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「寛容でない」のはどちらの側か?「トランプ大統領の姪による暴露本」から見えるアメリカの壊れ方と、「リベラル向けポルノ」を超えるアジア的価値観との相互作用の時代の予感について

トップ画像はこの記事で紹介する「トランプ大統領の姪による暴露本」から

アメリカ大統領選挙、佳境になってきましたね。

大分前からバイデン氏が認知症症状からメチャクチャなボロを出すんじゃないか・・・と噂されていたテレビ討論も終わり、民主党側支持者かれすれば「大崩れしなかっただけでもまあ良かった」という感じでしょうか。

別にバイデン氏が凄い弁舌で大反撃した感じでもないが、トランプ大統領にメチャクチャにやりこめられたという感じでもない。ただただ噛み合ってない非難の応酬だけがあったという感じ?

忙しくて動画を全部見たわけではないんですが、米メディアでは「史上最もカオスな討論会」とか呼ばれているそうで、「どっちもどっち」感というか、

「どっちが勝ったというよりアメリカが負けた」

というコメントをSNSのどこかで見ましたけどそういう感じでしょうか。

今、日本のツイッタートレンドにすら「バイデン」とか「トランプ」とか出てきていて、「バイデンの圧勝だった」「いやバイデン何言ってるかわからんかった。トランプの圧勝だった」みたいないつもの平行線の論戦がぶつかりあっているのを見ました。

日本語記事ではこの日経の速報記事がわかりやすかったです。

上記の記事にあったこの図のように

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今年はコロナ禍懸念から郵便投票がかなり多い(しかも郵便投票者には明らかに民主党側が多い)事情から、例年のように投票後すぐ結果は出ない事が予想されていて、その後も延々揉め続けて、それでもトランプ大統領が結果を認めずホワイトハウスに居座ったらどうするか?軍を出動させるしかないんじゃないか・・・とか、一昔まえの第三世界の独裁国家のような話も出ているらしい。

果てしなく混迷するこのアメリカ大統領選挙の影響は、言うまでもなく今後4年間(もっと先まで)の世界中に影響するわけなので、今回の記事では、話題の「トランプ大統領の姪が書いた暴露本」を読みながら、今後のアメリカがどうなっていくのか?それが世界の中でどういう意味を持つのか?という話をしたいと思います。


1●「トランプ大統領の姪が書いた暴露本」

トランプ大統領の姪が書いた暴露本の邦訳が出たので、読んでみたんですが、なかなかクセのある本だけど面白かったです。

世界で最も危険な男 「トランプ家の暗部を姪が告発」

作者は、トランプ大統領の姪(兄の娘)なんですが、全体としてちょっと「カラマーゾフの兄弟」的な感じ?で、トランプの父親世代から(移民第一世代のトランプの祖父も一瞬出てくる)、脈々と続く家族の物語。

「トランプ大統領の父」はよく知られているように一代でかなり大きな事業を築いた不動産王なんですが、そういう人の例にもれず結構家族から見れば”人間的に問題のある”人だったようで、著者メアリーさんのように文学系の感性の孫娘からすると相性が最悪なのはイメージできますよね。

そういう「人格破綻的なやり手の祖父」に反発して、メアリーさんのお父さん(トランプ大統領の兄で長男)はちょっと精神をおかしくして身を持ち崩し、40代で亡くなってしまったそうなんですね。

そしてその兄を反面教師として、父親に気に入られるように自分の弱い部分を必死に覆い隠して、父親の期待する「無敵の男(キラー)」であるように自分を演出し、そしてそこを気に入った父親との二人三脚で今の地位を築いていった物語・・・という感じです。

ただ、これ読んでいると、結構(トランプ大統領側でなく)「リベラル側の”非寛容”的な態度」にギョッとさせられることも多いんですよね。

私個人はリベラル的な人間だから大部分違和感なく読めるんですが、それにしたってコレはヤバいんじゃないか・・・というような偏狭な表現がたまにゴロッと出てきてギョッとするんですよ。


2●姪メアリーさんの暴露本でギョッとさせられる「リベラル側の非寛容」

トランプ大統領がある種の「非寛容」さを持っているのは確かだと思いますが、彼は彼なりに「自分とは違う考えの奴らもいるだろうが、俺はこうだ」っていう感じのところもあると感じるんですよね。俺はお前に口出ししないからお前も俺に口出しすんな的な感じ。

一方でそれを批判するリベラル側は、見た感じ「寛容」に振る舞いつつ、

「自分たちの側の価値観が正しい、相手は間違っている」という感覚に全然疑念がない感じが凄い危うい感じ?

