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【読書メモ】Farm Don't Hunt: The Definitive Guide to Customer Success

みなさんFarm Don't Huntをご存知でしょうか?

5 Excellent Customer Success Books to Read にて紹介されている通り、「カスタマーサクセスの緑本」として非常に有名な書籍です。カスタマーサクセス本で1冊だけオススメ本を紹介するなら、私は間違いなくFarm Don't Huntを推薦します。※1

その理由は過去にRepro CS Blogでも紹介しています。

今となっては日本のCS界隈にとって既知の情報も多いですが、驚くべきことはこれが米国で2016年3月に出版されているという事実です。

はじめて読んだ当時、悔しかったのを覚えています。日本は10年も遅れてる。。と。(参考:2年前の会話 ↓)

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今読み直してみても素晴らしい内容です。せっかくなので今回、社内ドキュメントとしてまとめていたFarm Don't Huntの要約メモをnoteで供養することにしました。

ぜひ買って読んでみてください。※2

それではどうぞ。

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――カスタマーサクセスは農業である――

サブスクリプションサービス時代。顧客を狩るのではなく、育てること。すなわちカスタマーサクセスには農業的な観点が重要です。前払いを前提としていた狩猟による短期的売り上げとは異なり、サブスクリプションの売り上げは育成の末に得られる長期的なもの。顧客は木です。病気の苗を摘み取り、健康状態を監視し、育てましょう。

――顧客成功サイクル――

サイクル

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・New
顧客はまだ製品を使いこなせていません。いわゆるオンボーディングフェーズ

・Growing
顧客の育成(ナーチャリング)。顧客は大半の期間をこのフェーズで過ごします。ここがうまくいけば契約更新につながり、うまくいかないとチャーンします。

・Renewal/Up sell
アップセル・契約更新の段階です。さらなる売り上げを得たいと言って、このフェーズだけに注力してはNGです。あくまで関係性の拡大とGrowingフェーズへのコミットに注力する必要があります。カスタマーサクセスは永遠にGrowingフェーズに注力する必要があることを忘れてはなりません。

顧客が契約してくれる理由

・顧客があなたの製品・サービスから結果を得られるとき。またお試しトライアル期間に価値を体感し結果が出たとき。
・あなたの製品・サービスをかつて使っていた、あなたの会社と関係性があった、誰かがあなたのプロダクトを紹介してくれたとき。
・(あなたの先進的なプロダクトを使って実現可能な)新しい分野に注力する必要がでてきた。新しい市場に移行する必要が出てきたとき。

顧客が契約更新してくれる理由

・あなたのサービスが継続的に価値を提供し続けるとき顧客が契約更新してくれる
・単一ではなく複数の業務目的で、あなたのサービスに依存する必要が出てきたとき
・スイッチングコストの高さ。あなたのサービスから得られる価値が、別サービスに切り替えるコストを上回るとき

解約の理由

・サービスからの価値を得られなくなったとき
・コスト削減の必要性が出てきたとき、または顧客のビジネスが廃業するとき
・ソリューションが必要なくなってしまったとき
・ソリューションが採用されなかったとき、または長期間活用されなかったとき
・サービスの提供価値が目に見えないとき
・リーダー、購入者、利用ユーザ、キーマンが会社を去るとき
・より良い、より安い、よりシンプルな、より信頼性の高い、より新しい、競合サービスが登場したとき

これらの要因から顧客は解約に向かってしまいます。しかし解約防止に向けてあなたにできることは「育てる」ことだけです。「育てる」ために出来ることはすべてやり遂げる必要があります。

――木々の管理――

顧客ポートフォリオマネジメントの重要性

顧客には、オンボーディング中の顧客、成長段階顧客、契約更新フェーズ顧客、と様々な段階の顧客が存在します。顧客全体への価値を最大化しなければなりませんが、顧客の優先順位づけが課題になってきます。したがって顧客の健康状態の見える化する「カスタマーヘルススコア」が必要になります。それをもとに顧客価値を最大化する計画を立て、顧客ポートフォリオのマネージメントを行いましょう。

契約更新・アップセル獲得に向けた営業アプローチの落とし穴

契約更新を獲得するために、契約更新45~90日前の顧客をリストアップし、アタックするというような古典的営業アプローチを行う場合、一つだけ落とし穴があります。顧客はアタックされる前に既に継続判断を決めている可能性があるのです。その場合、残念ですがその営業活動は無力となります。結局Growingフェーズに注力することが重要なのです。

