米国株マーケット考察 2020.12.16

マーケットサマリー

米国株式相場は反発。ダウ工業株30種平均は前日終値比337.76ドル高の3万0199.31ドルで終了。ナスダック総合指数は155.02ポイント高の1万2595.06で取引を終え、終値の史上最高値を5営業日ぶりに更新しました。ニューヨーク証券取引所の出来高は前日比1億0504万株減の9億6421万株でした。

昨日の相場の牽引役は、アップルでした。携帯端末のアップルは買い替え需要で、5G対応の最新アイフォーン12の2021年上期の生産計画を前年同期比30%増とする方針を取引企業に伝えたたとの報道が好感されました。

また、製薬会社ファイザーに続き、バイオ、モデルナ開発の新型コロナウイルスワクチンの安全性や有効性が食品医薬品局(FDA)により確認され緊急使用が今週中に許可されるとの期待や、与野党の指導者が予算に加え追加経済対策を巡り、与野党の合意が得られそうな7480億ドル分と、意見が対立する1600億ドル分に分けて協議することが提案され、議会での協議が前進することへの期待感に相場は支えられました。

とは言え、足元の感染拡大は依然として収束の気配を見せず、米国における累計死者数は30万人を超えており、年末にかけて部分的な封鎖措置の可能性も再浮上する中で、足元の米景気への不安は根強いです。一方、ワクチン接種が開始されていることでマイナスのインパクトが軽減されつつあるのも事実です。

今日からFOMC(米連邦公開市場委員会)が始まり、株式市場も注目しています。新たなフォワードガイダンスや保有国債の年限の長期ゾーンへの傾斜などが話題となっています。今回の会合でFRBがそれらを打ち出してくる可能性は低いですが、足元の感染拡大が続く中で、緩和姿勢の継続を強調してくると思われます。明日の午後に結果が発表される予定です。

株式相場とは関係ないですが、欧州委員会は、GAFAの影響力抑制や違法コンテンツ排除を一層促すためのデジタル規制2法案を発表しました。

用語解説


-フォワードガイダンスー前もって将来における金融政策の方針を中央銀行が表明することです。 フォワードガイダンスは、ゼロ近くまで金利が下がり、伝統的な金融政策だけでは対処することができないと判断されるほどの景気が後退する状態や金融危機に陥った場合などに、中央銀行によって行われる非伝統的な金融政策の中のひとつです。

声明等を通じて政策金利の据え置き期間や政策変更の条件などを明言し、市場参加者の予想や期待に働きかけることで、金融政策効果の浸透を目指します。

1990年代にゼロ金利政策の下、日本銀行が行った「時間軸政策」が先駆けとなり、米連邦準備理事会(FRB)や英イングランド銀行など、各国の中央銀行で採用されています。

-FOMCーFederal Open Market Committee(連邦公開市場委員会)の略で、アメリカの金融政策を決定する会合のことです。日本では、「日銀金融政策決定会合」で金融政策を決定していますが、それに当たるものがFOMCです。

FOMCは年に8回開催され、現在の景況判断と政策金利(FF金利)の上げ下げなどの方針が発表されます。その結果が市場の予想とは違った場合には、株式市場や為替レートが大きく変動することがあり、世界の金融マーケットにも大きな影響を及ぼします。

FOMCでは政策金利の利上げや利下げの判断をしています。その発表は世界のマーケットに与える影響が大きいのですが、市場関係者の予想との乖離があるかないかで、大きく違ってきます。例えば市場が0.1%の利下げを予想しているときに0.2%の利下げが行われると、予想以上の結果ということで株価に影響が出たりするのです。

-デジタル規制2法案ー巨大IT企業の影響力抑制や違法コンテンツ排除を一層促すために重大な違反には年間売上高の最大10%の罰金や域内での業務停止などの厳しい制裁を想定。法案は巨大ITに対し(1)他企業買収時の欧州委への事前通知(2)当局やライバル企業とも特定データ共有(3)広告への個人情報使用などの情報開示――を義務化。自社製品に自社アプリを載せ、他社製を使わせない行為を違法化し、テロ関係など違法コンテンツへの早急な対処を求めています。

「デジタル市場法」は、規則に違反した「ゲートキーパー(門番)」と呼ばれる大手プラットフォームに対して、世界全体の年間売上高の最大10%の罰金のほか、最終手段として分割を命じることを盛り込んだものです。

また、ゲートキーパーの企業が競合企業やユーザー向けに公正な競争の場を提供するよう、違反に当たる行為などを明示したほか、ライバル企業をつぶすための買収を阻止するため、買収提案に関する報告も義務付けました。

「デジタルサービス法」は、利用者が4500万人を超える巨大オンラインプラットフォームを対象とし、違法コンテンツ対策のほか、基本的権利を侵害するサービスの違法利用、プラットフォームを意図的に操作して選挙や公衆衛生に影響を与える行為などの対策強化を義務付けています。

また、プラットフォーム上の政治広告の詳細や、情報の表示やランク付けにアルゴリズムが使用するデータを開示する必要がある。

但し、これらの法案はEU各国と欧州議員の承認を得る必要があり、最終的な草案がまとまるのは数カ月から数年先になるとみられます。


立沢 賢一(たつざわ けんいち)とは

元HSBC証券社長。
会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資戦略、情報リテラシーの向上に貢献します。
・立沢賢一 世界の教養チャンネル
http://www.youtube.com/c/TatsuzawaKenichi

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