米国株式市場はミックス-マーケット考察-2020.6.11

ダウ平均は続落するものの、ナスダック総合指数は最高値更新。S&P500も年初のレベルを回復しましたが、一方で流石に達成感もあり、利食いが先行していました。

FRBは連邦公開市場委員会(FOMC)で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気悪化で、国内総生産(GDP)は今年マイナス6.5%に落ち込むと予測し、失業率は年末時点で9.3%になるとの見通しを示し、市場の予想通りゼロ金利政策と量的緩和の据え置き政策を決定しました。その上で、少なくとも2022年まで翌日物金利をゼロ近辺に維持するという異例の経済支援を継続すると改めて表明しました。

しかし、記者会見でパウエルFRB議長が景気の先行き不透明感を強調すると失速し、エネルギー株や金融株などを中心に売りを呼び込みました。

昨日はボーイング社の株価が6.2%安とダウ平均全体の下げを主導しましたが、ダウ構成主要株であるボーイング社株が1日で26%上昇したり6%以上下落したりと、平常時ならそれほどの価格変動幅がない安定銘柄がこれ程の動きを呈しているのはやはり相場が落ち着けていない象徴となっています。

一方、今後も在宅勤務などの増加でインターネット関連サービスの需要が高まるとの見方が広がり、テック株の好調を背景にナスダック総合指数は最高値更新という株式市場全体から見ますとマチマチな動きを1日でした。

これを解釈しますと投資資金がバリュー株や景気循環株から成長株にシフトしているということです。過去数週間バリュー株や景気循環株に一時的に資金が流入しましたが、それはあくまで旅行者的に一時的に滞在していただけで、投資家の多くは成長株を狙った動きをするということを示唆しているのです。

引き続き低調な実体経済と好調な金融経済という乖離が特徴の歪んだ現象の中、楽観主義者は現代経済のパラダイムシフトを語り始めてますし、経済活動は回復基調にあると確信してます。一方で、悲観主義者はこの事態が一時的な調整と認識してます。実際、経済活動再開を急いだ米国12州以上で新型コロナウイルス感染者数は前週より早いペースで増加してます。

恐らく、年末までには両者の勝敗は明らかになるのでしょうが、今のところ決定打が不足してますので、ナスダック総合指数の一部株式を除いて株式市場全体では調整局面に入っていると言えます。

立沢 賢一(たつざわ けんいち)

元HSBC証券社長、京都橘大学客員教授。会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、ゴルフティーチングプロ、書道家、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資家サロンで優秀な投資家を多数育成している。

投資家サロン
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