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考えるヒント25 丸刈りと空気


 2023年も残り3か月、1年を総括するにはまだ早いかもしれないですが、やはり、今年は野球の年ではないでしょうか。3月にはWBCで日本が優勝、メジャーリーグの大谷の活躍、そして、8月の甲子園では慶應高校が107年ぶり優勝しました。そのなかで、やや今更感はありますが、慶應高校は、髪型自由、これに乗っかって、脱丸刈りの流れみたいな報道もありました。
 
 さて、この丸刈り、自分にも見覚えがあるトピックで、今から、30年ほど前の故郷の静岡市ではどの部活に所属する、しないに関係なく、男子は全員丸刈りが必須でした。当時、小学生5年生くらいの自分はこれに恐怖を覚え、必死になって勉強して、静岡の私立中学に入学しました、今でも髪は短いですが、丸刈りは一度もないです笑
 
 自分は丸刈りイヤですが、人によっては丸刈りが好きな人もいますよね、高校球児でも、みんな丸刈りにしているので、丸刈りの方が一体感がある、丸刈りの方が髪の手入れがラク、といったところでしょうか。一概に丸刈りがダメとは言えなさそうです。
 
 じゃあ、この丸刈りの話、何が論点かといえば、ダイバーシティの話ではないでしょうか。髪型であれば丸刈りも長髪も、あるいは、ジェンダー、人種、宗教など、こうした違い・多様性に価値を見出して、受け入れる、これがダイバーシティの目指すところと言えそうです。
 
 やや一般的な話ではありますが、日本人はこうした多様性を受け入れるのはあまり得意ではないところがあると思います、この文脈だと、具体的には、「高校球児は丸刈りだ」、「管理職は男性だ」というステレオタイプにとらわれるといったところでしょうか。
 
 こうした多様性を受け入れない文化は、今に限ったことではなく、昔からあったようでして、もうお亡くなりになりましたが、エッセイストの山本七平さんは「空気の研究」という本で、日本人の多くの決断は、論理的な判断材料ではなく、その場の「空気」にあると指摘しています、たとえば、昭和20年、太平洋戦争で日本の敗色が濃厚のなか、連合艦隊は戦艦大和の突撃を命令します、これはどんなデータから判断しても、勝ち目のない戦いでしたが、突撃しなくてはいけないというその場の「空気」だったと指摘しています。
 
 こうした科学的根拠をも覆す妖怪よりも怪奇な「空気」からどう逃れるか、その解法として「水を差す」ことを指摘しています。「水を差す」は、日常生活でもたまに使いますよね、何かしらの進行中のことに対して、横槍を入れる、邪魔をすることです。横槍を入れる、邪魔をするというとネガティブな印象がありますが、むしろ、支配されていた空気を変える、今風にいえば、積極的に空気読めない(KY)になれということでしょうか。というわけで、慶應高校の優勝は「甲子園球児は丸刈りだ」という空気に水を差した快挙でもあり、我々も妖怪よりも怪奇な「空気」に水を差していく必要があるのではないでしょうか。
 


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