アメリカで見たHRテックの今。「パーソナライズされたマネジメント」がAIによって実現される時代へ。
ハイマネージャー株式会社CEOの森(@kengo_himanager)です。
10月1日から10月4日まで、ラスベガスで開催されたHRテックカンファレンスに参加してきました。
ここには、間違いなくHRテックの最先端の知見が集まっています。
昨年も参加してきました(昨年の様子はこちらにまとめています)
このカンファレンスは主にアメリカのHRトレンドを発信・共有し、テクノロジーベンダーがサービスを共有する場です。参加者は肌感覚で人事半分、ベンダー半分くらい。日本人の参加者も300人くらいいらっしゃいました。
今回参加して、やはりアメリカのHRテックは4~5年先を行っているなと感じました。そして、HRテック領域の3つの大きな潮流を掴むことができました。
カンファレンスの内容を資料化できてきたので、ところどころにスライドを差し込みながら、内容をシェアできればと思います!
潮流①:人事の役割が「チーム支援」に⇒HR領域が変化
まず一つ目の流れ。
これまでのHRテックサービスは、人事の「業務効率化」を目的としていました。例えば、労務管理や目標設定の効率化が代表的なものでした。
しかし、今は重要な変化が起きています。
そもそも、人事の役割が変化しているのです。
これまでの人事の主な役割と言えば「タレントマネジメント」でした。才能ある社員を発掘し、育成していく。大企業だと「部長コース」や「経営者コース」みたいなものが用意されていたりもします。
そこから人事の役割は「ピープルマネジメント」へと変化していきました。特定の社員だけでなく、社員全員のエンゲージメント向上の施策を行ったり、福利厚生の制度設計などを行っていました。
そして今は、さらに役割が変化しています。
それは「現場のチームを支える」こと。
つまり、現場のパフォーマンス向上や現場のマネージャーの支援をすることが、人事に求められているのです。
↑「タレントマネジメント」➡「ピープルマネジメント」➡「現場の支援(Improving Work Experience)」へと変化している(出典:https://joshbersin.com/2019/09/why-adps-next-gen-hcm-is-a-disruptive-force-in-hr-technology/)
なぜ「現場のチーム支援」が重要になっているのかというと、現場であるチームが臨機応変に対応する事がより求められているようになっているからです。
よく言われているように、ビジネス環境の変化スピードが加速していて、またミレニアル世代の増加によってリアルタイムなコミュニケーションが求められている。
現場レベルで臨機応変に対応できるマネジメントが重要になっています。
↑「ビジネス環境変化の加速」と「ミレニアル世代の増加」がマネジメントの在り方を変えている
↑リアルタイムなコミュニケーションが重要になっている
↑ミレニアル世代へのマネジメントにおいて重要な4つの観点
↑パタゴニアやグリーンハウスなどの有名企業もマネジメントスタイルを転換させています
現場のチーム支援の重要性の高まりに拍車をかけているのは、フリーランスの増加です。
アメリカでは”Gig Worker”という表現がされていて、会社に属さずにプロジェクトベースでジョインするフリーランスが増えています。
このような人事の役割の変化に伴って、HRテックサービスも「業務効率化」から「現場のチームを機能させるため」のものに変わっていっています。
人事の仕事が効率化されていなくても良くて、現場が効率化されていることが重要になってきているのです。
実際に、現場のチームを支援するツールをHR領域外の会社が作っている現状があります。Facebookの「Workspace」だったり、Googleの「Google+」だったり。昔からするとHRサービスとは思えなかったんです。社内SNSであって、人事を楽にするものではなかったからです。
でも、今はチームを楽にするサービスだから、HRとして成り立ちます。そういう意味では、SlackやAsana、TrelloなどもHR領域で競合になってくるんじゃないかなと。
出典:Josh Bersin Untangling the HR tech market 2020
潮流②:UI / UXの進化
現場のチームにしっかりと使ってもらえるためには、UI・UXがとても重要な意味合いを持ちます。だから、どの会社もUI・UX改善に多く投資しています。
例えば、ADPという会社があります。70年前からある老舗のHRの会社です。
彼らが4年前くらいからUI・UXの向上に力を入れています(GenerationZ=Z世代向けのUI・UXと言われていたりします。ミレニアムの次の世代です)。
出典:https://joshbersin.com/2019/09/why-adps-next-gen-hcm-is-a-disruptive-force-in-hr-technology/
検索窓があって、「評価」と検索すると評価画面に飛ぶことができたりします。あとはチャットボットがあって、「1on1」とメッセージを送ると勝手に1on1のページに飛んだりとか。「1on1で何を話せばいい?」と送れば、記事が返ってきたり。凄く便利ですよね。
「To C」のUI・UXが「To B」にも入ってきているなと感じます。
さらに、採用からマネジメントまでワンストップで行うことができるようになっています。
SmartRecuitersという、ATS(採用管理サービス)の会社がアメリカにあります。この会社の何が凄いかというと、様々な外部のサービスとコネクトされているんです。
出典:https://xref.com/en/integrations/smartrecruiters-applicant-tracking/
