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映画『天使のくれた時間』に登場するフランシス・ベーコンらしき絵画についての考察

『天使のくれた時間』は2000年にブレット・ラトナー監督によって、映画『素晴らしき哉、人生!』をモチーフに制作されたアメリカ映画であり、ニコラス・ケイジ演じるウォール街で成功した主人公が、ある日目覚めると、かつての恋人と結婚していた場合の人生を生きることになるというストーリーです。

主人公は大手金融会社社長であり、そのオフィスと自宅には画家フランシス・ベーコンらしき絵画が飾られています。

本記事では、この2点の絵画が本物なのかどうか検証してみたいと思います。

オフィス

まずは会社オフィスにあるこちらの絵画。

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肌の露出した2名の人物像。

遠目からは、どうやら1973年の絵画に見えます。

『FIGURES IN MOVEMENT』 1973

スクリーンショット 2021-06-15 043428

© The Estate of Francis Bacon. All rights reserved.

しかし、左側の人物の背後にある黒い部分の両脇にあるはずの縁が、映画の絵画には見当たりません。

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他にも、足場部分の色が緑がかっていたり、陰影の青みが強すぎたりと様々な差異が見受けられます。

よって、こちらは偽物です。

自宅

次に、マンション最上階に位置する自宅廊下に配置されたこちらの絵画。

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モロッコの都市タンジールの風景を描いた、1963年の絵画に見えます。

『LANDSCAPE NEAR MALABATA, TANGIER』1963

スクリーンショット 2021-06-15 043411

© The Estate of Francis Bacon. All rights reserved.

映画の構図が正面ではなく少々分かりにくいのですが、赤で囲っている絵画中央左部分にある線に注目してください。

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本物の方は草地から虚空へと線がはみ出ていますが、映画の絵画は範囲内に留まっています。

他にも、中央下部の青緑の楕円とその下の線の形にも大きな違いが見受けられます。

よって、こちらも偽物です。

終わりに

主人公の財力や美術への関心具合を示したり、画面内の装飾効果として役立ってはいたものの、流石に本物のベーコン絵画を利用することはできなかったようです。

このように映画内には様々な美術品がさりげなく登場したりするため、そこに注目して掘り下げていくのも面白いかもしれません。

(クリストファー・ノーラン監督の『インセプション』にもベーコンらしき絵画が登場していた記憶があります。)

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