・・・が、最近のアメリカでは

「隠せなくなって」

きているというか、

「隠さなくなって」

きているというか・・・そういうところに妙な「ヤバさ」を感じる本だったんですよね。

たとえば、いきなり出てくる

議論の余地はあるにせよ、アメリカ史上最も優秀といってもいい大統領候補、ヒラリー・クリントン元国務長官

とかいう表現とか・・・・「議論の余地はあるにせよ」とかつけてればいいってものじゃないと思うんですが・・・

「アメリカ史上最も」ってことは、二度の世界大戦を実際に乗り切って世界最強国家にのし上がった時期の大統領とか、南北戦争のような危機を実際に乗り切った大統領とかも全部含まれるわけじゃないですか。

それらの「色んな先人たち」に対して色んな人の色んな評価があると思うんですが、その状況で突然

「アメリカ史上最も優秀といってもいい大統領候補=ヒラリー・クリントン」

とか何の注釈も留保もなく地の文の中で突然ドカーンって書くのって凄いヤバい感性な感じがするんですけど、どうでしょうか?

「少なくとも私にとっては、ヒラリー・クリントン氏が、アメリカ史上最も優秀な大統領候補であると信じていた。その理由はコレコレだ」

ぐらいならわかるんですけど。

他にも、たとえば

子どもたちの中で唯一フレッド(ドナルドの父親)にとって重要だった息子ドナルドは、フレッドに好まれたその性質によって、結局誰からも愛されない人間になったということだ。

ドナルド・トランプは「結局誰からも愛されない人間だ」・・・とかも結構表現としてヤバい感じしませんか?

そりゃもちろん、「いかにも不動産屋のオッサン」的にガサツな祖父や叔父と、作者のような文学肌の心理学者の女性が「親戚づきあい」すれば色々と摩擦があるんだと思いますが・・・

ただ、そういう「実害」を受けた部分以外では、作者が考えるような「理想的な人間関係」とは違うかもしれないが、彼(ドナルド)なりに家族を愛して一緒にやっていきたいと思っていたりするし、それは他人が否定できるものでもない・・・というのが普通な感性じゃないでしょうか。少なくとも「そういう風に語るのが建前としての良識的態度」だというか。

イバンカとかクシュナーとか、他のトランプの子供たちとか、元妻さんたちとか、そういう人間関係も含めて、また全米で「イエーイ!トランプおやびーん!」ってなってる人たちが国民の1−2割?もうちょっと?ぐらいは実際にいるなかで、

「誰からも愛されない男=ドナルド」

って言っちゃう感性ってちょっとやばすぎるんじゃないか?と私はギョッとしてしまいます。


3●リベラル派は「自分たちの見方」からは見えていないもの・・・について開かれている態度を辞めてはいけないはず・・・だけど

アメリカでは大統領選挙が佳境になるに従って、もうとにかく今回は絶対に勝つんだ!というわけで、リベラル派側にも余裕が失われてきている感じがするんですね。

この姪メアリーさんの本だけじゃなくて、メディア全体でこういう論調が増えてきて、一方でもっと「マトモな」感性を持った人はどんどん冷や飯を食わされているんじゃないか・・・と思わなくもないです。

まあ、「決着」するまではそうするしかない、お互いの全力でプロパガンダをしあうしかない・・・っていうことなのかもしれませんが、私はこの「リベラル側の非寛容」的なセンスが止められなくなることについて、今後のアメリカがどうなってしまうのか?選挙に勝ったとして、本当に「多様な考え方を持つ国内をまとめあげる」ことができるのか・・・非常に不安な気持ちになっています。