契約更新・アップセル・解約に影響を与える主要ドライバー

一体何が契約更新や解約防止、アップセルに効くのでしょうか?その最大のドライバーを端的に言えば、

・1.Newフェーズのオンボーディング
・2.Growingフェーズのナーチャリング

この2つでしかありません。これらが成功すればアップセルが望める一方で、失敗すると解約に直結します。

オンボーディングのドライバー

・オンボーディング完了:顧客がサービスを使用できるか否か
・定着時間:可能な限り速くオンボーディングできたか否か
・浸透度:顧客の個々のユーザが利用してくれる比率
・満足度:サービスを推奨するかどうか。NPSの指標

ナーチャリングのドライバー

・利用頻度:定期的に使ってくれているか
・機能活用率:機能活用度は高いか
・ライセンスアカウント消化率:顧客が支払った分のライセンスを十分に消化しているか
・ROI、業績:顧客の成果につながっているか
・問い合わせ・要望の解決時間:スムーズに疑問解消につなげられているか
・迅速な支払い:顧客は迅速に支払いをしてくれているか
・顧客からのフィードバック。NPS:満足度は高いか

――カスタマーサクセスの具体的な業務――

必要な準備

・顧客を理解し顧客のビジネスのコンテキストを分かるようにする
・顧客と協力して中期的な目標を設定する
・顧客と設定した目標を達成するために、マイルストーンを置く

目標数値

・チャーンレートを2%以下に下げることを徹底しつつ
・1年目の顧客の50%、2~5年目の顧客の25%をアップセルにつなげ
・総額120%の収益増加を目指す

オペレーティング目標

・オンボーディングを最長30日で達成させる
・サービスの利用率を平均50%に引き上げる
・プロダクトの最も魅力的な機能を少なくとも60%以上利用してもらう
・1年後までに質問問い合わせ数を月30から月20件にまで減らす

ワークフロー一覧

・サクセスプログラム
  ・オンボーディングプログラム
  ・トレーニングプログラム
  ・レポーティングプログラム
  ・問い合わせ数削減プログラム
・サクセスプレイ
  ・非アクティブアカウント向けの機能活用
  ・活用度低アカウント向けの臨時トレーニング
  ・活用度低アカウント向けのコミュニケーションキャンペーン
・顧客ヘルススコアカードの月次レビュー
・全顧客とセグメント別顧客のレビュー
・カスタマーサクセスマネージャー(CSM)による分類
・サクセスプログラム・サクセスプレイの影響分析、効果測定

重要となる学習姿勢

B2Bの環境は複雑です。したがってアジャイル開発的な手法が有効になります。目標を立て、それを達成するために、頻繁に方法を調整しましょう。サクセスプログラムなどを積極的に挑戦し学習し、チューニングを行う取り組み姿勢が求められます。

――オンボーディングについて――

活動内容

・1.キックオフ。目標設定、マイルストーン設定
・2.テクニカルセットアップ
・3.機能の活用
・4.顧客のトレーニング
・5.キックオフレビュー

オンボーディングのトラブルシューティング

・1.セットアップ確認
正しくセットアップされているか確認しましょう。顧客へ連絡を取り確認を行う必要があります。なおこの作業は多くの場合自動化可能です。

・2.顧客のトレーニング
直接訪問、ビデオチャット、チュートリアルガイドなどを通じてトレーニングを促しましょう。

3.コミュニケーション
活用度を上げるためのコミュニケーションを取りましょう

評価と学習

活用度を上げるためにメールを送ったか否かにとらわれてはいけません。オンボーディングに注力する際は、メールを送った結果として活用度が向上したか否かを評価する必要があります。失敗施策を二度と繰り返さないために、記録し、学習していきましょう。

ヘルススコア

オンボーディング終了後、顧客の健康状態をウォッチしましょう。健康状態はプロダクトごとに定義が必要です。例えばメールマーケティングツールであれば、「月に1つ以上のメールマーケティングの作成」と定義することができるでしょう。

――ナーチャリング(育成)――

評価指標とセグメント

活用度向上のために活用度が低い顧客をセグメントしましょう。

・評価指標:機能活用度
・セグメント:活用度が低い顧客

利用度レポートプログラム

顧客に対して、先週の利用度データ、傾向、価値を要約し、潜在的な成長機会やインサイトを示唆する報告書を定期的にレポーティングしましょう。このプログラムは必ずしもCSMが取り組む必要があるわけではなく、完全自動化ができます。

定期的な事業レビュープログラム

顧客の事業成長の為に定期的なビジネスレビューをスケジューリングしましょう。顧客の事業成長のために機能を活用してもらいましょう。

フィードバックプログラム

顧客からのフィードバックを基に、プログラムが顧客満足度に反映されているかどうかを学びましょう。また負の傾向を把握することも重要です。指標としてはNPS、CESなどがあります。

