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株価暴落だけじゃない。米国経済の減速の真の恐ろしさ

世の中的には株の暴落やらドル売りやらで兎角目線が金融市場に行きがちです。

でも私が最も心配しているのは米国経済の減速です。

どのように減速するかですが、石油価格の下落がきっかけになる可能性を危惧してます。
現在、米国は世界最大の産油国です。これは2013年に始まったシェール革命がきっかけとなり、
米国は石油の純輸入国から純輸出国へと転換することに成功しました。米国は2018年、シェールオイルの増産により原油生産量で45年ぶりに世界首位となり、米国の輸出が輸入を上回るのは70年ぶりです。

ジョージブッシュジュニアが大統領に就任した際、彼の手元に届いたレポートには、2016年までに
米国に埋蔵されている石油は枯渇すると書かれてありました。そこで彼は中東戦略を積極的に打ち出し、
かつての仲間であったイラクを敵国化し、イラクの石油利権を横取りしようとイラク戦争を国際法に違反してまで
強行開戦してしまった程です。

2013年以降米国はシェールオイルを抽出する技術の革新により次第に低コストで石油を産出することができるようになりました。米国の外交戦略の変化を見ると如何に石油戦略のために中東戦略が重要視されていたのかよく分かります。時間の経過と共に現在ではトランプ大統領は中東から米軍を撤退させる意向を表明する程、米国にとっての中東の重要性は低下したのです。つまり、米国が石油の純輸出国となることで中東やロシアなどへのエネルギー依存度が減り、地政学的なバランスが大きく変化したのです。

さて、問題はシェールオイルのコストです。技術革新により2年ほど前には1バレル当たり45-50ドルでしたが今は40ドルくらいまで下がってきているとも言えます。それでもシェールオイルはOPECの石油よりも値段は高くなります。然し乍ら、輸送費や手間を考えると多少値段が高くても米国産の石油需要は充分あるのです。米国はカナダ、韓国、中国、英国、オランダ、インド、イタリア、台湾などに輸出するようになりました。

ここで今回何故原油価格が暴落したか?ですが、一般的にはコロナウイルスにより世界経済の成長が減速し、原油需要が低下するからと言われていますが、果たしてそれだけが理由なのでしょうか?

3/9には米原油先物市場は1991年の湾岸戦争時以来の下げ幅となりました。主要産油国のサウジアラビアとロシアが、協調減産協議の決裂を受けて増産に転じると伝えられたことがきっかけです。米国を世界一の産油国に押し上げたシェールオイル業界が真の標的との見方があります。今や世界最大の産油国であり世界最大の天然ガス産出国でもある米国をどうしても許せないのがロシアです。2014年クリミア侵攻以降米国はロシアに対して経済制裁を課していることに対しての苛立ちは隠し切れません。

OPEC諸国及びロシアは過去3年余り協調減産を実施し、原油価格の維持に努めてきました。しかし、その枠組みの外にいる米国のシェール業界が増産を続けた結果、OPEC諸国及びロシアは彼らのシェアを米国に奪われただけとの不満が噴出してきてました。シェールオイルは採掘コストが高く、サウジやロシアとの価格戦争になれば勝ち目がなくなります。米シェール業界には財務基盤の弱い中小企業が多々あります。2013年からの一時の採掘ブームが去り、金融機関からの支援も得られにくい中、それら中小企業が破綻してしまうなどシェール業界が大きなダメージを受けてしまう可能性が出てきました。それにより、企業活動に翳りを帯びてしまうと、米国経済にとってとても不味い状況になります。

更に何がピンチかと申しますと、米国GDPの7割あまりを占めている個人消費の翳りです。現在、米国でも外出自粛やイベントや展示会なども中止を余儀なくされております。また、個人資産は金融市場の暴落により含み益がなくなるばかりか元本毀損してしまっております。それにより、個人が益々消費しなくなり消費性向が低下してしまうことです。

これからの世界経済の行方を占う上で、株式市場などの金融市場の暴落、石油価格の暴落、個人消費の低下の三点セットが今後の米国経済の力を削いで行ってしまう可能性があることを頭の隅に置いておいた方が良いかも知れません。

立沢 賢一

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