メアリー・トランプさんは臨床心理学者なので、トランプの「病理」について立板に水で「理論的断罪」をしていったりするんですけど、その考え方自体が、本当にその「一つの見方」だけでこの複雑で奥行きのある人間社会のありとあらゆる現象を「きれいに」斬って捨ててしまっていいのだろうか?という疑念がある。

たとえば、この本の中では「いかにトランプがビジネスマンとして無能なのか」みたいなことをとにかく証明しようと頑張っているわけですが・・・

それについてのこの暴露本に限らない色んなリベラル派の議論について、以下で一応経営コンサルタント的な視点から内容をまとめると、「リベラル派からの批判もそれはそれで一面的」な感じがするというか。


4●「トランプはビジネスマンとして無能」説について

トランプ大統領(ドナルド氏)が、父親(著者メアリーさんから見て祖父のフレッド氏)からはほとんど資金援助を受けておらず、「独力でのし上がった成功者」というイメージなのは嘘なのだ・・・という話は、随分前に見たネットフリックスのドキュメンタリーにも出てきたので知っていたんですが。

このメアリー・トランプさんの暴露本にはかなり詳細に父親の不動産王初代フレッド氏が湯水のようにトランプに影で資金援助をしつつ、それを湯水のように赤字で溶かしていく(笑)ドラ息子トランプ氏・・・みたいな構図が描かれていて面白かったです。

なんか、今日本語のネットですらSNSが本当にナイーブになっていて、トランプ氏の経歴のこういう部分について疑義を呈した記事を紹介した新聞記者さんのアカウントに、「こいつは中国共産党のスパイだ!トランプ氏が大統領報酬を返上してることも知らないで!」って食いつかれてるのを見て面白かったんですけど。

そこで問題になっていたNYTのインフォグラフィック記事はコレなんですが・・・下にスクロールしていくだけで、英語ですがいろいろな情報が次々と表示されるのが面白いです。

(↓以下のスクリーンショットのように「トランプ帝国」の収支が項目別に図示されている)

スクリーンショット 2020-09-30 16.39.47

なかなかおもしろかったです。この記事で紹介した新型コロナの時のNYTインフォグラフィックでも思ったけど、NYTは特派員が日本についてテキトーに書く記事とか噴飯ものな時があるけど、ニューヨーク本社が気合入れて真剣に作るインフォグラフィックとかはやっぱ凄いなって思う時がありますね。


5●トランプはビジネスで赤字を出しまくっているという話について

トランプ氏のビジネスの全体像については、財務諸表についての知識・・・というとほど大げさなものでなくても、詳細はともかくざっくりとファミリービジネスにおける法人の利益と個人の利益の振り分けの問題とか、”借り入れを起こす力”と”利益を生み出す力”の違いとか・・・そのあたりについてある程度わかっている人じゃないと説明してもわかりづらいかもしれません。

さっきリンクしたNYTインフォグラフィックからだいたい読み取れることをまとめると、

・確かにトランプ氏個人の投資はイメージよりも赤字続きで決してそれ単体で見ると「やり手」とはとても言えない感じ

がするんですが、

・ただそこで堅実に黒字を積み重ねる投資ばかりをするタイプの人だったら、テレビ番組「アプレンティス」で何百億と儲けたり、それで生まれたブランドイメージで”トランプというブランド”をライセンスして世界中で稼ぎまくることもできなかった

わけですよね。

また、

・その「トランプブランドイメージ」をベースにした「借り入れ力」によって調達した資金を、トランプ以外の”普通に有能なビジネスマン”が運用した部分はメチャ儲かっている

わけです。

そういう意味では、

・「トランプ氏が派手だけど儲かってない投資で資金をかなり溶かしている」部分は、この「トランプ帝国」全体から見ると結構「必要経費」的な要素もある

んですよね。そしてそこで損失を出しまくっているので利益が圧縮されて節税にもなっていたりする”二重においしい”構造はある(笑)

