十草慶

作編曲チーム「ソラノアルト」所属。ポピュラー・ミュージックの作編曲に関することを主に書…

十草慶

作編曲チーム「ソラノアルト」所属。ポピュラー・ミュージックの作編曲に関することを主に書いていきます。

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  • ポップス作編曲家の視線で読む「楽典」解説

    音楽之友社「楽典-理論と実践」を、現役のポピュラー作編曲家(音楽作家)の目線で読み解く連載マガジンです。

記事一覧

【第2回:音楽の時間軸】ポップス作編曲家の視線で読む「楽典」解説

音楽之友社の「楽典」を、現役ポピュラー作編曲家の目線で読み解く連載企画。 第二回となる今回は、上記テキストで、P17~P74の範囲を一気にやっていきます。 内容として…

十草慶
2年前
5

【第1回:"音"とは何か】ポップス作編曲家の視線で読む「楽典」解説-初回ガイダンスと序章

ポップスの世界にいると、「音楽理論って役に立つの?立たないの?」という議論がたびたび沸き起こります。 これ色々な観点があるんですが、僕自身これまでの音楽人生を振…

十草慶
2年前
6

マツケンサンバはサンバ要素がちゃんとある、という話

ソラノアルト十草です。 あの有名なマツケンサンバ、「実はサンバ要素がまったくない」という話がネット上にはあるらしいのですが、僕の聴くところでは、サンバ要素ちゃん…

十草慶
2年前
6

「今のイントロは平均5秒」は本当か?論文を読んだら印象が違った

ソラノアルト十草です。 ちょっと前に…いや、もう1~2年前になるんですかね。2020年のインターネット白書だったと思います。 サブスク時代に入って、ポピュラー音楽の…

十草慶
2年前
10

退屈な5秒を作らない-最後まで聴ける曲を作るために

ソラノアルト十草です。 2021年、皆さんいろいろとお世話になりました。2022年もよろしくお願いします。 2021年は、まあ月1本ぐらい何か書くか、程度でこのnoteを運用し…

十草慶
2年前
2

認識されないが作用する音について

ソラノアルト十草です。 今回ちょっとお話しようと思うのは、「認識されないが作用する音」についてです。 もうちょっと詳しく言うと、 「その音が鳴っていること自体、…

十草慶
2年前
4

黄金進行を蹴っ飛ばせ

ソラノアルト十草です。 今回は、作曲のいわゆる「黄金進行」というやつを蹴っ飛ばしたいと思います。 いや、「黄金進行」とされるコード進行自体は良いんですよ。 あく…

十草慶
3年前
2

ツクツクボウシの鳴き声の楽曲構成に関する考察

ソラノアルト十草です。 今回は、ツクツクボウシの鳴き声の楽曲構成に関して考察していきます。 ポピュラー・ミュージックの楽曲構成といっても今はけっこう構成も複雑化…

十草慶
3年前
4

バンドマンが知っておきたい、鍵盤とギターの違いについて

ソラノアルト十草です。 ちょっと今回はためしに、バンドマン向けの記事を書いてみようかなと思います。 バンドマンが知っておきたい、鍵盤とギターの違いについて こん…

十草慶
3年前
1

フォルクロア~歓喜の歌~サビ前の転調について

ソラノアルト十草です。 先日発売されたこちらのシングル。 2曲目の「フォルクロア~歓喜の歌~」楽曲提供させていただいたわけですが。サビ前の転調の仕掛けを早くも看…

十草慶
3年前
8

音楽理論をちゃんと勉強する方法

ソラノアルト十草です。 音楽理論の話を今までいろいろ書いてきましたが、そろそろ、ちゃんと勉強する方法について書こうと思います。 まず楽典をマスターするのが入口ひ…

十草慶
3年前
11

オンラインライブに適した楽曲についての考察

ソラノアルト十草です。 今回は、「オンラインライブに適した楽曲ってなんだろう?」という考察です。 ワクチン接種も進み、ようやく出口戦略が見えてきたのかな?と思え…

十草慶
3年前
2

感性を磨く方法ってなんだ?

