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相乗りで知り合った女性が
案内役として寺の中に入っていくので
僕らは後に続く
来るときに買った
ミルクの箱を持ち建物の裏の方へ

部外者が入らないようなラマたちの住居の
ような建物へ進んでいく

案内女性がいないと
勝手にズカズカと
侵入していきにくい場所

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丘を少し登り2階建ての建物が見えた
建物の前で二人の僧と会い
女性が何やら説明している

建物の中に入る事を
何度も お願いしていた

不審な目でみられながら
お願いをしていたら
許可を得たのか2階へ進んだ

狭い階段を登り2階へ
部屋に入る為に
靴を脱ぎ中に入る

小さな部屋には
2人のラマが座っていた

チベット仏教のラマは
民族的特徴からか
色黒で体格もいい

僕の僧のイメージの
柔らかな優しい顔のお坊さん
とは随分違う
厳しい修行で鍛えたような肉体
鋭い目、低い声から
少し怖い印象を受ける

女性が僕ら二人を紹介してくれた

上海から座主に会いに
ワザワザ来たと説明

少しだけ合わせて欲しい
と伝えてくれた

怖い顔をした二人の僧は無言で僕らを
しばらくにら
上から下までジロジロと
みてくる

僕は片手にカメラを持ち密かに
動画を回していた
そしてそれに気づかれたのか
撮影してないだろうな!
カメラを置けと言われた

その瞬間緊張が走り
やばい と思った
女性はすぐに カメラは回ってない
日本人でカメラ好きだからと
言い訳を伝え
カメラを置くように言われ
僕は電源をきりカメラを地面においた

もう一人の僧は
一言も話さずジロジロみてくる
かなり疑われているのか
突然の訪問者に対して警戒しているのか
2人の僧はあまり口を開かない

案内してくれた女性がその間も
必死で説明し何とか会わして欲しいと
何度もお願いしてくれている

僕は内心
もう無理かなと思い出していた

突然来た失礼な訪問者

しかも外人
メディアや記者でない事を
警戒される
ワザワザ時間をとって謁見えっけんする
相手でもない失礼な訪問者に
偉い僧に会ってもらうのは
失礼で虫が良すぎる話だ

しばらく、沈黙があった

一人の僧が沈黙を破り
静かに話出した

実は座主は
一月ほど前に入滅されて
今はバルドゥの期間に当たる為
会うことは叶わないと

要は もう亡くなっている 
という事だった

来るのが1年遅かったと一瞬思ったけど
1年前に来たらきっと この寺には辿り
つけていない

僧が部屋だけみていきなさい
と言ってくれたので
僕らは奥の部屋に向かう

黄色く十字柄が朱色で入る分厚い
カーテンで仕切られた奥の部屋に
案内された

カーテンを開けると

僕の目に飛び込んで来たのは

巨大なダライラマ十四世の顔写真

その瞬間僕は
一瞬で緊張が頂点に達し背筋が凍る

そして色んな想いが頭を巡り
身の危険すら感じた

すぐ横に座主が座っていた席が残されていて
座布団の上には座主の写真
周りに色んな仏具、数珠などが置かれ
狭い部屋は色んな装飾で飾られている

まるで
帰ってくるのを待っているようだ

座布団の上に置かれている写真をみた

顎に白髭、メガネをして
体格は細く背が高そうで
優しそうな笑顔が印象的だった

でも部屋に入った瞬間から
僕の第六感がゾワゾワするのは

十四世の巨大な写真や十四世に絡む
ものが何点か置かれている事だ
心臓はバクバクして
一気に高山病の痛みが蘇る

部屋を訪問した時間は
ほんの1分もない
すぐに部屋を出てお礼をして
その場を去った

女性はその後自宅に帰るので別れた
僕らは寺を
見学させてもらう事になり

紹介してくれた女性と別れた

興奮冷めやらぬまま僕は歩く

丘の上に建物があり
そこに向かって
階段をゆっくり登りながら

僕と妻は状況整理の会話を
始めていた

先ほどの部屋で見た光景と
僧の話を確認しあう必要があった

白い仏塔が見渡せる高台の前に着くと
レンガの腰壁に肘をつき景色を眺め
状況整理した

整理すると

ダライ・ラマ十四世と共に過ごした
この寺の座主は1月ほど前に入滅

今はバルドゥの期間だと言われた事
それはチベット死者の書でいう
特別な期間

人は亡くなれば来世に向けて転生する
解脱に成功し転生を免れる僧は
どれほど今まで存在したのだろうか?

ダライ・ラマの場合は救済の為の
観音菩薩の化身として
解脱せず転生を繰り返す

入滅し次の転生するまでの期間は
四十九日

その特別な期間をチベットでは
バルドゥと総じて呼ぶ

厳密には細かく分類があるが
簡単にいうと
魂が肉体を持たない期間
と理解できる

長い肉体の旅を終えて
次の肉体に宿るまでの
時間は何十年生きたとしても
たった四十九日しかない
魂が肉体を持たない
特別な時間

ある意味
その貴重な期間に訪ねた事になる

この瞬間も、この寺のどこかに
転生僧トゥルクの肉体は安置され
チベット死者の書バルドゥの経典を
耳元で唱えている事になる

四十九日後に
肉体は火葬されると言っていた

転生僧でもミイラにはしないらしい
やはりミイラになるには
特別なラマだけになる

僕は白く並ぶ仏塔を見ながら妻に呟いた

彼が入滅した事を十四世は知っているのかな?
妻も同じ事を思ったらしい

僕と妻はその事に想いを寄せ
とても悲しくなった

そこから見える景色
仏塔ごしに見える景色

僕は拉薩を超え
遠くインドのダラム・サラの方角を見つめ
なんとも言えないため息をつく

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十四世が去った後、
チベット仏教界は大きく揺れた

その時にこの寺の座主だった転生僧トゥルク
この地に残り尽力していたに違いない

亡命を選ばす
いずれチベットへ戻る十四世の為に
この聖なる地で
待つ事を誓ったに違いない

それは彼の部屋に飾られた
大きな写真をみて一瞬で感じた

旧知の仲であり、転生僧トゥルクであり
共に修行した仲であり亡命までの
ゆれたチベットの激動の時間を同じ目線で
経験してきた数少ない転生僧トゥルク
いや友


何百年も共に魂の旅をしてきた
僕らには理解できない深い精神世界で
繋がっている存在の転生僧トゥルク

亡命を迫られた23歳の若き十四世

十四世は決して裏切った訳ではない
そんな事は彼を知るものは皆知っている

半世紀前のあの日から
この寺の亡くなった座主は
チべットを守る事を胸に秘め
神と会話をしていたはずだ

僕はそう想いたい

ここまで亡命が長引くとは誰も
思っていなかっただろう
もう十四世が現世の肉体で
この地に足を踏み入れる事はない

肉体を捨て来世で会うために時を超える旅
輪廻転生 活仏劇は
生きてる僕に人生の儚さを教えてくれた

時を超え秘密の寺の事を考える。

そして一つ大きな疑問が残る
十四世の崇拝は禁止されている

隠しきれない大きな写真を飾る部屋
それが許可されているとは信じ難い

無断で飾っているならかなり危険だ
この寺にはまだ何か秘密があるかもしれない

⑮へ  寺に隠された秘密に迫る へ続く 

チベットへ行くはシリーズで綴つづっています
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