ちなみに、さっき書いたSNS上のバトルに出てきた「大統領報酬」というのは調べてみると40万ドル程度だそうなので、この「トランプ帝国」の規模感からすれば確かに端金だというか、ちょっとしたお小遣い程度の額なので、それを個人利益として計上されると税金的に面倒だし、「それを断るということのアピール的効果」はそのSNSコメントを見ても絶大なので、断る決断は十分合理的だと思います。(ただ一般的イメージの、”トランプは毎年もっと凄い額を稼いでいるから4千数百万円など不要なのだ、凄いな”という感じでもないんですよね。もう個人の所得額がどうこうって話じゃなくなってる世界なので)


6●地味な「金持ち父さん初代トランプ」の鬱屈を晴らす役割を果たした二代目ドナルド

今回の暴露本を読むとわかるのは、この「有能なビジネスマンたち」や「資金の出し手たち」との一連託生の動き全体の最初期には、「ニューヨークのマンハッタンでなく周辺地域で庶民向けの集合住宅を供給するという果てしなく地味なビジネス」をやっていた父フレッドが、「自分には無理だけど息子ドナルドにはもっと派手な成功をしてほしい」と思って入れ込み、影で資金供給をしまくっていた「最初の数歩」があったわけですね。

「地方の庶民向け住宅用賃貸物件ビジネス」ってとにかく地味で、でも真剣にコスト感覚を持ってやり続ければ比較的あまり裕福でない生まれつきからでも、時代の流れとうまく噛み合えばキャッシュフロー的には凄く豊かになれる可能性がある道なんですよね。日本でも一時期流行った「金持ち父さん貧乏父さん」の世界ですね。

トランプ氏の父親は、落ちてる釘があったら拾って使え・・・というレベルのコスト感覚でビジネスをやってる人だったらしく、自分の家族が住んでいる所有住居ですらメンテをサボタージュしてコストを浮かせる的なことも多くあったようなエピソードがありました。

日本でもこれ系の人がSNSでかなり独自の存在感持ってますけど、なんか、「目一杯の借り入れと目一杯のコスト削減で投資利回りに徹底的にこだわる俺らこそが本当の”やり手”ってやつだぜ」的な自意識と、それがゆえの「きらびやかなビジネス」的な世界に対するちょっと鬱屈した気持ちを持っている人が多い印象で(笑)

ドナルドの父フレッド氏は、家庭では暴君だけどマスコミの前で華やかに振る舞えるタイプではなかったので、ドナルド氏を影で援助して、「独力でのし上がったスター」的ブランドイメージを作ってやることで、自分の心にあった鬱屈を昇華したかった・・・ような感じらしいです。

(余談ですけど、所有している賃貸不動産で”コスト削減のためにメンテを渋る”にしたってアメリカの場合ちょっとひどすぎる例が多いように思います。ネットフリックスにはトランプの娘婿クシュナー氏のドキュメンタリー(”汚れた真実シリーズ第三回”)もあって彼の父親も似た職業なんですが、日本だったらさすがにこれはないだろう・・・というような例がたくさんあって、末端レベルでの商業モラルのアメリカでのヤバさを感じます。それ以外にも公共工事の時に単なる工事対価以外でも減税などの巨額の特例措置を政治家の独断で与えられているケースも多くて、日本的な感じからするとかなりヤバい感じがする)


7●で、結局トランプ大統領は有能なビジネスマンなのか?

で!結局トランプ氏が「有能かどうか」っていうのは、なかなか難しい問題で、ニュージャージーのカジノとか世界中のゴルフ場開発とかの自分で判断した投資案件で赤字を出しまくっているのは、普通の意味でいうと「有能なビジネスマン」とは言えない部分があるわけですね。

ただ一方で、先述のこの「トランプ帝国のビジネス全体」のことを理解した上で「あえてやってる」部分も結構感じるので、そういう意味では”超絶的に有能”と言えなくもないわけですよ。

