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レビュー「わたしの好きな曲10作品」 第九回  君はロックを聴かない

「君はロックを聴かない」

音楽を聴くことに対してのこだわりが強い上にレコードを聴いていた世代、加えて片想いばかりしていた立場からするとあいみょんの「君はロックを聴かない」に狂喜しないはずがありません。しかも同性同世代ではなく若い異性、そんな立場から歌われているということ、つまり、ギャップの後押しがこの曲の例外を際立たせています。今となっては笑みも交わる懐かしい失恋の数々ですが、あの頃は惨めと憐れさに溜め息ばかりをついていました。あんな歌やこんな歌で乗り越えてきたと歌われるこの曲てすが、わたしの代表例はエレファントカシマシの「珍奇男」てす。この曲は恋愛の歌ではありませんが、それも含めて何から何までダメなわたしを美化するには充分でした。今だってそうかもしれませんが、特に誇れるものがなかった二十歳前後のわたしの異性へのアピール素材はエレファントカシマシや「珍奇男」が好きになれる役に立たない感受性でした。周囲の同性はそれなりに異性を引き寄せる為に衣服で着飾る努力はしていたはずで、興味の対象が自動車だったり、レジャーだったり、ある種、音楽鑑賞優先の立場からすると異性に興味を持たれないのは当然だったのかもしれません。そして、売れないエレファントカシマシ、それは一向に何かを得られる気配すらない自身と重ね合わせていたことも恋を乗り越える事柄でもありました。因みにこの「珍奇男」は89年の曲でシングル曲でもないのでドーナツ盤やアナログLPではなくCDで昔も今も聴いています。

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