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実店舗なしで販売スタートしたZ世代に人気の中国発フレグランスブランド「观夏」(to summer グアンシャー)

今回は中国のZ世代に人気なフレグランスブランド「观夏」(to summer)の概要と選ばれている理由をご紹介します。


コンセプト


观夏 = 夏を観る

「观夏」(to summer グアンシャー)を直訳すると「夏を観る」という意味で、元々創業者3人が2017年に蘇州の庭園で散歩していた際に中国の八棱花窗(八面華窓)を通して夏の季節を眺めた際に思い付いたと言われている。また、夏という季節は植物や生き物が生き生きと過ごす季節であることも3人にとって重要だったようだ。
「观夏」は中国人の記憶に潜む東洋の風情、情緒を呼び起こす目的で東洋に馴染みがある植物を中心に据えたプロダクトを開発し、ブランドをスタートさせた。
経済豊かになった中国が忘れかけている東洋美、哲学、素朴さなどの要素が根幹にあり、若い世代の中に自国アイデンティティを新たに創造する温故知新の側面も担っている。

ブランドスローガン

中国語:你的东方植物调(あなたの東洋エッセンスを)
英語:Your Eastern Scent

ブランドについて

曜日別限定販売の人気商品 フォーシーズンフレグランス

「观夏」(to summer グアンシャー)の商品はエッセンシャルオイル、フレグランス、アロマキャンドル、ボディソープやハンドクリームが中心。
フランスで170年以上フレグランスを生産しているサプライヤーと協力して商品開発を行い、商品一つ一つに東洋の物語が存在している。
またスタッフも80%以上が過去にアーティストやデザイナーなど様々なクリエイティブ分野で活躍してきた背景を持っており、ブランドフォントも宋字体を使うことで東洋美を強調し、プロダクトブランディングを重視。

人気商品 昆仑煮雪(CEDARWOOD)の商品説明

エッセンシャルオイルは木曜日夜八時に限定販売され、商品によっては生産量が元々少なく、数量限定のみの販売になっており、欲しい商品が常に手に入るわけではない。
私も上海の体験型店舗を訪問した際、上海以外の地域から商品を求めて来店している男性客が友達に電話でどの商品を買って欲しいのか確認取っていた。

上海の徐汇区にある体験型店舗の様子

店舗状況

2019年にスタートした際、フレグランスブランドにも関わらず、実店舗を持たずに開始。販売はWechatのミニプログラムとREDのみという異例な販売方法。
無名なブランドは一般的に認知向上とトラフィック数を上げるために実店舗とEC店舗両方を構え、オンラインプロモーションから実店舗へ誘導することを重視するが、「观夏」(to summer グアンシャー)は販売チャネル2つに限定。しかも販売当日に数千個の商品売ってしまう…。
2020年9月に北京で初めてのポップアップストアを開店し、その後深圳、上海、成都、杭州、南京で少しずつ体験型店舗をオープンしていく。

上海実店舗の外観

売上規模

情報が少ないが、2021年の段階で「观夏」(to summer グアンシャー)の年間売り上げは1.43億元(約28億円)という情報が出ており、2023年はそれよりも高いと予想される。

ハンドケアとボディソープ商品

会社情報

会社名:北京广宜科技有限公司
ブランド名:观夏(to summer グアンシャー)
化粧品EC販売の副社長刘惠璞、雑誌媒体で仕事していた沈黎、デザイナーKhoon の3人によって創業された。
本社所在地:北京市朝阳区工人体育场北路8号院1号楼6层01-701
資本金:732万元(約1億4千万円)※レート:1元=20円

「观夏」(to summerグアンシャー)の成功要因

最初はEC販売のみでスタートし、ブランド立ち上げからわずか4年で売上規模28億円、新商品は掲載されてから3秒で売り切れてしまうなど数々の異例を作った「观夏」(to summer グアンシャー)はなぜ成功したのか。

①中国のフレグランス市場のポテンシャルの高さ
世界のフレグランス売り上げ規模は7.7兆円で中国はそのうちの2.5%の割合でしかないと言われており、伸び代が充分ある市場規模である現状で、2025年までには売上規模300億元(6000億円)と期待されている。

②コロナウィルスで生活環境が急変し、匂いに対して敏感になったことで新たなニーズに繋がった
2019年にコロナウィルスが蔓延してから、外出が難しくなり、外出してもマスクが必須になったことで口紅の需要が減少。
今まで口紅を通して自己表現してきた機会が減り、中国消費者は別の表現手段である香水に新たなニーズを求める。
またマスク必須の生活環境は必然的に自分の身体の匂いに敏感になったことも「观夏」(to summer グアンシャー)に注目される一つの要因である。

③東洋ティストを中心にプロダクトデザイン
東洋の植物である松、竹、蓮、梅、桃、月桂樹などの東洋固有のティストを中心に据え、さらに東洋哲学、漢詩、東洋美と若い世代に人気なモダンでシンプルデザインを組み合わせたプロダクトと店舗空間が文化アイディンティティに飢えたZ世代のニーズを捉え、大きく成長。

終わりに

「观夏」(to summer グアンシャー)の創業者たちがこのブランドを立ち上げたいと思ったきっかけはルネッサンス時期にある中国で中国文化を体現したフレグランスブランドを作りたいという想いだった。
近年欧米のラグジュアリーブランドが常に売上の上位を占める中国だが、心の底ではこの流れから脱却したい、ひいては中国の良き伝統を再発見したいという想いが根底にあるように思う。
それは今の中国国民の想いと重なる。

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