自分直轄のビジネスで(赤字を出しまくりつつも)とにかく「派手な投資活動」自体を印象付けることで「やり手イメージ」を世界中に売りまくって、その「イメージ起点」の起債力やライセンシービジネスで「巨大なトランプ帝国」を現状は破綻せずに成立させている・・・というのは、逆に超凄いと言えなくもない(笑)

このへん、ある程度以上のリスクテイカー的な気質の人と、知性的・あるいは文学的に「マトモな」感性を持っている人との評価の違い・・・っていうところはあるかもしれない。

あえてトランプ氏側の見方をすると、彼の判断基準的な見方からすると、作者の姪メアリーさんの価値観からの意見については、

「そういうのは理屈としては正しいかもしれないが、それでビジネスのスピードやフォーカスがボヤケてしまったら全部意味がなくなってしまうのだ」

というような感覚があるのだと思います。

ただ、その結果として最近では「損失」側をカバーしきれなくなってきている可能性もあり(何しろ全貌がわからないのでただ税金上の理由でそう見せているだけかもしれないんですが)、ひょっとすると何年か後にはこの「帝国全体」が大崩壊する可能性もあります。

でも過去にもかなりヤバい時期がありつつ色んな新機軸を生み出すことで切り抜けてきた歴史があるわけなので、評価は結局「破綻さえせずに切り抜けられればオールOK」というのは古今東西のあらゆるビジネスの評価なのかなという感じがします。


8●自分は「世界の半分しか見えていないかもしれない」という謙虚さが必要では?

だから「有能なビジネスマン」かどうかというのは、

「”世間一般で思われている形での有能さ”は全然ないが、”ある種の特殊なビジネス的才能”は世界最高レベルにある人」

という感じなのかなと私は思うわけですが、まあこういう人が好きか嫌いかは別として、自分の親族にいたら大変だなと思うけど、「そういう存在もいるのがこの人類社会」て感じがするじゃないですか。

ある種の「リベラル派の理想」から外れるエネルギーみたいなものに対して、どういう態度を取るのか・・・という点について、やはり自分たちの側の見方は「世界の半分」にすぎない・・・という理解をどこかでは持ちながら、その「異質な存在」との間のコミュニケーションをしていく覚悟を失ってしまうのはヤバいのではないか・・・と思うんですよ。

そこで「自分たちのインテリコミュニティだけの価値観を絶対化」することは、ある意味で「裕福で知的なコミュニティ」に生まれつかなかった存在を「かわいそうな存在」に押し込めてしまって、彼らなりの人生に対する納得とか、自分の人生を自分で切り開いていきたいガッツの源泉とか、そういうものを奪ってしまう効果があるはずなんですよね。


9●大統領選挙までは仕方ないとしても・・・

誤解してほしくないのは、私個人は今回はバイデンに勝ってほしいと思っているんですよ。

いくらドナルド・トランプ氏が彼なりに魅力的な部分もある人だったとして、そりゃ地方の不動産屋のオジサンならいいとして、

「人類の現状の覇権国家の大統領が、こんな不動産屋のオヤジ的メンタリティでいいのか?」という大問題

は明らかにあるわけですよね。

暴露本の中でも、「学習能力が全くないので、色んな問題について側近がレクチャーしても全然聞いてない。理解できない。」という話が色々と出てきて、これは他の元側近の暴露本たちを読むともっと顕著に書いてあるわけですが・・・

たとえば日本の米軍基地についても、何回米軍側にとっての戦略的価値も十分あるし日本は相当な経済的負担をしているんだという話をしても、何回もまた蒸し返したりするしね・・・

日本の保守派の中ではバイデンになってしまったらもう中国共産党の世界制覇を止めるものは何もいなくなってしまう!みたいなことを言う人がいるんですが、現状のようにトランプ氏的なムチャを放置していると、中国共産党的なムチャが相対化されちゃうというか、「アメリカだってむちゃくちゃなんだから、ちょっと俺たちが弾圧するぐらいいいじゃん」みたいになっちゃうのが大問題なんですよね。

アメリカで警官に殺された黒人の最後の言葉として有名になった「I can't breathe」を中国の華春瑩報道官がツイッターで「アメリカに言い返すネタ」にしたりね。

