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ジョブ型雇用は大企業だけなのか?スタートアップで実践するこれからのジョブ型雇用

こんにちは!ハイマネージャーの森です。

コロナ禍によりジョブ型雇用の話題が再燃しました。リクルートキャリアの調査では従業員5,000人以上の企業のうち約2割がジョブ型を導入、うち7割はこの1年半以内に導入したという結果が出ています。

実際に、日立や富士通、ブリヂストンや資生堂など、日本を代表する企業では、ジョブ型雇用とメンバーシップ雇用を取り入れてハイブリット型の雇用が独自に取り入れられています。大企業では正社員のジョブ型、メンバーシップ型の話題が取り上げられていますが、実はスタートアップでも違った形でジョブ型採用を取り入れていることに気づきました。

そこで今回は、スタートアップでのジョブ型雇用についてをまとめ、今後の予測をしていきたいと思います。

スタートアップの採用事情

私は、スタートアップでは正社員のジョブ型・メンバーシップ型の議論に留まらず雇用形態を跨いだハイブリット雇用を取り入れていることに着目しました。

スタートアップは冒頭で述べた大企業と異なり、優秀な人材を採用することすらままなりません。フルタイムでなくても優秀な人材に企業成長の一端を担ってもらえるだけでも知名度が低く実績がまだないスタートアップにはありがたいことです。

そのため、専門性の高い業務は副業や業務委託に切り出しジョブ型の雇用を行い、コア人材となる正社員をメンバーシップ型で雇用するスタートアップの事例が増えています。

ジョブ型でプロ人材を副業採用しているスタートアップの事例

実は弊社ハイマネージャーも、副業人材の力を借りて成長させてきました。弊社はまだ道半ばですが、副業人材の活用で成功を収めているスタートアップの工夫や事例をいくつかご紹介したいと思います。

①株式会社YOUTRUST
株式会社YOUTRUSTは、現在正社員は30名弱、業務委託を合わせると100名程度の組織規模を誇ります。(2021年9月末現在)同社は、自社サービスとして副業採用のプラットフォームを提供していますが、創業まもない頃から自社でも副業人材を活用し、現在シリーズBの資金調達を行うなど着実に事業を成長させています。

そんな同社では、そもそも雇用形態に線引きをせずに接することで副業人材の活用を成功させているようです。あえてお客様扱いをしないことで疎外感を感じさせないためにフィードバックをしっかり行う、情報格差を作らないためにslackのアカウントもフルアクセスにするなど正社員と変わらない対応を実践しています。

また、指示を求める人はそもそも副業に適さないとして自走できる優秀な人材を採用し、彼らを信じて任せることもマネジメントにおける秘訣のようです。

②株式会社カウシェ
シェア買いアプリ「KAUCHE」を運営する株式会社カウシェは、組織の8〜9割が副業メンバーで構成されています。2021年3月には「KAUCHE de WORK」という人事制度を制定し、副業メンバーも半期ごとに実施する目標設定・評価サイクルに基づいた昇給の対象となるました。加えて、異動制度も導入することで雇用形態にかかわらず、同社での多様なキャリアの実現を可能としています。

この制度は上長だけでなくチームからのフィードバックをもらえること、成果だけでなく行動評価をすることが特徴的です。通常の副業であれば上長以外との会話機会も少なく、成果が評価の100%を占めます。このような工夫をすることで、副業メンバーを外部の人と見なさず、「チームの一員として長く一緒に働きたい」という会社の気持ちを伝えているようです。

④株式会社overflow
創業以来リモートワーク前提での組織運営を行い、創業から2年間正社員0での事業運営を行い会社を成長させている株式会社overflow。同社は3年で270名にまで組織を拡大し、その8割が副業メンバーです。

必要なコミュニケーションを独自で洗い出し、「本当に必要なコミュニケーション」を取捨選択しました。情報格差の改善においては、KPIの進捗が可視化できるツールの導入、テキストコミュニケーションの定着、会議における事前のドキュメント化、会議中のルール設定などの施策を実行。

また、同時に全社員を対象とした自己紹介コンテンツ作成や、感謝したい人を決めてメッセージを書く「Thanks to」という取り組みを行うことで強い絆を意識的に作っていきました。他にも、斜め1on1やピア1on1「オフカフェ」や「もてなし会」など任意参加の場を設けたり「偶発・必要」の会議をすることでラポール形成を深めています。同社では経営者の意識改革、ラポール形成、情報共有を意識することで、組織運営を成功させています。

⑤株式会社いつも.
ECマーケティング支援を展開する株式会社いつも.では、エンジニア、デザイナー、マーケティングや広報、採用など様々な領域で、プロ人材を業務委託で採用しています。同社は事業スピードを加速させるべく、アイディアを形にする人材の確保と正社員をクライアントの成長にコミットさせるため、専門領域を業務委託で切り出すことに踏み切りました。

