十草慶

作編曲チーム「ソラノアルト」所属。ポピュラー・ミュージックの作編曲に関することを主に書…

十草慶

作編曲チーム「ソラノアルト」所属。ポピュラー・ミュージックの作編曲に関することを主に書いていきます。

マガジン

  • ポップス作編曲家の視線で読む「楽典」解説

    音楽之友社「楽典-理論と実践」を、現役のポピュラー作編曲家(音楽作家)の目線で読み解く連載マガジンです。

最近の記事

【第2回:音楽の時間軸】ポップス作編曲家の視線で読む「楽典」解説

音楽之友社の「楽典」を、現役ポピュラー作編曲家の目線で読み解く連載企画。 第二回となる今回は、上記テキストで、P17~P74の範囲を一気にやっていきます。 内容としては、譜面に関する話と、「リズム」に関する話になります。 譜面については、極論「覚えてね」って話だけなのでサクっと行きます。リズムと拍子の話を掘り下げていきましょう。 1:ポップスの現場で譜面って使う?→使います! まず原則として、クライアントさんに楽曲を納品する際、メロ譜(メロディと歌詞を記載した譜面)は大

    • 【第1回:"音"とは何か】ポップス作編曲家の視線で読む「楽典」解説-初回ガイダンスと序章

      ポップスの世界にいると、「音楽理論って役に立つの?立たないの?」という議論がたびたび沸き起こります。 これ色々な観点があるんですが、僕自身これまでの音楽人生を振り返ってみて、あることに気が付いたんですね。 「そも、音楽理論を“ポップスの現場”目線で教わったことってある?」 せいぜいコードネームとか、その辺ぐらいじゃないですか? いや…よく思い出せばいろいろ教わった気もするんだけど…ちょっと記憶に残ってない…。 というわけで、何がやりたいかと言うと、音楽之友社の「楽典」

      • マツケンサンバはサンバ要素がちゃんとある、という話

        ソラノアルト十草です。 あの有名なマツケンサンバ、「実はサンバ要素がまったくない」という話がネット上にはあるらしいのですが、僕の聴くところでは、サンバ要素ちゃんとあります。 その辺をちょっと簡単に解説していきます。 そもそもサンバってなに?スルドが大事難しい話はすっ飛ばしますが、「サンバの本質」とも言って良いほどの重要性を担っているのはスルドである、という見解は、おおむね一致するのではないかと思います。 で、サンバにおけるスルドのリズム、これも色々あるんですが、あえて単

        • 「今のイントロは平均5秒」は本当か?論文を読んだら印象が違った

          ソラノアルト十草です。 ちょっと前に…いや、もう1~2年前になるんですかね。2020年のインターネット白書だったと思います。 サブスク時代に入って、ポピュラー音楽のイントロはどんどん短くなっており、今では平均5秒である。 と、こういうデータが出されたわけです。 この話を見た僕の率直な感想としては、「まあ、あくまで平均値だからね」の一言に尽きるわけですが、これについて今回は書いてみようと思います。 「イントロ5秒」はあくまで平均値これは既に多くの方が指摘されていると思い

        【第2回:音楽の時間軸】ポップス作編曲家の視線で読む「楽典」解説

        • 【第1回:"音"とは何か】ポップス作編曲家の視線で読む「楽典」解説-初回ガイダンスと序章

        • マツケンサンバはサンバ要素がちゃんとある、という話

        • 「今のイントロは平均5秒」は本当か?論文を読んだら印象が違った

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        • ポップス作編曲家の視線で読む「楽典」解説
          2本

        記事

          退屈な5秒を作らない-最後まで聴ける曲を作るために

          ソラノアルト十草です。 2021年、皆さんいろいろとお世話になりました。2022年もよろしくお願いします。 2021年は、まあ月1本ぐらい何か書くか、程度でこのnoteを運用していたわけですが、2022年はもうちょっと、しっかり色々書いていけたらなと思っています。 というわけで、お正月ですが音楽の話を書いていきます。ありきたりなご挨拶じゃ面白くないでしょ。 はじめに:「最後まで聴ける曲」を作るのは、実は難しい2021年、僕らが何に注力していたかというと、もちろん楽曲提供