中国は「米中」対立の中で欧州を自陣側に引き込もうと必死なんですが、トランプが欧州諸国でのアメリカの印象を悪くして同盟関係に亀裂を入れまくることで、余計に中国側に付け入るスキを与えてしまっている。

たしかに、「中国があんな強権的な政体のまま世界一の経済になられたら困るんだけど」という大問題をちゃんとフレームアップできるまでは、トランプ的に規格外のパワーで状況を反転させることが必要な時期もあったと思うわけです。

しかし、いざここまで「ちゃんと対決姿勢が明確」になったなら、ここから先はちゃんとマトモな国際協調の中でスキのない圧力を強めていくべき時期に来ているはずだ・・・と私は考えています。

と、いうわけで、まあ今回はバイデン氏になんとか勝ってほしいと思ってはいるのですが・・・

各種調査ではまあまあの勝算がバイデン氏側にある(バイデン氏がちゃんと「警察全体でなく一部の差別主義者だけが問題なのだ」と明言するようになったのは良かったと思います)ように思えるのですが、なんせ4年前のアメリカマスコミが出していた数字と実態との乖離があまりにも激しかったので最後まで信用できない感じがしますね。


10●大統領選挙が終わったら元に戻れるのか?

そういう意味では結局、

とにかく大統領選挙までは、あらゆるプロパガンダを動員して、全部「敵」のせいにして押し切ってしまうのだ、そもそもトランプだってそうしてくるんだから、リベラル派だってそうして何が悪い!!

というのなら、まあわからんでもないんですが、問題はそれって大統領選挙が終わったら元に戻るのかな?ってことなんですよね。

特に、前回書いて、ツイッターなどで凄い好評をいただいていて今バズリ中のフェミニズムに関する記事↓

で書いたように、「あらゆる意識高い系」の運動は、「逆側のカウンターパート」とちゃんと結託できないと、社会の隅々に行き渡らせることはできないんですね。

「一部の金持ちエリートコミュニティの奇特な趣味」みたいになってしまったら社会全体まで普及しないどころか逆張り的に「もっとヒドイこと」をやろうとする人がたくさん出てきてしまうわけですよ。

「エリートコミュニティ」以外の世界にもちゃんと「行き渡らせる」には、上記のリンク先記事で書いた「サムライしぐさ」で社会と新しい価値観を溶け合わせて広げていくことが必要なわけですけど。

それは、上記リンク先に出てくる「フェミニズム子育て本」の表紙にいるこの男の子↓

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が、単に「インテリ社会の中だけで通用する甘やかされた男の子」として育つのではなく、その「外側」ともちゃんとコミュニケーションをしてたくましく育っていき、この世界の「本当にリアルな問題」から逃げずに立ち向かい続ける・・・ために重要なポイントであるはずなんですよね。


11●アメリカ大統領選挙が終わってからの日本の役割とは?

上記リンク先の記事でも書いたように、今回の選挙を機会に、「アメリカ」の内部ではもう一度「先鋭化しきるところまで先鋭化し、メタな視点から止揚しようというような価値観は崩壊するところまで」行くのかもしれない。

しかしその後、「米中対立」というリアルな構造の中で、「観念的に先鋭化しすぎてリアリティを失うムーブメント」に対するバックラッシュは、アジア諸国(特に日本)とのコミュニケーションの中から生まれてくるのかも?と思ったりもしています。

もしバイデンが勝ったら、今は「トランプという共通の敵」のおかげで結託できている民主党内部の「過激派と穏健派」の争いはまた激化することは避けられないわけですけど。

そこで、今はトランプ派が果たしていた「リベラル的理念の閉じた先鋭化を牽制する役割」を、誰か別の存在が軸となって果たしていく必要があるわけですが、ここ最近何度も使っているこの図のように、

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そういう構造の中で日本が果たすべき役割というのは、非常に重要な価値を持つようになるはずだと私は考えています。