ベストプラクティス共有プログラム

事例を基に指導をしましょう。事例を毎週メールで送りましょう。

――解約――

解約を引き起こすトリガー

・障害
障害を迅速に解決し、コミュニケーションを取りましょう。補填を行う等の真摯な対処が必要です。

・キーマンが退職したとき
新しい担当者にアプローチし再度オンボーディングしてもらう必要があります。また退職した担当者に手を差し伸べ連絡を取り、新たなリードとしてセールスチームに繋ぎましょう

・サポートへの同じような問い合わせの嵐
そのような問い合わせはボトルネックが存在する証拠です。トラブルシューティングを行い、顧客が自己解決できる状態を築く必要があります。

・顧客が成果を確認できないとき
顧客はビジネスの結果で評価します。もしも結果が出ていないとそれは深刻な問題です。オンボーディングを手配してください

解約を阻止するために

サブスクリプションビジネスでは、ケーブルテレビのように地域別独占権を発揮することができません。顧客自身が解約の選択権を握っているのです。解約阻止のためには、顧客が問題を抱えててしまう前に、そこに至らせないよう成長支援することが必要です。また契約更新プロセスに入る前にそのような問題は解消しておく事が必要です。長い間顧客の問題を解決できないでいるとチャーンしてしまします。

――収穫――

契約更新、アップセル、クロスセル等の営業活動はCSM以外のチームに委託せよ

契約更新時期を確認しアクションプランを作成し更新の為のアクションを取ってください。もし、カスタマーサクセスチームがある程度成熟しているならば、このような営業活動はCSM以外のファンクションに割り当てる必要があります。

契約更新やアップセルを狙う為には顧客の情報収集が必要です。カスタマーサクセス営業担当はアカウントに関連する情報を確認する必要があります。業績、ビジネス上の課題、予算などの情報を引き出しましょう。特定のアカウントに問題があれば十分な時間をかけて問題解消にあたりましょう。

アップセルが起こる条件

アップセルが起こるのは、顧客の利用状況が拡大したときに他なりません。ただし、顧客が製品を使いこなし、価値を実感している状態であることが前提です。価値を実感していない状況ではアップセルには至りません。

アップセルとクロスセルは時間経過により発生するものではありません。機能利用度のキャパシティオーバーによって発生するものである事に留意が必要です。

一夜にしてアップセルはならず

アップセルのためには、プロダクト利用する現場担当者だけでなく、クライアントの組織内への浸透度、使用頻度、利用度の深さを高める必要があります。たった一回限りの商談でアップセルが決まることはありません。アップセルは継続的な活用フォローやレビューの結果で得られるものです。

以上のことから営業活動と顧客関係の役割を切り離すためにも、営業のやり取りはCSM以外の者(またはCSM以外のファンクション)に委ねるべきです。

――チームビルディング――

カスタマーサクセスがこなすべき業務

・1.オンボーディング
・2.リレーションシップ・マネジメント
・3.分析とレポーティング。顧客の健康状態の監視
・4.営業管理:更新、アップセル、クロスセルなどの商業的成果の管理
・5.ナレッジマネジメント:顧客に製品の活用法を示し、最新情報や事例をアップデートする
・6.テクニカルサポート:顧客のトラブルシューティングを行う

必要となる人材

・カスタマーサクセスマネージャー
オンボーディングを行い活用度を上げ、顧客と関係性を図ります。

・サポートマネージャー
テクニカルな質問に対応し顧客の課題解決をサポートします。

・教育マネージャー・トレーニングマネージャー
顧客数が増えるにつれプロダクトの複雑性が増し専門知識が益々必要になります。プロダクトを活用するための学習コンテンツを作る必要が出てきます。顧客が自己成長できるようにWebセミナー、学習教材、トレーニング等のコンテンツを作成し、コンテンツクリエイターになる必要があります。

・オペレーションマネージャー
オペレーション最適化の為にテクノロジーを推進しましょう。カスタマーヘルススコアを計測し、データ分析を行いましょう。データアナリストでなければなりません。

・アップセル/更新マネージャー(営業ファンクション)
顧客を十分にハンドリングできサポートできるカスタマーサクセスチームがあるならば、営業的側面は別チームに独立化させるべきです。この理由は顧客がカスタマーサクセスを信頼できるパートナーだとみなしてもらう必要があるからです。CSMが絶えず物を売りつけようとする人だと認識されるのは避けるべきです。