ATSは本来、採用担当のためのステータス管理システムなんですが、バックグラウンドチェックサービスと連携していることで採用時のバックグラウンドチェックをワンクリックでできます。今までは情報をPDF化してバックグラウンドチェックをしている会社に送らなければならなかったのが、その手間を省くことができるんです。
出典:Josh Bersin Untangling the HR tech market 2020
AllyOというサービスもあります。
チャットボットで採用候補者との面談の日程を調整できたり、従業員のエンゲージメントに関するサーベイを行うことができるサービスです。このサービスは昨年までは日程調整がメインだったのですが、チャットボットというUIを活かして採用からマネジメントまで展開しています。なんと昨年までに合計64億円を調達しています。
出典:https://www.allyo.com/solutions/connect/engage-with-candidates/
日本はまだまだサービスの連携が少ないように感じます。これからどんどん進んでいくところかなと思います。
潮流③:「アクションプラットフォーム」の誕生
これが一番重要かつ大きな、魅力的な変化かもしれません。
今までのHR領域のサービスは、「エンゲージメント」「マネジメント管理」「称賛(Recongnition)」「ラーニング」など様々な要素があり、それぞれがサービスとして独立していました。(下のスライドでは"Reinvent themselves"と表現されています)
例えば、エンゲージメントサーベイで従業員の状況が分かるもの、OKR・1on1管理で日々のマネジメントに役立つもの、Uniposみたいにピアボーナスで褒める…など。
しかし今、HR全体で「領域の統合」が起きています。
↑ 市場が"Converge"(=統合)し始めている。(出典:Josh Bersin Untangling the HR tech market 2020)
エンゲージメントに関するサービスを提供している会社がパフォーマンスマネジメントの会社を買収したり、Recognitionの会社がエンゲージメントの会社を買収する事例が、アメリカで生まれているんです。
では、なぜ「領域の統合」が起きているのか?
ひとつは、従業員の立場からするとUXが悪いからです。
このアプリでエンゲージメントサーベイに回答して、このアプリで1on1やって…。とにかく手間がかかってしまいます。どのアプリでどれをやるんだっけ…と混乱することにもなります。
もうひとつの理由は、それぞれの領域で提供できる価値が飽和しているから。
ピアボーナスだったらピアボーナス以上に深まることはない。ピアボーナスだけで今まで以上の価値を出すことはどうしても難しくなってしまいます。(あとは、各領域のプレーヤーが上場するなど、資本力を上げてきて、他社を買収できるようになってきているのも背景にあります。)
HR領域が統合されていく中で生まれたのが
「アクションプラットフォーム」
という概念。
出典:Josh Bersin Untangling the HR tech market 2020
アクションプラットフォームとは、一言で言うと「各領域のデータを統合し、最適なアクションをレコメンドできるプラットフォーム」です。
詳しく説明していきます。
今までは、エンゲージメントサーベイの結果、「この人がエンゲージメント下がってます」ということを知って終わりでした。
しかし、その「エンゲージメント」のデータに「ピアボーナス」のデータや「1on1」のデータも統合して分析することで、新しい示唆を出すことができます。「この人は5回以上褒められた月はエンゲージメント上がってるよね」とか「1on1でこのポイントを意識したらエンゲージメント上がっている」ということが分かってくる。
つまり、あらゆる領域のデータを総合的に分析することで「個別最適」な示唆を得ることができます。
さらに、ただデータを出すだけにとどまらないのも重要なポイントです。
データが分かってもアクションに繋がらなかったり、1on1の結果を記録しても次に生かせないという問題が多く起きています。データを管理するだけではもう価値がない。
アクションプラットフォームの出すアドバイス(「ナッジ(Nudge)」と呼びます)は、「自分って何すればいいんだっけ?」というところまで教えてくれる。ネクストアクションまで明確にすることができます。アクションまでレコメンドしてくれるのも、領域を統合することで生まれる新しい価値です。
アクションプラットフォームが、「パーソナライズされたマネジメント」を実現させるんです。
「Amazonを使っている感覚」でのマネジメントに?
広告が、膨大なデータ分析からパーソナライズされた運用をしているように、HRやマネジメントもより個別最適なされたものに変化していくと思います。
Amazonを使っているときに商品がレコメンドされるような感覚で、マネジメントの打ち手や部下へのコミュニケーションのアドバイスが送られてくる。そんなマネジメントができるようになる。
一人ひとりに合ったマネジメントが実現されることにより、一人ひとりが居場所を感じ、心理的安全性の高い環境でパフォーマンスを発揮できる。
僕たちハイマネージャーは、ここを目指しています。
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ハイマネージャー
OKRや1on1、フィードバック、人事評価などハイブリッドワークのマネジメントに必要な機能が全て揃ったピープルマネジメント・プラットフォーム「HiManager」の提供、及びマネジメント・人事評価に関するコンサルティングを行っています。
スライド全編はこちらです↓
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