さっきも書いたように、トランプファミリーのビジネスにしろ、娘婿クシュナー家のビジネスにしろ、いかに賃貸物件のメンテコストを押さえるためとはいえ、ちょっと日本じゃあ考えられないレベルの無茶苦茶なことが横行しているわけですよね。

「閉じたインテリコミュニティのエゴ」だけで世界を統御しきってしまわないようにちゃんとリアリティ側から牽制する役割・・となった時に、トランプファミリー的に「明らかにムチャをやる」存在を容認しなくちゃいけなくなると、それはそれで結構問題だと思うわけですが。

そこで日本社会が持っている「ある要素」が、「トランプ的なものの代替物」として意味を持ってくるんじゃないかと思うわけです。

「より広範囲の人間のサムライしぐさの共有」によって、「先鋭化しすぎてほんの一部の特権階級のナルシシズムを満たすだけのもの」になってしまわないようにする構造を、日本発に提示していくことができれば・・・・

「閉じたインテリコミュニティの独善性」を掣肘するが、トランプファミリーのビジネスのように無茶苦茶なことはしない・・・というあたりのラインをキッチリ提示してくれる存在は、どこかに今後絶対必要になってきますからね。

それは、「中国がどうしても強権的になってしまう理由」も、「アメリカのリベラルが過剰に先鋭化してしまう理由」も、両方ちゃんと引き受けた上で現実解に導いていく旗印となりえるでしょう。

それは、私たち日本人が長年共有してきた良識から出てくるものであると同時に、それを崩壊させずに守ってきたからこそ、過去20年ぐらいありとあらゆる「意識高い系」のムーブメントに断罪され続けてきた問題でもあるわけですが。

そこで私たち日本人が、「長所と短所は裏返し」的なブレイクスルーの中から提示していくべきものがあるはず。

そのような、アメリカ大統領選挙後に日本が果たすべき新しい役割について、特に「菅新政権時代の日本」については、次の記事↓で稿を改めて書きました。

「トランプ大統領は優秀なビジネスマンと言えるのか」問題と呼応するように?「菅義偉氏は叩き上げの苦労人と呼べるのか?」という問題がSNSで結構話題になっていましたが・・・

その菅氏が持っている「叩き上げ」部分はどういう意味があるのか?そしてその「安定性」が生み出す価値を日本はどう使っていけばいいのか?について、合わせてお読みいただければと思います。


今回記事の無料部分はここまでです。

以下の部分では、最近目立つ「リベラルポルノ」とでも呼ぶべきものについて話します。

「リベラルポルノってなんだ?」というと、それは最近この記事で書いたような「リベラル派側の非寛容」を表すコンテンツとして、一種の「リベラル向けポルノ」みたいなジャンルってあるなあ、と感じるようになったという話です。

「ある種の受け手にとってのみとにかく都合の良い」お話のようなコンテンツを「●●ポルノ」という言い方ってありますよね。

よく言われている用法では「愛国ポルノ」みたいな言い方がされたりする。

でも一方で、「リベラル派向けポルノ」みたいなのも最近よくあるよなあ・・・って、思うんですよね。

「どう考えても悪すぎる敵」が出てきて、「善人の主人公側」に対して「とにかく無意味にヒドイこと」をする・・・みたいな展開?

そしてソレに対して「正義の主人公」がドカーンとやり返してやって、「どう考えても悪すぎる敵」が「うわああああやーらーれーたー」みたいになるという(笑)

別に、どんなコンテンツだって必要とされるからあるわけで、「●●ポルノ」だって、さっきの「愛国ポルノ」だってあっていいと私は考えているんですが、「リベラルポルノ」の場合はそれを摂取する人の中に含羞がなさすぎるというか、”本気で”摂取している感が強いところがちょっと怖いなと思うわけです。

”半沢直樹”ぐらいなら、エンタメなのはわかりきっている上で見るわけですし、「宗教ポルノ」や「愛国ポルノ」は普通に今の時代徹底的に厳しい目が向けられる構造があるわけですけど。(あまりにそういうものを抑圧しすぎるためにバックラッシュ的にそこそこ売れてしまったりもしているようですが)

