心を守るバウンダリーの作り方:他人の感情に支配されないために
「他者の感情に振り回される」と悩む方は多いのではないでしょうか。
他者の感情に引きずられると、疲弊したり、本来の自分を見失ったりすることがあります。
責任感や自己肯定感の低さが原因で、相手の感情を引き受けてしまう人もいるでしょう。
しかし、そのような状況でも「バウンダリー(境界線)」を意識することで、心の健やかさを保ち、自分らしい人間関係を築くことが可能です。
このガイドでは、他者の感情に流されずに自分を守るためのバウンダリー構築方法を詳しく解説します。
1.他者の感情に振り回されるのはなぜ?
①過剰な責任感
なぜ他人の感情に振り回されてしまうのでしょう。
一つは「自分が何とかしなければ」という責任感が理由です。
他人の感情に振り回されて辛くなるのは、それがネガティブな感情だから、ですよね。喜びや楽しさを共有出来て悩む人はあまりいないでしょう。
目の前にいる人がネガティブな感情に支配されているのを「自分が楽にしてあげなければ」と考えたり、場合によっては「この人が苦しむのは自分のせいだ」と原因を自分に求めてしまうことで、自分の感情なのか相手の感情なのか、区別がつきづらくなってしまいます。
②自己肯定感の低さ
二つ目の理由は自己肯定感の低さです。
自分で自分の思考や感情を「これでいいんだ」と思うことが自己肯定感です。それが揺らいでいると、疑ってしまいます。
自分の考えや思考に自信を持てないため、その真偽や価値を他者の反応から推し量ろうとします。
他者が自分の判断基準となってしまうため、他者の感情から受ける影響が大きくなってしまうのです。
③衝突を避けたい心理
もう一つ考えられるのは「衝突を回避したい」と考えるケースです。
衝突は誰だっていやですよね。好んでする人はあまりいないでしょう。
ただ、衝突を避けることがそれ以外の要素や結果より優先されてしまうと、自分の意見を引っ込める場面が増えていきます。
それはすなわち相手の意見や感情への譲歩です。
衝突は避けられるかもしれませんが、自分のものではない感情に支配される結果となってしまいます。
こうした状況と向き合いながら他者の感情に振り回されないために役に立つのが「バウンダリー」です。
2.バウンダリーを構築しよう
①バウンダリーとは
バウンダリー(Boundary)とは、「境界線」や「限界」という意味です。
心理学では「他者と自分を分ける心の境界」を指します。
バウンダリーは、人間関係と自分のメンタルの健全化に非常に有効です。
バウンダリーがはっきりしていないと、他人の感情や行動に振り回されたり、自分を犠牲にして相手に尽くしすぎたりして、心身ともに疲弊しやすくなります。
逆に、バウンダリーをしっかりと持つことで、自分の時間やエネルギーを守りながら、健全な人間関係を築くことが可能になります。
②バウンダリーのタイプ
バウンダリーには主に以下の4種類があります。
物理的バウンダリー
自分の身体的なスペースや物に対する境界。
たとえば、プライベートな空間に誰かが無断で入ると、不快に感じることがあります。
感情的バウンダリー
自分の感情と他者の感情を分ける境界。
他者の感情や反応に過剰に影響されないようにすることが大切です。
知的バウンダリー
自分の考えや価値観を守る境界。
異なる意見を尊重しながら、自分の考えを維持することを指します。
時間的バウンダリー
自分の時間を尊重し、他者の要望に対して無理に応えないようにするための境界です。
③バウンダリーの重要性
バウンダリーが明確であることには多くのメリットがあります。以下のような効果が期待できます。
自己理解が深まる
自分の感情や欲求、限界が明確になることで、自分に合った対応ができるようになります。
自分のエネルギーを守れる
他者に対して無理に合わせたり、過剰に気を遣うことが減り、疲れにくくなります。
健全な人間関係が築ける
境界線を明確にすることで、他者との対等な関係が保て、相手も自分も尊重しやすくなります。
④バウンダリーが曖昧になると起きる問題
バウンダリーが曖昧だと、他者の感情や行動に過剰に反応しやすくなり、ストレスが溜まりやすくなります。
以下は、境界線が曖昧であることで起きる主な問題です。
疲弊感やイライラ感が増す
他者に過剰に尽くしすぎたり、他者の感情に同調しすぎたりして、自分が犠牲になりやすくなります。
自分軸、自分の意見を見失う
他者の期待に応えようとしすぎて、本来の自分の意見や欲求がわからなくなることがあります。
人間関係の悪化
境界が不明確だと、他者との摩擦が起こりやすく、信頼関係が崩れることがあります。
3.バウンダリー構築方法 5ステップ
①自分の感情を認識するトレーニング
まずは自分自身の思考・感情に自分で気づくことが必要です。
自己肯定感以前に自分が何を感じていたり考えているか、に無頓着であることも、他者の感情から影響を受ける理由になってしまいます。
具体的には、日々の気持ちをジャーナリングしたり日記に書くなどして、「自分の感情」「他者からの影響」を振り返り、境界線を意識する練習をしましょう。
②「他者の感情は他者のもの」と認識する
自分の思考や感情を認識する習慣がついたら、次は「他者の感情はその人のもの」であって、自分が責任を持ったり原因だと思いこむ必要は無い、と意識することが大切です。
目の前にネガティブな感情に囚われている人がいたら心配になるし影響をゼロにすることは難しいです。特に夫婦や家族なら尚更です。自分に一切関係ない、とは思わないかもしれません。
しかし、感情を感じているのはその人です。それを肩代わりしたり、こちらがコントロールして打消すことは出来ません。