ソラノアルト十草です。 喪中により新年のあいさつは控えさせて頂きますが、今年もよろしくお願いします。 冒頭、一点ご報告です。 「ラブライブ!スクールアイドルフ…

十草慶
3年前
3

グルーヴとノリの違いに関する小考

個人的に、今月は「グルーヴ強化月間」という感じで曲を作ってます。グルーヴ設計は僕の昔からの弱点というか…。さすがに今はもう苦手意識ではないけど、ちゃんと意識して…

十草慶
3年前
3

洋楽っぽい曲を作る時に覚えておきたい、日本語と英語の違い

「洋楽っぽい曲を作ろう」と思って、洋楽を聴いて、その音選びを参考に日本語の歌を作ると、ほぼ確実に失敗します。 というわけで今回は、洋楽と邦楽の違いを考える時、「…

十草慶
3年前
13

作編曲に必要な、音楽を聴く力-楽曲分析

音楽をやるうえで、「聴く力」はとても重要だと思っています。 では、聴く力とは何なのか。おおきく区別すると、「聴き分け」と「楽曲分析」になると思います。 (※楽曲解…

十草慶
4年前
5
【第2回:音楽の時間軸】ポップス作編曲家の視線で読む「楽典」解説

【第2回:音楽の時間軸】ポップス作編曲家の視線で読む「楽典」解説

音楽之友社の「楽典」を、現役ポピュラー作編曲家の目線で読み解く連載企画。

第二回となる今回は、上記テキストで、P17~P74の範囲を一気にやっていきます。

内容としては、譜面に関する話と、「リズム」に関する話になります。
譜面については、極論「覚えてね」って話だけなのでサクっと行きます。リズムと拍子の話を掘り下げていきましょう。

1:ポップスの現場で譜面って使う?→使います!
まず原則として

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【第1回:"音"とは何か】ポップス作編曲家の視線で読む「楽典」解説-初回ガイダンスと序章

【第1回:"音"とは何か】ポップス作編曲家の視線で読む「楽典」解説-初回ガイダンスと序章

ポップスの世界にいると、「音楽理論って役に立つの?立たないの?」という議論がたびたび沸き起こります。

これ色々な観点があるんですが、僕自身これまでの音楽人生を振り返ってみて、あることに気が付いたんですね。

「そも、音楽理論を“ポップスの現場”目線で教わったことってある?」

せいぜいコードネームとか、その辺ぐらいじゃないですか?
いや…よく思い出せばいろいろ教わった気もするんだけど…ちょっと記

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マツケンサンバはサンバ要素がちゃんとある、という話

ソラノアルト十草です。
あの有名なマツケンサンバ、「実はサンバ要素がまったくない」という話がネット上にはあるらしいのですが、僕の聴くところでは、サンバ要素ちゃんとあります。

その辺をちょっと簡単に解説していきます。

そもそもサンバってなに?スルドが大事難しい話はすっ飛ばしますが、「サンバの本質」とも言って良いほどの重要性を担っているのはスルドである、という見解は、おおむね一致するのではないかと

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「今のイントロは平均5秒」は本当か?論文を読んだら印象が違った