          退屈な5秒を作らない-最後まで聴ける曲を作るために

          認識されないが作用する音について

          ソラノアルト十草です。 今回ちょっとお話しようと思うのは、「認識されないが作用する音」についてです。 もうちょっと詳しく言うと、 「その音が鳴っていること自体、言われないと認識できない」 「音自体は聴こえているが、何をどう演奏しているのかまでは聴き取れない」 ぐらいの存在感の音というか、楽器/パートのことです。 僕はけっこう、この部分を作り込むクセがあるので、お手元にソラノアルト作品の音源がある方は、ちょっと頑張って聴いてみて下さい。「何やってるかわからんけれど、

          認識されないが作用する音について

          黄金進行を蹴っ飛ばせ

          ソラノアルト十草です。 今回は、作曲のいわゆる「黄金進行」というやつを蹴っ飛ばしたいと思います。 いや、「黄金進行」とされるコード進行自体は良いんですよ。 あくまで今回、蹴っ飛ばしたいと思っているのは、「黄金進行」という考え方そのものです。 「黄金進行」という考え方の何がいけないのか黄金進行という考え方の、何がいけないか。「暗記するだけで身につく、学べる」という誤解を生んでしまいがちだからです。 たとえば「英語で小説を書く」と考えてみてください。英文法を理解しておら

          黄金進行を蹴っ飛ばせ

          ツクツクボウシの鳴き声の楽曲構成に関する考察

          ソラノアルト十草です。 今回は、ツクツクボウシの鳴き声の楽曲構成に関して考察していきます。 ポピュラー・ミュージックの楽曲構成といっても今はけっこう構成も複雑化・多様化しているので、一概に言えないんですが。 ひとまずワンコーラスだけで考えても、以下のようにいろいろあります。 ・イントロ⇒A⇒B⇒サビ ・サビ⇒イントロ⇒A⇒B⇒サビ ・A⇒B⇒サビ ・イントロ⇒A⇒サビ ・A⇒イントロ⇒A⇒B1⇒B2⇒サビ⇒大サビ ・サビ⇒イントロ⇒A⇒B⇒サビ⇒大サビ などなど。で

          ツクツクボウシの鳴き声の楽曲構成に関する考察

          バンドマンが知っておきたい、鍵盤とギターの違いについて

          ソラノアルト十草です。 ちょっと今回はためしに、バンドマン向けの記事を書いてみようかなと思います。 バンドマンが知っておきたい、鍵盤とギターの違いについて こんなテーマでいきます。 身体の使い方が違うまず大前提、身体の使い方が違います。 鍵盤楽器は、キーボードでもピアノでもそうですが、動作としてはドラムやパーカッションに近くなります。 ・楽器のある位置から離れると演奏できない ・"振り下ろす"動作でのみ音を鳴らせる とりあえずこの2点、いってみましょうか。 楽

          バンドマンが知っておきたい、鍵盤とギターの違いについて

          フォルクロア~歓喜の歌~サビ前の転調について

          ソラノアルト十草です。 先日発売されたこちらのシングル。 2曲目の「フォルクロア~歓喜の歌~」楽曲提供させていただいたわけですが。サビ前の転調の仕掛けを早くも看破されている方がおりまして、かなりビックリしております。 半音上に転調しているように【見せかけて】、実はそうではなく、4半音下に転調していると。 率直な気分としましては、探偵にトリックを見破られた犯人です。 トリックがバレた犯人は素直に自白するのがセオリーですので、観念して自白しようと思います。フフフ…嬉しい