自分ができる範囲のことをするけれど、すべてを背負うわけではない」と認識する練習をしましょう。
③アサーティブな自己主張スキルを身に着ける
次にお勧めなのが「アサーティブな自己表現」です。
アサーティブなコミュニケーションは、相手を傷つけずに自分の意見や感情を素直に表現する方法です。
攻撃的な「アグレッシブ」とも、自己主張を控える「パッシブ(受動的)」とも異なり、自分と相手の両方を尊重しながら、率直に自己表現するのが特徴です。
バウンダリーを守るためにこのコミュニケーションを活用することで、相手に依存しすぎず、自分の感情や意図を相手に伝えやすくなります。
ポイントは
「I(私)メッセージ」で伝える
「お願いしたいこと」や「守ってほしいこと」を明確に伝える
柔らかい「NO」を言えるようになる
です。
④メンタル・シールドのイメージを作る
更にバウンダリーを確立するために、「メンタル・シールド」をイメージしてみましょう。
これは心の中でシールドを「想像」し、それが実際に自分を守っていると感じることによって心理的に自分を守るテクニックです。
以下の流れでメンタル・シールドを構築してみましょう。
◆透明なバリア
自分の体を取り囲むように、透明なエネルギーの壁を想像します。この壁は外からのネガティブな感情やエネルギーを跳ね返し、自分の内部には入り込まないと意識します。
◆光のシールド
自分の周囲にやわらかい光のフィールドが広がっていると想像します。この光は他者の感情やストレスを弾き、ポジティブなエネルギーだけを通すフィルターのような役割を果たします。
◆色付きのバリア
青や緑といった、心を落ち着かせる色のフィールドをイメージし、自分を包み込みます。色は安心感や穏やかさを与えるものとして、自分の好きな色を選んでも構いません。
イメージ出来たら、具体的なシチュエーションを想像し、シールドが自分を守っている場面を想像しましょう。
たとえば、職場や家庭などで他者からのプレッシャーや批判を受けるような場面をイメージし、シールドが自分を守っている感覚を持つ練習を繰り返します。
例え薄くても透明でも、自分と他者を隔てる何かがある、と感じられることで、バウンダリーがより明確になります。
⑤相手との距離感を再調整する
自分と他者との距離感は、近づきすぎれば今回のような問題が起こりますし、離れすぎても無関心化してしまいます。
適切な距離感はどこか、を、調整しながら見極める必要があります。
特に家族の場合は、意識しなければ24時間一緒にい続けることも珍しくありません。それが自他の境界線の曖昧さに繋がります。
可能であれば、時間や場所を自分のために使うなど、適度な距離を保つことで自分の空間を確保し、感情的な境界を意識できるようにしましょう。
4.バウンダリー構築についての注意点 5つ
①急に距離を置かない
自他の境界を意識するあまり、急に距離を置いたり、関係を断つような行動をとると、家族に不安や反発を引き起こす場合があります。
少しずつ自分の気持ちを話したり、時間をかけて関係性を調整することが重要です。
②他者を「切り離し」すぎない
境界線を保とうとするあまり、家族や他者との関係を極端に遮断しようとするのも避けましょう。
境界を築く目的は、自分を守るためであり、家族と関係を絶つためではありません。
他者の感情や意見にも耳を傾け、互いの距離感を意識しながら付き合うことが大切です。
③罪悪感を感じすぎない
境界を持とうとすると、「冷たくなった」と思われたり、「自分勝手」だと感じられたりすることがあります。
股は相手がそう感じなかったとしても、自分が思い込む恐れもあります。
ただ、その結果として他者の感情に振り回される、というネガティブな体験をしたからこその「バウンダリー構築」ですよね。
罪悪感はその来た道を引き返すことに繋がります。
境界を作ることは健康的な対人関係のために必要な行動です。
罪悪感に引きずられず、「自分を大切にするための選択」と理解しましょう。
④自分の限界に気づく
他者、特に家族の感情に振り回されないためには、自分のエネルギーや時間の限界を知っておくことも大切です。
他者の感情に影響を受けやすい人は、共感力が高いと言えます。共感力は長所ですが、かといって自分の感情や思考を蔑ろにして他者に共感し続けるのは非常に困難ですし疲労し続ける行為です。そもそも本当の共感なら自分が振り回されることはあまりありません。
もし限界を超えそうになったら、一時的に休むか、信頼できる第三者(友人やカウンセラーなど)に相談して、気持ちを整理する機会を作りましょう。
⑤他者の変化を期待しすぎない
境界を保つことで、家族も変わってくれるかもしれないと期待しすぎないことも重要です。
自分の行動が相手に影響を与えることはあっても、最終的には相手自身の変化です。
自分の境界を守ることに集中し、他者の反応をコントロールしようとしないようにしましょう。
5.まとめ
他者の感情に振り回されずに自分のメンタルを守るためには、自他の境界線(バウンダリー)を意識して行動することが大切です。
境界線が曖昧だと、他者の感情や行動に敏感になりすぎ、ストレスや疲労感が増してしまいます。
今回ご紹介した5ステップや注意点を取り入れることで、自分を守りながらも他者との関係をより良好に保てるでしょう。
また、境界線を構築することは決して「自己中心的」になることではありません。
むしろ、相手に対して健全な距離感を持つことで、よりお互いに尊重し合える関係を築くための手段です。
焦らず少しずつ、今日からできることから取り組んでみましょう。
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