プロジェクトもクライアントも多様な同社のサービスにおいては、業務委託で各分野のプロを採用することで専門性とスピードの部分が向上します。現在は業務委託と正社員を含むプロジェクトチームが社内にいくつも存在します。同社では仕事のスタイルのマッチングを採用時にしっかり見極めることと、現場が受け入れの際にプロジェクトや会社、チームについてのオリエンを丁寧にすることで、業務委託のメンバーが長く働ける環境を作っています。

⑥株式会社POL
理系学生のダイレクトリクルーティングサービス「LabBase」などを運営する、株式会社POLでは「社会人インターン」として複業人材を活用しています。営業、広報、新規事業からエンジニアまで多岐にわたる職種で社会インターンを採用。

同社では、業務を調整する際に「緊急度は低いけれど、重要度の高い課題」の解決をお任せし、組織への関わり方などをきちんと擦り合わせた上で、目標設定についても個別相談の形で柔軟に対応しています。そうすることでお互いがストレスを最小限に抑え両者win-winな関係を築いています。

また、社会人インターンを受け入れる上では情報をフルオープンにし、意思決定の権限をできる限り委譲。また、組織のミッション・ビジョン、バリューの浸透も、社員と同様に力を注いでいます。1人ひとりがより能動的に動けるようにし、インターンをきっかけに「もっとPOLに関わりたい」というファンを増やすことで、その後の正社員化にも成功しています。

⑦ハイマネージャー株式会社
マネジメントシステムを提供する当社では、副業人材が15名ほど在籍しています。創業まもない当社ができるだけ優秀な人材を集めるためには、正社員より業務委託で組織を作ったほうがコストの面でも採用活動の面でも現実的でした。

当社ではタスク管理やプロジェクトの見える化、定期的な社内交流イベントなどを行い、かつそれらの権限や意思決定を彼らにも移譲することで、垣根のない組織を作っています。

また、当社は正社員が業務委託メンバーを1on1するだけでなく、業務委託が業務委託の1on1を行ったり、自社サービス「HiManager」で目標管理を行ったりしています。基本的には各分野のプロを採用し、プロジェクト管理以外のマネジメントコストをほとんどかけないようにしています。

副業人材活用の成功企業における共通点

各社の副業人材活用に事例から、成功している企業には以下のような共通点が見えてきました。

1.正社員と同じように評価、フィードバックを行う。
2.情報共有をしっかり行う。
3.ミッション・ビジョン・バリューの浸透を行う。

詳細は先に述べた通りですが、いずれも正社員だとうと副業だろうと関係なく対応していくこと、そして必要なコミュニケーションの場を積極的に創出し、チーム一丸となって同じ方向を向くことが成功の秘訣です。

副業人材だからといって特別な運用方法をとるのではなく、健全な組織運営に必要なことをしていくことが、結果的に副業人材活用を成功に導くと言えるでしょう。

副業人材活用及びジョブ型雇用の未来予測

優秀な人材を確保し、スピーディーな事業展開を行うためには、副業人材の活用が効果的であることが分かりました。これからは多様な働き方がさらに広がり、企業は雇用形態に拘らない採用、多様なメンバーで構成された組織のマネジメントをしていかなければならなりません

しかし、優秀な人材を集めることばかりに気を取られると、組織崩壊しかねません。特にスタートアップでは優秀な人材を集めると同じくらい、同じ方向を向き、熱量高く取り組むメンバーが一丸となることが重要です。

とはいえ、弊社のように副業人材に対して正社員の人数が少ないと、正社員と同様のマネジメントをしていくことは非常に困難です。特にスタートアップでの正社員は自身の業務だけでも手一杯であり、それに加えて大人数のマネジメントをするのは現実的ではありません。

そのため、中間業務委託のような位置付けの方の雇用が重要になると考えています。分かりやすいのが、株式会社空が昨年発表した人事制度のプレスリリースです。

プレスリリース中間の図でいう「ドライバー」が正社員、「コラボレーター」が中間業務委託、「ランサー」が業務委託にあたります。中間業務委託にはハーフタイムで稼働してもらい、週1程度の業務委託メンバーをまとめてもらうことで業務委託on業務委託の体制をとります。

そうすることで正社員が中間業務委託を、中間業務委託が業務委託をマネジメントすることで組織運営がスムーズになります。私はこの正社員:中間業務委託:業務委託の比率に関しては、1:2:7が理想だと思っています。

このような役割を適正な比率・雇用形態で配置し、優秀な人材を確保していくことが、多様な働き方を実現した組織運営を成功に導くのではないでしょうか。

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ハイマネージャー
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