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不登校と中学受験(11)

親子で塾や学校のテストでの成績をめぐって言い合いになり、子どもがこんなことを言うことがあります。

「うるさいなあ。わかってるよ。」
「ちょっとミスしただけ。わかってるから大丈夫!」

こんな言葉を子ども達から聞くようになると、かなり危険な兆候なのはおわかりいただけますか?

なぜなら、前回、お話したように、子ども達はすでにわからなってきています。

点数も取れなくなってきているのです。

だから、必死に覚えて覚えて、何とかしようとするのですが、覚えたことは忘れてしまいますし、覚えることも、そこまで必死にしたくないのです。


それは、子どものことを考えたら当然なのです。

もう、この時には、勉強をしたくないと思っています。
わからなくもなっています。

でも、なんとか点数を取らないといけないのです。

だから、覚えるだけでもやろうとするのですが、こんな気持ちでやれると思いますか?

もう無理があるのです。
それは考えたら当たり前のことだと思いませんか?


なぜ、こうなるのでしょうか。

わからないと言えない、子どもの気持ちを考えてみたいと思います。


一つ目は、「ご家族の目」です。「ご家族の思い」と言っても良いかもしれません。子ども達からすると、「ご家族の圧力」と言うかもしれません。


ご家族の、勉強してほしい、○○中学に合格して欲しい、という思いに応えたいと思うからです。

その期待に何とか応えたいと思うのは、当たり前のことなんですが、これまでお話してきた中にあった、厳しい言葉をお子さんに投げかけたり、手をあげてしまったりすると、点数が取れないことがものすごく苦痛になっています。


厳しく言ったからできるようになるわけではないのです。

点数が取れないことが恐怖になってしまったら、もう、これはそんな簡単には元通りにはなりません。

ご家族の思いが強すぎれば、やらせた分だけでできなくなるか、できたとしても、中学生・高校生になったときに、徹底的に反抗するようになってしまうこともあるのです。


これは、反抗期という程度では済まないこともあるのです。

大学は親元を離れて遠くに行ってしまい。ほとんど帰ってくることもなくなる、こんな例を山のように見てきました。

こうしてご家族は捨てられてしまうのです。


次に、子どもなりの「プライド」です。

他の子ども達に勝ちたい、負けたくない!という思いです。言い換えると、勝っている自分しか価値がないとまで思っている子どもがいるのです。

これは、かなり大きなものなのです。

他に運動や音楽などで、秀でたものを持っていれば、救いがあるのですが、そこもないと、勉強しかないのです。

しかも、小学校の同じクラスに、同じ塾の子どもがいれば、どのくらいの成績かということは、自然にわかってしまいます。

例えば、模試や月例テスト、復習テストなど塾のテストが悪かった場合、すぐにわかってしまいます。

そのことは、すぐに小学校の同級生にバレてしまうのです。

どれだけ隠したところで、能力別クラス編成をしている中学受験塾では、隠すことが難しいのは、在籍クラスがはっきりと表してしまうからなのです。


今は、小6になると子ども達でも、スマホを持っていてLINEなどのSNSを使っている子ども達も多いので、成績が悪かったことは、他の子ども達、他塾の子ども達にあっという間に広がります。

具体的に点数がわかってしまった場合や、クラス替えのあった時などは、即日、多くの子ども達の知るところとなるのです。


だから、大きなテストになると、休みたくなる子ども達が出てくるのです。また、毎回の復習テストや確認テストが終わる頃に遅刻して行こうとする子ども達もいるのです。

なぜなら、クラス替えの成績に入るテストを受けていなければ、クラスが下でも「テスト受けられなかったから」と周りに言い訳できるからなのです。


そんなことに、何の意味がないと思うのは、大人の勝手な思いです。

その思いこそが子ども達を、こういう行動に駆り立てているのです。

子ども達にとっては、自己受容できることでなはく、肯定感は低くなるばかりのことなのです。それを維持するためにも、何とかしないといけないと思ってしまう、辛いことなのです。


わからないと言えない、困っていると言えない。

この状況になっているために、子ども達はさらに追い詰められていきます。

そして、第一志望校には到底、届かず、誰も望んでいない第二志望校かその次の学校になってしまいます。


ここでやっていけるかどうかは、塾に在籍している間に、一番最初にお伝えした、「合格を目標にしないこと」「受験を通して、自分で学ぶことや、新しいことを学ぶことの喜びを知ること」を目標にできているかです。


子ども達の心に傷を残す受験にならないように、受験のデメリット、受験の副作用というものを、ご家族はしっかりと見つめて、理解して、その上で中学受験を考えて欲しいと思います。

なぜなら、その心の傷は、一生ものの傷になってしまうことがあるからなのです。


谷 圭祐
進学塾TMC池田 講師(数学・理科担当)
パーソナルアカデミー カウンセラー、講師


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