作編曲に必要な、音楽を聴く力-楽曲分析


音楽をやるうえで、「聴く力」はとても重要だと思っています。
では、聴く力とは何なのか。おおきく区別すると、「聴き分け」と「楽曲分析」になると思います。
(※楽曲解釈という観点もあるのですが、自分の中で整理がついていないので、今回は控えておきます。)

「聴き分け」は、要するに全部の楽器がなにやってるか、個別に聴きとれるようになりましょう、という話です。いろいろな曲を意識して聴いていれば、できるようになると思います。

なので今回は楽曲分析の話を。

この話、いろいろな考え方があります。あくまで「僕はこんな風に聴いてますよ」という一例として、受け取って頂ければと思います。

なんのために分析をするのか

まず、なんのために分析をするのか。
これは平たく言うと、「好きなものを理解するため」だと僕は思っています。

「この曲、好き」
「この曲のこの瞬間が好き」

みたいなやつ、ありますよね。
そういう時、“好き”と感じさせてくれた要素は一体何なのかを探っていく。

それが楽曲分析です。

よく聴く、深く聴く-楽曲分析

具体的な分析の手法について、基本的なところをいくつか挙げます。

〇メロディの音階分析
そのメロディでどんな音階が使われているのか調べます。

たとえば、「Do--Ra-Sol Do--Ra-Sol Do-Do--Mi」というフレーズがあれば、これは「Do-Mi-Sol-Ra」の4つの音が出てきます。この曲のほかの部分に「Re」も出現していれば、全体で「Do-Re-Mi-Sol-Ra」、つまり陽旋法の音階になります。

こうやって、たとえば「香水 / 瑛人」のメロディは陽旋法でできている、とわかります。

〇ハーモニーの分析
ベース、コード楽器、上物、メロ、ハモり、全部合わさった時、その瞬間にどんなハーモニーが鳴っているのか?という話です。

たとえば、コード楽器はAmを弾いていても、メロディがSolの音を取っていれば、全体ではRa-Do-Mi-SolでAm7の響きになります。さらに、ベースがDoを取っていれば、これはAm7onC、第一転回系の響きになります。

〇コード進行の分析
コード進行がどうなっているのか?という話です。ここもコード楽器だけを追うと不十分で、先ほどのハーモニー分析に基づき、「全体でどうハーモニーが進行しているのか」という観点で見ます。コードネームで追うと構造を一般化しにくいので、ディグリーネームで追うといいです。そのほうが機能和声論的にも考えやすいです。

〇リズムの分析
どんなリズムで楽曲が構成されているのか、という観点です。
基本的にはドラムトラックを追っていくわけですが、ドラムだけで見ると不十分です。

たとえば四つ打ちの曲、あれはキックが4分音符で鳴っているから4beat…というわけではありません。メロディが細かく16で動いていて、全体では16beatになっていたりします。16の細かい動きがあって、そこに頭を明確にさせる4つのキックがあるからノれるわけで、メロの譜割が8になったりすると、一気にモッサリします。

こういう点を見ていく分析です。

〇構成の分析
イントロ、A、B、サビとかそういうやつですね。どういう風に構成が展開していくのか。全体像で見ていきます。転調とかも構成で見る範疇かなと思います。

最近では曲の展開が本当に多彩になっているので、単純に「Aメロは平たくて、Bメロはちょっとカラーが変わるね」ぐらいの見方だと解像度が低いかなと思います。

「Aメロ頭でキャッチーなフレーズが一瞬出た後、ちょっとテンションが平らになって、Aメロ後半で少し切ないカラーになった後、コンパクトなブレイクをスタイリッシュにキメて、がらりと変わるBメロに遷移」

ぐらいの解像度で見ていったほうが良いですし、自分が作る時も、このぐらいの解像度で設計していきます。

分析結果を、「好き」と結びつける

先ほど、メロディの音階分析で「香水 / 瑛人」のメロディは陽旋法でできている、と話しました。
陽旋法は「田舎節」とも呼ばれ、日本民謡でよく使われる代表的な音階の一つです。

僕は個人的にけっこう好きな音階の一つで、これが上手に使われた曲は「なんか良いな」と思ってしまいます。

「香水」を聴いたときも、やはり「なんかいいな」「耳に残るな」と感じたわけですが、その正体も実は陽旋法にあった…と、分析すればわかるワケですね。

こういった風に、楽曲分析を通して、自分が好きだと思った表現の正体を理解できるようになります。
これができると、1曲から学べることが何百倍にも増え、作編曲の幅も広がっていきます。

以上です。

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