一方で「リベラルポルノ」的なものは、今の時代結構「本気で」摂取されがちで、それが、ここ最近のnoteなどで書いているように、「相手側の事情を理解するよりも、糾弾することに酔う心象」の暴走を招いているように思えてなりません。

例のオバマ元大統領の「他人に石を投げているだけでは世界は変わらないよ」ですね。

例えば、「けっ、女なんかにこの仕事が勤まるかよバーカ!」みたいなオッサンが出てくるコンテンツって、たしかに昔は意味あったと思うんですが、だんだん「もう問題はそこじゃないんだよ」みたいな話になっているはずなんですよね。

「そういう偏見を持ったヤツ」はいなくなったとは言わないが、すでに一般的に冷眼視されるぐらいにはなっているわけですよ。

今の問題はもっとその「先」で、

女性がその仕事をやっていくにあたっての色々と起きる問題を、人事制度だとか社会制度だとか細部の文化の問題だとか、男性側の性役割も含めた全体のバランスの問題だとか、いろいろと両側の事情を持ち寄って具体的に細かく解決していくフェーズに人々が集中するべき段階が来ている

のに、

いまだに「リベラルポルノ」的な、「女なんかにできねーよ!」って無意味に理不尽なことをいうオッサンと、「やりかえしてやったわ!」っていう女の人・・・みたいなストーリー

だけが暴走していると、

「実質的な問題解決」に人々を誘導できなくなる

わけですよね。結果グズグズと改善が進まないままでいると、「けっ女なんて」的なオッサンを掣肘することもできなくなるわけです。

以下の部分では、その「リベラルポルノ」的なものについて、色々な例をあげながら書いてみたいと思います。この記事に書いたように、一時期の韓国映画もかなりヤバいのありましたけど、最近は随分変わってきて、それが彼らのコンテンツのここ最近の躍進に繋がったと思います。

そういう「リベラルポルノ」を超える「あたらしいリベラルコンテンツのあるべき姿」みたいな話ができればと思っています。

2022年7月から、記事単位の有料部分の「バラ売り」はできなくなりましたが、一方で入会していただくと、既に百個近くある過去記事の有料部分をすべて読めるようになりました。結構人気がある「幻の原稿」一冊分もマガジン購読者は読めるようになりました。これを機会に購読を考えていただければと思います。

普段なかなか掘り起こす機会はありませんが、数年前のものも含めて今でも面白い記事は多いので、ぜひ遡って読んでいってみていただければと。

また、倉本圭造の最新刊「日本人のための議論と対話の教科書」もよろしくお願いします。以下のページで試し読みできます。

ここまでの無料部分だけでも、感想などいただければと思います。私のツイッターに話しかけるか、こちらのメールフォームからどうぞ。不定期に色んな媒体に書いている私の文章の更新情報はツイッターをフォローいただければと思います。

「色んな個人と文通しながら人生について考える」サービスもやってます。あんまり数が増えても困るサービスなんで宣伝してなかったんですが、最近やっぱり今の時代を共有して生きている老若男女色んな人との「あたらしい出会い」が凄い楽しいなと思うようになったので、もうちょっと増やせればと思っています。私の文章にピンと来たあなた、友達になりましょう(笑)こちらからどうぞ。

また、この連載の趣旨に興味を持たれた方は、コロナ以前に書いた本ではありますが、単なる極論同士の罵り合いに陥らず、「みんなで豊かになる」という大目標に向かって適切な社会運営・経済運営を行っていくにはどういうことを考える必要があるのか?という視点から書いた、「みんなで豊かになる社会はどうすれば実現するのか?」をお読みいただければと思います(Kindleアンリミテッド登録者は無料で読めます)。「経営コンサルタント」的な視点と、「思想家」的な大きな捉え返しを往復することで、無内容な「日本ダメ」VS「日本スゴイ」論的な罵り合いを超えるあたらしい視点を提示する本となっています。

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ウェブ連載や著作になる前の段階で、私(倉本圭造)は日々の生活や仕事の中で色んなことを考えて生きているわけですが、一握りの”文通”の中で形に…

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