・プロフェッショナルサービス
オプションサービスとして提供するサービス。エンタープライズ向けのSaaSで行う事が多いでしょう。CSMのミニバージョンという位置づけで、オンボーディング、リレーションシップマネジメント、トレーニング、サポートなどの専門分野を持ちます。

――他チーム連携――

セールスチーム

・経営は営業よりカスタマーサクセスを見よ
カスタマーサクセスは収益センターであり、コストセンターではありません。歴史的にCEOは既存顧客の継続率/アップセルより新規顧客獲得数を優先してしまいがちです。しかしこれは全くの無駄です。ROIの観点から既存顧客側に投資した方が良いことはデータでも明らかになっています。

・契約更新・アップセルはセールスの役割ではない
契約更新とアップセルはCSMとは別のファンクションに担ってもらう必要があります。しかしそれはセールスの役割ではありません。契約更新・アップセルはあくまでカスタマーサクセスのファンクションの一部に位置づけなければなりません。

・誤った顧客に契約させるな
売り上げの最大化の為に必要なことは「正しい顧客に長く使ってもらうこと」です。リスクの高い顧客を獲得しないように、定期的にセールスと連携しレビューを行う必要があります。

カスタマーサポートチーム

CSMは特定のアカウントの全ての行動を知る必要があります。サポートチームと情報の連携をし顧客状態を把握し、適切な成長支援を行いましょう。

プロダクトチーム

・プロダクト開発にはカスタマーサクセスを組み込め
カスタマーサクセスチームは顧客に密に接しています。カスタマーサクセスチームを巻き込みながらプロダクトのロードマップを作りましょう。最低限CSMはプロダクト計画MTGに出席する必要があります。プロダクトの開発チケットの意思決定には必ずCSMを内包させるべきです。

・セールスの機能要望には慎重になれ
セールスチームは大型案件獲得のために機能要望を伝える事を躊躇しません。しかしながらその機能が使われず無駄に終わることは多々あります。そのように追加開発されてしまった無駄な機能はコストを奪い取られただけでなく、他の機能に影響を及ぼしプロダクト自体を破損させます。

マーケティングチーム

・成功事例を連携せよ
マーケティングチームにとってCSMは顧客の成功ストーリーを把握している唯一のポジションです。このような成功事例を定期的に正式な会議等のプロセスによって伝達しましょう。最大の収益を生むのは、最良の顧客を呼び込むことです。CSMの成功事例の連携により、最適な顧客にナーチャリングすることができます。

・マーケに口出しせよ
誤った顧客を呼び込んではなりません。それを避けるために、できればカスタマーサクセスの役員にマーケティングキャンペーンの拒否権を持たせるべきです。誤った顧客を獲得しないためにもマーケティングチームの取り組みに「NO!」といえる状態を作ることが理想です。

――ツールについて――

従来のCRMツールは点の情報です。ある時点での顧客を知ることには役立ちますが十分ではありません。CSMに特化されたツールを採用すべきです。totangoはそこにマッチしたサービスです。

拡大期のカスタマーサクセス組織

・ファンクションを分割せよ
拡大期では様々な領域へ価値提供を行っていく必要があります。そのためにも組織を必要な機能ごとに分割する必要があります。

・ROI最大化の為にオペレーションに取り組め
組織が急速に成長するにつれて、最高経営責任者(CEO)があなたにコスト削減を促す可能性が高くなります。ROIを最大化させる為にもレポート、カスタマーコミュニケーションとマーケティング、商取引業務などの業務の自動化を進めましょう。そのためには強力なカスタマーオペレーションチームが不可欠です。

・カスタマーサクセスマニュフェスト
CSMのメンバーが増加すると、全員が個人主義に走り独自のサポートを始めてしまいます。全員が同じ方向を向いて顧客支援を行うために、カスタマーサクセスマニュフェストを作ることが有効です。

――データ――

契約更新・アップセル・新規契約にかかるコスト

新規顧客獲得コストよりも既存顧客のアップセルコストの方が低くなります。また既存顧客の契約更新コストはさらに低くなります。

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カスタマーリテンションコスト

契約更新の為にかかるコストの内訳です。拡大期ではコスト効率性を考える必要が出てきます。

・人件費:テクサポ、CSM、トレーニング、営業ファンクション、など
・コンテンツ制作コスト:スライド、インフォグラフィック、内製、外注コスト
・トレーニングイベント:顧客訓練のための開催地、食事

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※1:Farm Don't Huntは低ACV SaaS向けの内容ではないと思います。ReproのようなビジネスモデルのCSにお勧めする場合を前提としています。

※2:自分なりの解釈で意訳してまとめている部分や翻訳ミスがあると思います。買って読んでみてください。

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