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La diluvienne 歌詞和訳

 みなさんは、雨は好きですか。

 私は、鎌倉におでかけしたとき「北斎グラフィック」っていうお店で和傘を買ってから雨が好きになりました。

 私が買ったのはこれ。

 シンプルなデザインだけど、骨が24本あるから風に強くて、なのに軽い! 色違いも何種類かあるし、これ以外のデザインでも可愛いのがたくさんあるので、ぜひ。

 さて、今日はそんな雨にかかわる歌、 « La diluvienne » を聴いてみます。


1. 歌詞&和訳

Tombe l'eau, je t'embrasse
雨ふり、きみにキスして
Cette fois sans y croire
今度はもう信じてないけど
C'était beau mais hélas (*1)
晴れてたのに、残念ね
Notre amour se fait rare (*2)
私たちの恋は疎遠になって
Un seul espoir me reste
叶ってない願いがひとつだけあるの
Qu'un beau jour tu me détestes
いつか晴れた日、私のこときらいになってくれますように
Je sème le problème (*3)
私は問題の種を蒔いて
Je le fuis sous une pluie (*4)
雨降りの中にげる
Je sème le problème
私は問題の種を蒔いて
Je me fuis sous une pluie diluvienne (*4)
土砂降りの中にげる


Je t'avais dit, mon amour (*5)
ねぇ、私言ってたよね
Je n'aimerai que toi
きみ以外を好きにならないって
L'avenir nous joue des tours (*6)
運命がいたずらしてるのかな
Je me sens tellement loin de toi
すごく遠くなっちゃった気がする
Je ne vais pas m'étendre
だらだら話すつもりも
Ni te dire ça ira
大丈夫だって言うつもりもないわ
Restent les heures tendres
やさしい時間は残ってるよ、それは
Un passé entre toi et moi
ふたりの過去
Aucun espoir ne reste
叶ってない願いはないわ
Car j'ai tout tué d'un geste
すべて消し去ったから
Je sème le problème 
私は問題の種を蒔いて
Je le fuis sous une pluie
雨降りの中にげる
Je sème le problème
私は問題の種を蒔いて
Je me fuis sous une pluie diluvienne
土砂降りの中にげる


Un seul espoir me reste
叶ってない願いがひとつだけあるの
Qu'un beau jour tu me détestes
いつか晴れた日、私のこときらいになってくれますように
Je sème le problème 
私は問題の種を蒔いて
Je le fuis sous une pluie
雨降りの中にげる
Je sème le problème
私は問題の種を蒔いて
Je me fuis sous une pluie diluvienne
土砂降りの中にげる
Je sème le problème 
私は問題の種を蒔いて
Je le fuis sous une pluie
雨降りの中にげる
Je sème le problème
私は問題の種を蒔いて
Je me fuis sous une pluie diluvienne
土砂降りの中にげる
……


2. 補注

 (*1) hélas は「あぁ」とか「かなしいかな」みたいな間投詞。ギリシャ神話のヘラと関係あるのかな?

 (*2) 日本語の「レア」は、どちらかというと「希少価値が高くて出会えたらラッキー」みたいな積極的な意味で使われることが多い気がします。でも、ここでの rare は「あまりない、めったにない」という本来の意味、消極的な意味です。

 (*3)「自分が蒔いた種」っていう日本語の慣用句に引きずられそうになるけど、ここは現在形だからあくまで「蒔いた」じゃなく「蒔く」かな。

 (*4) サビで、2行目では  Je le fuis「その問題から逃げる」って歌われてるんだけど、4行目では Je me fuis「自分から逃げる」ってなってて、微妙な違いがあるんですね。このあとの感想でもちょっとだけ触れます。

 (*5) mon amour は、dire の目的語だと考えて「愛を語った」の意味だととるよりも、恋人に対する呼びかけと解釈するのが自然。

 あと、細かいけど「私言ったよね」じゃなくて「私言ってたよね」。複合過去じゃなくて半過去になってるのでこっちの方がいいかなって思いました。こういうとこ、こだわってます。

 (*6) jouer des tours à 〜「〜にいたずらをする」の意味なんだそう。


3. 感想

 この曲、アルバムの最初の曲にふさわしい、曲調はあっさりしてるけど、歌詞がじんわり染み込むような、率直にとてもいい曲です。

 まず、タイトルの diluvienne が「土砂降り」の意味なんですけど、およそ土砂降りとは縁遠いメロディー。最初に聴いたとき、sous une pluie は聴きとれたから、しとしと降る雨、あるいは天気雨みたいなやわらかい雨を想像してたんだけど、大はずれ。« Caractère » もそうだったけど、Joyce Jonathan の歌って、こういうことよくあるみたい。

 サビ前の「晴れた日に嫌いになってほしい」っていうのが面白くて、なんかわかるんですよね。冷たい雨の日にお別れするのと、ぽかぽかした陽射しの中でお別れするのとは、同じお別れでもなんだか違うような気がする。この歌の中で晴れと雨をこんなに織り込んでるのは、天気によって気持ちがころころ変わるのを描いてるように思えるんです。

 そして、サビ。「私は問題の種を蒔いて雨の中をにげる」。何があったんだろう。過去のことを振り返ったり、願ったりしてはいるんだけど、歌われてるその時点についての情報って、実は冒頭の「雨ふり、きみにキス」したことだけ。いろいろ想像が広がります。

 疎遠になったのに、お互いにきらいにはなれなくて、以前みたいに晴れやかな恋仲には戻れないけど、雨の中でキスしてしまう。「あぁ、こうやってまた離れなくなって、問題の種を蒔いてるんだろうな、自分。」そんな自覚はありつつも、問題からいまだけは目をそむけて、自分からも逃げている。

 ここについては「これが正解」という解釈はないと思うんです(もちろんサビだけじゃないけどね)。上のはあくまで私の個人的な受け取り方なので、十人十色の味わい方を皆さんたのしんでください。

 後半はさらっと。2番では、「だらだら話すつもりはないわ」とか「叶ってない願いはないの」とか、過去と訣別しようとしてる感じもあるんですよね。でも、ラストのサビ前でやっぱり「叶ってない願いがまだ一つある」。この歌の主人公の心の中の天気も変わりやすいんでしょうか。

 日本語には雨に関する言葉がいっぱいあって、『雨のことば辞典』なんていう辞典ができちゃうほどなんですけど、人の心もそれと同じくらいさまざまで。この曲は少しずつフェードアウトしていくように終わるんですが、それもまた雨らしくて好きです。


 最後まで読んでいただきありがとうございました!あ、そうそう、『雨のことば辞典』については以下のリンクからどうぞ。


4. 次の曲


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