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漆黒

『END LESS』永遠
これほどの憧れがあるか

「知ってるよ僕」
来てごらん、手を引っ張っ走る
超カッコいい彼

羽でも生えたのかと思うくらい
軽やかに
夜の街を走る


どこに連れて行かれたっていいや
今行かなかったら
後悔する
今しかないんだから

直感でそう感じた私は
足手まといにならないように
彼の手を握り返しながら
必死で走った


街外れ
丘の上に着くと
彼は私を振り返る

アハハ
よく来れたね
大丈夫だった?


途中
本当は不安で仕方がなかった
息ができているのが不思議なくらい
早く走った


なんの計画もなく
備えもない
こんなんで
行って大丈夫か
もといた場所へ
戻れるだろうか

いや、考える暇などなかった



富士山を登るのに比べれば
ここまでの道のりは
大したことがなかったが


「楽勝、、、、」

呼吸を整えて言いながら
ふと
別の誰かの気配に気付いた



丘の上の大きな木の下に
ひとり
何かを探している人がいた
こんな時間に
暗くて見えないんじゃないの


その人は
こぼれた石を
拾い集めている

「2個、、足りない」


1.2.3、4.5、、、、、
1.2.3.4.5.、、、

足りない

やっぱり足りない


小さく小さくつぶやいていた



その時
白い煙の向こうから
声がする


「ねぇ、記念日のことなんだけど
ひさしぶりに外でご飯にしようよ」

「聞こえないのかな
いつものことだけど」

「私のこと見てる?」


「足りないものを数えるとそれは
いつも2個足りないはずよ
ひとつはあなたへの愛
もう一つはわたしの持ち時間」

「だから
‘足りないもの’を数えるのはやめようよ
目の前のごはんが冷めちゃうよ
ねえ、
いつも供えてくれてありがとうね」


漆黒の扉の中から
その声は聞こえた


煙が消えた




ドキドキと
手に汗をかいている
彼は?


彼は誰だったんだろう



ブツ、と機械的な
音がして

GAME OVER


画面は暗くなった



「ねえ、次、どのゲームやる?」


8月の満月の夜
のことだ
「『END LESS』だって、このゲーム」



ほっこりしましたか?😏

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