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マリモナカの詩

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マリモナカの投稿した自作詩です。
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雑踏

二階の喫茶店で

ジンジャーティーを飲みながら

人々の行きかう大通りを見下ろす

右へ左へ

種々様々な横顔が通り過ぎていく

あの雑踏に入っていきたいと

郷愁に似た何かを抱くのは

都会に慣れた証拠だろうか

段ボール箱

段ボール箱にものを一つしまうたび

部屋から色が消えていく

ゴミ袋にガラクタを一つ捨てるたび

過ごした日々も消えていく

端の折れた雑誌

何かを入れていたガラス瓶

3ページだけ書いたノート

白い壁紙は、少しくすんだだろうか?

最初からこんな色だったような気もする

思い出を茶色の段ボール箱に押し込んで

窮屈な布団で寝返りを打つ

公園の遭遇

公園の遭遇

今度久しぶりに遊ぶ友達を

驚かせようと

休日の公園でこっそりとジャグリングの芸を練習する

何度も玉を投げ、落としては拾い、

玉を投げ、落としては拾い、

この分なら会うまでには一芸になるだろうと思った矢先に

向こうから歩いてきた友と目が遭う

公園の人々

公園の人々

始めたばかりのジャグリングの練習をしようと

思い立って

日曜日の公園に赴く

水彩画を描く老人、ダンスの練習をする若者たち

追いかけっこで遊ぶ子供の姿

そして、スマホを片手に歩く人々

その中に紛れ

四色のボールを三つ持ち

二つの手で投げ上げて一つの滝を作る

ボールを一つ取り損ねて落とした時、

スマホを見ながら歩いているカップルが気付いて

拾ってくれた

時計の無い公園の時間の流

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ログアウト

ログアウト

ボタンを一つクリックすれば

消える、消える、世界が消える

画面の中ならどこへでも

誰とでも繋がれるのに

その糸はあっけないほど簡単に断ち切れる

独り、独り、世界に一人

部屋に一人ぼっちで椅子に座る

自分の姿が画面に映る

このまま二度とアクセスしなければ

人間なんて簡単に消えられる

そう思いながらまた今日も

ログイン画面にキーを打つ

すっかり指に染み込んだ

メールアドレスと

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青空のショー

青空のショー

公園を歩いていると

大学生たちがジャグリングの練習をしていた。

ボール、クラブに、ディアボロ、シガーボックス。

いくつもの道具が軽やかに宙を舞い、

時に手から滑り落ちて、地面に空しく音を響かせる。

休憩するふりをしてベンチに座り、

いつまでもいつまでも眺めていた。

青空の下で、入場料の無いショーを。

深夜の感慨

深夜の感慨

眠れない夜

はやるばかりの心

「何かしなければ」と思うのに

するべきことなど見つからぬまま

時刻表示はうつろう

ぼんやりと淡いスマートフォンの光が

顔を照らした

眠る前の自分と

起きたあとの自分が

眠りによって断ち切られるのが恐ろしい

どうして信じられるだろう?

眠り、起きたあとも自分が自分のままだなんて
#詩 #ポエム

(ここより下に文章はありません)

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積み木遊び

積み木遊び

幼いときから暇なとき

ふと手近にあるものを積み上げる癖があった

小銭を一枚ずつ積んで塔を作る

トランプを慎重に組んでピラミッドを作る

マッチ棒を置いていきやぐらを作る

テーブルの上で高くなっていくオブジェ

それを眺めるのはひどく楽しい

けれど一番楽しいのは、作り上げた塔を壊すとき

重力に逆らえず無情に崩れていくコイン、トランプ、マッチ

そして後に残ったのはかつてあった塔の残骸

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部屋

部屋

外で大雨が地面を打ち

風が唸り声を上げるのを聞くときほど

自分の部屋に安らぎを感じることはない

世界でただひとつここだけは

どんな不安や恐怖からも隔絶した聖域だ

好きな本に囲まれ、好きな音楽を聴き、菓子を食べる

雑誌を開き、古いラジオを聞きながら、災害のニュースを聞く

ただ見たいもの聞きたいものだけに意識を傾ける

心地よい孤独

無人駅と花火

無人駅と花火

一駅向こうの花火大会を見に行こうとして

乗る電車を間違えた先は田舎の無人駅

引き返そうにも次の電車は一時間後

タクシーを呼べば一時間半後に来るという

何故そう遅いのかと聞けば

花火大会で予約が埋まっているからとのこと

仕方なく待合室で一人ベンチに座っていると

遠くから響く花火の音

見えない花火はひどく寂しげに

夜空に轟いていた

眼鏡

眼鏡

もう長く使い込んで

度の合わなくなった眼鏡を変えられないのは

何故だろう

それはもうすっかり自分の身体になってしまったからだろうか

手や足を付け替えることができないのと同じように

あまりにも長く、共にいすぎて

モノだと思えなくなってしまったのか

ならばカラダとモノとはどこに境目があるのだろう

睡眠恐怖症

睡眠恐怖症

うつらうつらと眠りに落ちる

ちょうどその瞬間に

スマートフォンの音が枕もとで響く

人差し指でロックを解除して

他愛の無い通知を確かめては再び布団に潜り込む

だけど、またしばらくしたら通知が鳴って……

電源を切ればいいのにと思うけれど

どうしてもできない

何故ならあまりにも恐ろしいから

私が夢を見ている間にも

世界が動いているということが

無人駅と花火

無人駅と花火

一駅向こうの花火大会を見に行こうとして

乗る電車を間違えた先は田舎の無人駅

引き返そうにも次の電車は一時間後

タクシーを呼べば一時間半後に来るという

何故そう遅いのかと聞けば

花火大会で予約が埋まっているからとのこと

仕方なく待合室で一人ベンチに座っていると

遠くから響く花火の音

見えない花火はひどく寂しげに

夜空に轟いていた

空白の休日

空白の休日

「休みが取れたらやろう」と

がむしゃらに働く最中は確かに思っていたのに

いざ休日の朝になるとすっかり忘却の彼方

ベッドの上で身を起こし

空白の一日を前にしてただ呆然とする

自分がやりたかったことは

何だったのか

(ここより下に文章はありません)

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