髙杉龍斗

🥛Takasugi Ryuto。単語〜文章を載せます。

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最近の記事

自分から記述へ。この人化。

 一人称を「この人」にして、自分から記述へと変化させる。この人化させていく。  この人はお粥を食べている。お粥に醤油をかけると卵かけご飯と同じ味がする。この人は普段から物をあまり噛まずに食べるから、そういうことがよくある。  この人は天気を確認するのに、窓よりアプリを確かめる。だから今日の小雨を知らない。  自分が記述になっていくとまず自分の背中が見えて、右上に番組名のテロップが入る。自分自身と一拍置かれると、霜焼けあがりの足指も蒸れた股間もパラフィン紙に包まれたように感じる

    • 追悼とか、ai画像生成とか、ちょっと、今日考えていた、こと。

      自分の〉彼岸花の赤いとこ全部くらい散らばった考え《を、{雑なポニーテール”程度にまとめるために書いているので、読みづらい。しかし、記録として、外に置いておいていいものなんじゃないかと思った。自宅の外構沿いの公道に置かれた、猫よけのペットボトル。そのくらいの横暴という認識。 ちょっと前に鳥山明が亡くなって、世界中で哀悼の意を示す様々なアクションが起きた/ている。 それらを見て、一人の人間の想像力が及ぼす影響に感動したけれど、鳥山明及びその作品群にあまり思い入れがないので、S

      • あなたはあなただけの終わり?

         ある新聞のコラムには、鍵を開けたもののみが挑戦できるクイズがある。  Q.「飲み口のないマグカップにコーヒーが入っている。コーヒーはどのようにして注がれたのだろう?」  注いだ後に溶接して仕舞えば簡単な話である。  A.「コーヒーはマグカップの嘔吐である。」  マグカップの底から嗚咽が聞こえる。上を向いているので次の瞬間にはうがいの音と変わらなくなり最後にマグカップは窒息死してしまう。マグカップが大体白いのはそのためである。  回転式集合住宅は部屋ごとに外壁を蛇腹の金属パイ

        • W

           頭に何かぶつかった気がして空を見上げた時、夜がテーブルクロスのように剥ぎ取られて青空に変わった。青空を滑った夜が、空の形を円錐形だと教えてくれた。空は丁度俺のいるあたりを頂点にしているようだ。捨てられた夜が遠い青空の中心から、布のようにヒラヒラと俺の方に舞い落ちてくる。遠くにあるから小さく見えると思った夜は、落ちるにつれて存在感を増すことはなく、小さいまま俺の手のひらに収まった。現実が抜け落ちてしまったかのような黒。手触りは滑らかな砂のようでひんやりしていて、静かな呼吸でも

        自分から記述へ。この人化。

          魚になりたい採血男と可能世界の犬女①

           俺が今眠ってしまえば、釣竿と共に海に落ちてきっと魚に変わってしまうだろう。朝の寒さに備えて着込んだ服から脱出できず、服の中で窒息死してしまうのは勿体無いので、偶然袖口から脱出できたとしよう。俺は小魚になるに違いない。ただ、内臓があからさまに透けているようなやつは嫌で、青光りする銀の肌を持った、魚の体面は保ったやつがいい。海面に俺の着ていた服が虚しく浮かび、俺は音すら忘れるほど穏やかな海で海難事故にあった情けない男として町の笑い者になる。しかしそんな噂も海の中までは届かない。

          魚になりたい採血男と可能世界の犬女①

          見知らぬ男。

           こちらを覗き込むようにじっと見つめる男は、前歯を隠すように大きく笑い、犬歯から奥歯あたりは露出するように顔全体は吊り上がっている。一才音を立てないのでしばらく気づかなかったが、いることに気づいてみると、朝顔の種子のような目を細かくひくつかせてそこから体液の粘つく音がする。時計の秒針を思い出す。脂に塗れた肌は石油のような血によって浅黒くなり、40代後半から50代前半ぐらいの皺を波立たせている。黄ばんだ白無地のタンクトップと下ろしたてに見える白いブリーフからは、彼本来の形を浮腫

          見知らぬ男。

          指の失禁的1,297文字

           1日の終わり、空は黒く太陽が見当たらないので当然夜。五感からログアウト寸前に、外から雨らしき音が聞こえ始めた。世界が雨らしき音だけの暗闇に、だんだん細長く伸びた水のイメージが頭に浮かび上がり、それに釣られて体が姿を現し始める。あまりに頼りない雨音に、本当に雨が降っているのか確かめたくなったが、窓はカーテンに遮られている。布団から少し距離があるため立ち上がって開ける必要がある。そんな事のために柔らかくなった布団と同化した体と意識を外気に晒して固さを取り戻す気にはならない。手元

          指の失禁的1,297文字

          放浪

           何も決めていない、方向性もない、どうなるか全くわからない。誰なのか、どこにいるのか、エッセイなのか小説なのか、詩か暗号か、何もわからない。  生まれた頃から視界が反転していたら、言葉は変わっていた。浮かぶよりも落ちるほうが絶望的なのはきっと地面が下にあるからだと思う。重力は軽さをもって表現されたかもしれない。物は軽いほうがいい。落ちていくよりも浮かんでいくほうが楽しいのは、視界が反転していないからかもしれない。俺はいつか誰かを風船で撲殺したい。グレーチングを踏み抜いてマクド

          明日は我が身

           興味本位というか、魔がさしたというか、今となっては全く動機が不明だが、私は今日、4歳を迎えたばかりの息子を締め殺してしまった。  具体的にいうと最初はタオルで後ろから、私の胸に引き付ける様な形で引っ張ったのだが、私の腕の可動域の問題だろうか、うまく締まっている感じがしなかったので、体勢を改め、床に押し倒して両手で、細く、瑞々しい喉を押しつぶす様に締め殺した。  床に仰向けに倒れる息子の顔は、少し前までは梅干しの様に赤黒く染まっていたのに今や見る影もなく青白く変色している。

          明日は我が身

          紫だちたる雲

           明日春がきたら君に会いに行こうという書き出しで文章を始めることが、3月のお茶代サークル(毎月発表される課題に沿って文章を書くとお茶代がもらえるらしい、快いサークル)のジッケン課題であるが、私は具体的に何を確認すれば春が来たと言えるのか分からず、どうも書き出せずにいた。  春と聞いて私が真っ先に思い浮かべるのは4月。  つまり春が来るとは4月1日になることかと思ったが、4月1日はエイプリルフールという役をすでに負っており、そこに春の訪れを被せることは駆け出しの春には些か重荷に

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          紫だちたる雲

          音節な人生

           全ては定められた流れの下にあると知った時に、実際のところ人はどうするのだろうか。俺はこれから、10年以上連絡をとっていなかった親友と再会する。そしてちょっと、まぁ、とりあえず殺してみるのだ。  1.
 床も机も関係なしに積み上げられた研究資料の数々、青白く発光する蛍光灯、全体的に灰色を基調とした、いかにも研究室といった部屋で俺はポロシャツにジーパンといったラフな格好で天井のシミから性器を連想して暇を潰していた。 
 なぜ暇かというとやることがないからで、なぜやることがない

          音節な人生