「今のイントロは平均5秒」は本当か?論文を読んだら印象が違った

ソラノアルト十草です。
ちょっと前に…いや、もう1~2年前になるんですかね。2020年のインターネット白書だったと思います。

サブスク時代に入って、ポピュラー音楽のイントロはどんどん短くなっており、今では平均5秒である。

と、こういうデータが出されたわけです。

この話を見た僕の率直な感想としては、「まあ、あくまで平均値だからね」の一言に尽きるわけですが、これについて今回は書いてみようと思いま

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退屈な5秒を作らない-最後まで聴ける曲を作るために

退屈な5秒を作らない-最後まで聴ける曲を作るために

ソラノアルト十草です。
2021年、皆さんいろいろとお世話になりました。2022年もよろしくお願いします。

2021年は、まあ月1本ぐらい何か書くか、程度でこのnoteを運用していたわけですが、2022年はもうちょっと、しっかり色々書いていけたらなと思っています。

というわけで、お正月ですが音楽の話を書いていきます。ありきたりなご挨拶じゃ面白くないでしょ。

はじめに:「最後まで聴ける曲」を作

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認識されないが作用する音について

ソラノアルト十草です。

今回ちょっとお話しようと思うのは、「認識されないが作用する音」についてです。

もうちょっと詳しく言うと、

「その音が鳴っていること自体、言われないと認識できない」

「音自体は聴こえているが、何をどう演奏しているのかまでは聴き取れない」

ぐらいの存在感の音というか、楽器/パートのことです。

僕はけっこう、この部分を作り込むクセがあるので、お手元にソラノアルト作品の

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黄金進行を蹴っ飛ばせ

ソラノアルト十草です。

今回は、作曲のいわゆる「黄金進行」というやつを蹴っ飛ばしたいと思います。

いや、「黄金進行」とされるコード進行自体は良いんですよ。

あくまで今回、蹴っ飛ばしたいと思っているのは、「黄金進行」という考え方そのものです。

「黄金進行」という考え方の何がいけないのか黄金進行という考え方の、何がいけないか。「暗記するだけで身につく、学べる」という誤解を生んでしまいがちだから

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ツクツクボウシの鳴き声の楽曲構成に関する考察

ソラノアルト十草です。

今回は、ツクツクボウシの鳴き声の楽曲構成に関して考察していきます。

ポピュラー・ミュージックの楽曲構成といっても今はけっこう構成も複雑化・多様化しているので、一概に言えないんですが。

ひとまずワンコーラスだけで考えても、以下のようにいろいろあります。

・イントロ⇒A⇒B⇒サビ
・サビ⇒イントロ⇒A⇒B⇒サビ
・A⇒B⇒サビ
・イントロ⇒A⇒サビ
・A⇒イントロ⇒A⇒

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バンドマンが知っておきたい、鍵盤とギターの違いについて

ソラノアルト十草です。

ちょっと今回はためしに、バンドマン向けの記事を書いてみようかなと思います。

バンドマンが知っておきたい、鍵盤とギターの違いについて

こんなテーマでいきます。

身体の使い方が違うまず大前提、身体の使い方が違います。

鍵盤楽器は、キーボードでもピアノでもそうですが、動作としてはドラムやパーカッションに近くなります。

・楽器のある位置から離れると演奏できない
・"振り

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フォルクロア~歓喜の歌~サビ前の転調について

ソラノアルト十草です。

先日発売されたこちらのシングル。

2曲目の「フォルクロア~歓喜の歌~」楽曲提供させていただいたわけですが。サビ前の転調の仕掛けを早くも看破されている方がおりまして、かなりビックリしております。

半音上に転調しているように【見せかけて】、実はそうではなく、4半音下に転調していると。

率直な気分としましては、探偵にトリックを見破られた犯人です。

トリックがバレた犯人は

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音楽理論をちゃんと勉強する方法

ソラノアルト十草です。

音楽理論の話を今までいろいろ書いてきましたが、そろそろ、ちゃんと勉強する方法について書こうと思います。

まず楽典をマスターするのが入口ひとまずこれ。

一旦これをマスターしましょう。ここが入り口です。

これに載っているのは、数学で言うと数字の読み書きと四則演算みたいなものです。何をやるにも絶対に知っとく必要があるやつですね。

たぶん、クラシック系の学校でも、ポップス

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オンラインライブに適した楽曲についての考察

ソラノアルト十草です。
今回は、「オンラインライブに適した楽曲ってなんだろう?」という考察です。

ワクチン接種も進み、ようやく出口戦略が見えてきたのかな?と思える新型コロナウイルスの影響ですが、今年一杯はまだまだ禍中だという話もあります。

まあ、詳しいところは厚生労働省など公的機関や、「コロナ専門家有志の会」など信頼できる専門家の情報発信をチェックすると同時に、デマや不正確な情報に踊らされない

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感性を磨く方法ってなんだ?

ソラノアルト十草です。
喪中により新年のあいさつは控えさせて頂きますが、今年もよろしくお願いします。

冒頭、一点ご報告です。

「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル ALL STARS」ストーリー22章挿入歌「I'm still...」(ミア・テイラー/CV.内田秀)、作編曲を手掛けさせていただきました。

https://www.youtube.com/watch?v=Uu9Wi

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グルーヴとノリの違いに関する小考

個人的に、今月は「グルーヴ強化月間」という感じで曲を作ってます。グルーヴ設計は僕の昔からの弱点というか…。さすがに今はもう苦手意識ではないけど、ちゃんと意識してやらないと心地良いグルーヴにならないので、気を付けているわけです。それを今月は特に気を付けてやろう、という自分なりの気持ちの持ちようですね。

グルーヴ=ノリではないグルーヴって何?というと実は言語化するのがすごく難しくて、いわゆる「ノリ」

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洋楽っぽい曲を作る時に覚えておきたい、日本語と英語の違い

「洋楽っぽい曲を作ろう」と思って、洋楽を聴いて、その音選びを参考に日本語の歌を作ると、ほぼ確実に失敗します。

というわけで今回は、洋楽と邦楽の違いを考える時、「日本語と英語の違い」が、実はだいぶ重要なファクターなんじゃないのか?という話です。なお、この話は多分に独自研究を含んでいるので、その点ちょっと留意してお読みください。

ざっくり言うと、

・日本語は高低アクセント言語、一音節一音
・英語

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作編曲に必要な、音楽を聴く力-楽曲分析

音楽をやるうえで、「聴く力」はとても重要だと思っています。
では、聴く力とは何なのか。おおきく区別すると、「聴き分け」と「楽曲分析」になると思います。
(※楽曲解釈という観点もあるのですが、自分の中で整理がついていないので、今回は控えておきます。)

「聴き分け」は、要するに全部の楽器がなにやってるか、個別に聴きとれるようになりましょう、という話です。いろいろな曲を意識して聴いていれば、できるよう

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