          フォルクロア~歓喜の歌~サビ前の転調について

          音楽理論をちゃんと勉強する方法

          ソラノアルト十草です。 音楽理論の話を今までいろいろ書いてきましたが、そろそろ、ちゃんと勉強する方法について書こうと思います。 まず楽典をマスターするのが入口ひとまずこれ。 一旦これをマスターしましょう。ここが入り口です。 これに載っているのは、数学で言うと数字の読み書きと四則演算みたいなものです。何をやるにも絶対に知っとく必要があるやつですね。 たぶん、クラシック系の学校でも、ポップス系の学校でも、なにはともあれコレから入るカリキュラムになってると思います。 か

          音楽理論をちゃんと勉強する方法

          オンラインライブに適した楽曲についての考察

          ソラノアルト十草です。 今回は、「オンラインライブに適した楽曲ってなんだろう?」という考察です。 ワクチン接種も進み、ようやく出口戦略が見えてきたのかな?と思える新型コロナウイルスの影響ですが、今年一杯はまだまだ禍中だという話もあります。 まあ、詳しいところは厚生労働省など公的機関や、「コロナ専門家有志の会」など信頼できる専門家の情報発信をチェックすると同時に、デマや不正確な情報に踊らされないよう、また過度な恐怖に煽られず、かといってリスクを過小評価することもないよう、い

          オンラインライブに適した楽曲についての考察

          感性を磨く方法ってなんだ?

          ソラノアルト十草です。 喪中により新年のあいさつは控えさせて頂きますが、今年もよろしくお願いします。 冒頭、一点ご報告です。 「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル ALL STARS」ストーリー22章挿入歌「I'm still...」(ミア・テイラー/CV.内田秀)、作編曲を手掛けさせていただきました。 https://www.youtube.com/watch?v=Uu9Wiy8FkTs 自分としても手ごたえを感じている一曲です。よろしくお願いします。

          感性を磨く方法ってなんだ?

          グルーヴとノリの違いに関する小考

          個人的に、今月は「グルーヴ強化月間」という感じで曲を作ってます。グルーヴ設計は僕の昔からの弱点というか…。さすがに今はもう苦手意識ではないけど、ちゃんと意識してやらないと心地良いグルーヴにならないので、気を付けているわけです。それを今月は特に気を付けてやろう、という自分なりの気持ちの持ちようですね。 グルーヴ=ノリではないグルーヴって何?というと実は言語化するのがすごく難しくて、いわゆる「ノリ」とはちょっと違う概念なんだと思うようになったのは、本当にここ数年のことです。

          グルーヴとノリの違いに関する小考

          洋楽っぽい曲を作る時に覚えておきたい、日本語と英語の違い

          「洋楽っぽい曲を作ろう」と思って、洋楽を聴いて、その音選びを参考に日本語の歌を作ると、ほぼ確実に失敗します。 というわけで今回は、洋楽と邦楽の違いを考える時、「日本語と英語の違い」が、実はだいぶ重要なファクターなんじゃないのか?という話です。なお、この話は多分に独自研究を含んでいるので、その点ちょっと留意してお読みください。 ざっくり言うと、 ・日本語は高低アクセント言語、一音節一音 ・英語は強勢アクセント言語、一音節に複数の音が入る ここの違いが、邦楽と洋楽の違いに

          洋楽っぽい曲を作る時に覚えておきたい、日本語と英語の違い

          作編曲に必要な、音楽を聴く力-楽曲分析

          音楽をやるうえで、「聴く力」はとても重要だと思っています。 では、聴く力とは何なのか。おおきく区別すると、「聴き分け」と「楽曲分析」になると思います。 (※楽曲解釈という観点もあるのですが、自分の中で整理がついていないので、今回は控えておきます。) 「聴き分け」は、要するに全部の楽器がなにやってるか、個別に聴きとれるようになりましょう、という話です。いろいろな曲を意識して聴いていれば、できるようになると思います。 なので今回は楽曲分析の話を。 この話、いろいろな考え方が

          作編曲に必要な、音楽を聴く力-楽曲分析